ブラックホールとは何か
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
天の川銀河の中心に何がある?超大質量ブラックホールの謎
ブラックホールとは何か(6)超大質量ブラックホール
科学と技術
岡朋治(慶應義塾大学理工学部物理学科教授)
銀河の中心になぜ超大質量ブラックホールがあるのか。銀河中心核超巨大ブラックホールの階層的形成・成長シナリオの検証に向けた、観察データから分かるブラックホール研究の現状について解説する。(全8話中第6話)
時間:14分22秒
収録日:2018年10月31日
追加日:2019年4月30日
カテゴリー:
≪全文≫

●銀河の中心に超大質量ブラックホールがある理由


 次に、銀河の中心にどうして超大質量ブラックホールがあるのかという問題に移りたいと思います。これは大問題で、さまざまな説が提唱されています。

 その中に、1つ有力な説があります。ここに示したものです。中心のブラックホールは、最初から大きかったわけではなく、小さなブラックホールが合体成長してできた、というものです。このシナリオは2000年初頭に提唱されました。

 シナリオによれば、銀河の中心近くでは、ガスが集中することがあります。円盤部からガスがどんどん落ちてきて、中心部にガスがとても多く集まるということが起こり得ます。その中で、大量の星が生まれます。こうした現象を「爆発的星形成」(スターバースト)といいます。

 こうした現象を起こしている銀河はいくつも見つかっており、とても明るい銀河として認識されます。ここでお見せしたのは、おおぐま座方向にある「M82」という銀河の写真です。中心部で爆発的星形成が起こると、その結果生まれたとても大きな星が生まれてすぐに、超新星爆発を起こします。すぐといっても数百万年ほどかかるのですが、割と短い時間スケールで超新星爆発を起こし、それによって、中心に集積したガス自身をまき散らします。M82は中心部での爆発的星形成とそれに伴う超新星爆発の結果、銀河の形態をも変えられてしまった「不規則銀河」と呼ばれるものになっています

 この爆発的な星形成によって、中心部分には星の集まりである星団が大量に生まれます。この星団は、とても高密度なものが多いと考えられています。その高密度な星団が生まれると、今度はその高密度な星団の中心部で星同士が合体するというプロセスが起きます。このプロセスは、「暴走的合体」と呼ばれています。

 その結果生まれるのは、中質量ブラックホールという、まだあまり見つかっていない天体です。この中質量ブラックホールと、それを抱え込んだ星の集まりが、全体として中心に集まっていきます。そして、中質量ブラックホール同士が銀河の中心核で合体を繰り返すことで超大質量ブラックホールが形成されます。あるいはすでにできているブラックホールが成長します。提唱されたのは、こうしたシナリオでした。


●シナリオの実証の困難さ


 このシナリオは、さまざまな観...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
進化生物学から見た「宗教の起源」(1)宗教の起源とトランス状態
私たちにはなぜ宗教が必要だったのか…脳の働きから考える
長谷川眞理子
2050年「プラチナ社会」実現への挑戦(1)「プラチナ社会」実現のルーツと現況
2025年頭所感~5つのプラチナ産業イニシアティブ創りへ
小宮山宏
ヒトの性差とジェンダー論(1)「性」とは何か
MLBのスーパースターも一代限り…生物学から迫る性の実態
長谷川眞理子
未来を知るための宇宙開発の歴史(1)宇宙開発の流れを概観する
宇宙開発の歴史、そして未来へ…6枚の写真で概観する
川口淳一郎
知能と進化(1)知性と身体性
AI、ディープラーニングとは…知能と身体性は不可分か?
長谷川眞理子
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治

人気の講義ランキングTOP10
数学と音楽の不思議な関係(4)STEAM教育でつくる喜びを全ての人に
世界で最もクリエイティブな国は? STEAM教育が広がる理由
中島さち子
続・日本人の「所得の謎」徹底分析(2)政府債務と預金残高の背景
なぜ日本の所得水準は低いのに預金残高は大きいのか
養田功一郎
経験学習を促すリーダーシップ(2)経験から学ぶ力
米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長
松尾睦
戦前日本の「未完のファシズム」と現代(8)満州事変と世界大恐慌
「100年戦争」と考えて戦争に突入した日本の現実
片山杜秀
「集権と分権」から考える日本の核心(5)島国という地理的条件と高い森林率
各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴
片山杜秀
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子
50代からの親の介護~その課題と準備(1)突然やってくる介護の問題
「親の介護」の問題…優しさだけでは続かない
太田差惠子
弥生人の実態~研究結果が明かす生活と文化(1)弥生時代はいつ始まったのか
なぜ弥生時代の始まりが600年も改まった?定説改訂の背景
藤尾慎一郎
編集部ラジオ2025(20)納富信留先生の「アカデメイア」講義
プラトンのアカデメイアからテンミニッツ・アカデミーへ
テンミニッツ・アカデミー編集部
第2の人生を明るくする労働市場改革(1)日本の労働市場が抱える問題
シニアの雇用、正規・非正規の格差…日本の労働市場の問題
宮本弘曉