テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
テンミニッツTVは、有識者の生の声を10分間で伝える新しい教養動画メディアです。
すでにご登録済みの方は
このエントリーをはてなブックマークに追加

宇宙は、数多くの銀河からできている

現在の宇宙の姿(4)銀河からなる宇宙

岡村定矩
東京大学名誉教授/東京大学エグゼクティブ マネジメント プログラムチェアマン補佐
情報・テキスト
第4回では、銀河系の外の宇宙を見ていく。宇宙には、われわれの銀河系だけではなく、アンドロメダ銀河をはじめ、多くの銀河が存在する。このような銀河は、渦巻きがあるものやないもの、渦巻きの中心が棒状になっているものといないものなどさまざまな形態がある。星は銀河の中にあるので、宇宙は星からできているというよりも、銀河からできていると考えるのが良い。われわれは「銀河からなる宇宙」に住んでいる。(全6話中第4話)
時間:09:28
収録日:2018/12/26
追加日:2019/06/10
カテゴリー:
≪全文≫

●銀河系の外の宇宙を見る


 「現在の宇宙の姿」をテーマにした講義の第4回です。今回は、「銀河からなる宇宙」というお話をします。

 第3回の講義では、上の写真における青い楕円状の点線の中、つまり銀河系の中にある天体の姿を望遠鏡で見てきました。今回は、楕円から離れた方向、天の川から離れた方向の星と星の隙間からどのような天体が見えるのか、つまり銀河系の外の宇宙を見てみたいと思っています。


●宇宙にはさまざまな銀河が存在する


 1枚目のスライド写真では少し見えにくいのですが、天の川が上の方に斜めにあって、そこから左下に離れたところにぼんやりとした天体(白矢印)があります。これは一見すると、前回見たガス星雲のようにぼんやりしたものにも見えますが、これを大きな望遠鏡で撮影したのが2枚目のスライドの写真です。

 2枚目のスライドの左側の写真が全体像になりますが、前回に銀河系の想像図で見たような渦巻きの姿が見えます。実はこの天体も、銀河系と同じように、1000億から2000億個の恒星と星間物質とからなる大集団であることが分かってきました。このような天体が銀河系の他にもたくさんあることが分かったので、一般的に「銀河」という名前が付けられることになりました。特にこの天体は、アンドロメダ座の方向にあるので「アンドロメダ銀河」と呼ばれています。

 実は銀河系も一つの銀河なのですが、われわれの太陽が属しているということで、特別に「銀河系」あるいは「天の川銀河」と呼ばれているわけです。このアンドロメダ銀河は、非常に遠くにあり、230万光年の距離にあります。つまり、光の速さで行っても、230万年かかります。しかしながら、たくさんある銀河の中では近い方で、いわばわれわれのいる銀河系のお隣さんの銀河です。この周囲にパラパラと見えている星は、われわれの銀河系の星々です。これらの星々の隙間から、230万光年かなたのアンドロメダ銀河が見えています。

 このアンドロメダ銀河の一部をすばる望遠鏡の広視野カメラである、シュプリームカム(Suprime-Cam)で撮影した写真が、2つ目のスライドの右側のものです。明るい星は、われわれの銀河系の星です。渦巻き腕の中に、左の写真では見えなかった無数の星が、微かな点として一つずつ分解されて見えています。このシュプリームカムという広視野カメラは、私が東京大学に在籍していた頃に、私たちのグループと国立天文台とが共同で開発したカメラです。ハッブル宇宙望遠鏡を除いて、地上望遠鏡のカメラとしては世界最高の分解能を持つカメラでした。このカメラは、18年間第1線で活躍をした後に、2017年の5月に最後の観測をして、ハイパー・シュプリームカム(Hyper Suprime-Cam: HSC)という、より高性能の後継機に後を譲りました。

 上のスライドの写真は、NGC7479という銀河です。きれいな棒状の渦巻きが見えると思います。これは実は、シュプリームカムが現役最後のショットとして撮った記念の画像です。この写真をよく見てみると、この中央の銀河の他にも、たくさん銀河があるということが分かります。

 上のスライドの写真のように少し拡大してみると、いくつも銀河があることがよく分かります。さまざまな形をしているものがあるということも、分かると思います。


●銀河の形態はいくつかに分類できる


 このスライドの左下の図は、銀河研究のパイオニアであるエドウィン・ハッブル(Edwin Hubble)がいろいろな銀河を観測して、銀河の形態を体系的に分類した図です。大きな図は、この分類図に、実際の銀河の画像を貼り付けたものです。ハッブルの元々の分類体系の図は、音楽で使う音叉(おんさ)のようになっているので、「ハッブルの音叉図」と呼ばれます。

 音叉の柄のところには、渦巻きのない、のっぺりした楕円銀河というものが並べられています。音叉の二股のところには、渦巻銀河が、中心に棒がないもの(上)とあるもの(下)という2系統に並べられています。銀河系は中心に棒があったので、棒渦巻銀河です。対してアンドロメダ銀河は、棒のない渦巻銀河です。先ほど見たNGC7479は、きれいな棒渦巻銀河です。音叉(おんさ)が二股に分かれているところに、S0銀河というものがあります。これは、ハッブルの元の図には画像がありません。それは、ハッブルが元の分類体系図を作ったころには、まだ見つかっていなかったからです。


●宇宙は数多くの銀河からできている


テキスト全文を読む
(1カ月無料で登録)
会員登録すると資料をご覧いただくことができます。