10MTVオピニオン|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録
10MTVオピニオンは、有識者の生の声を10分間で伝える新しい教養動画メディアです。
すでにご登録済みの方は
このエントリーをはてなブックマークに追加

銀河の中心に超大質量ブラックホールがある理由

ブラックホールとは何か(6)超大質量ブラックホール

岡朋治
慶應義塾大学理工学部物理学科教授
情報・テキスト
銀河の中心になぜ超大質量ブラックホールがあるのか。銀河中心核超巨大ブラックホールの階層的形成・成長シナリオの検証に向けた、観察データから分かるブラックホール研究の現状について解説する。(全8話中第6話)
時間:14:22
収録日:2018/10/31
追加日:2019/04/30
ジャンル:
≪全文≫

●銀河の中心に超大質量ブラックホールがある理由


 次に、銀河の中心にどうして超大質量ブラックホールがあるのかという問題に移りたいと思います。これは大問題で、さまざまな説が提唱されています。

 その中に、1つ有力な説があります。ここに示したものです。中心のブラックホールは、最初から大きかったわけではなく、小さなブラックホールが合体成長してできた、というものです。このシナリオは2000年初頭に提唱されました。

 シナリオによれば、銀河の中心近くでは、ガスが集中することがあります。円盤部からガスがどんどん落ちてきて、中心部にガスがとても多く集まるということが起こり得ます。その中で、大量の星が生まれます。こうした現象を「爆発的星形成」(スターバースト)といいます。

 こうした現象を起こしている銀河はいくつも見つかっており、とても明るい銀河として認識されます。ここでお見せしたのは、おおぐま座方向にある「M82」という銀河の写真です。中心部で爆発的星形成が起こると、その結果生まれたとても大きな星が生まれてすぐに、超新星爆発を起こします。すぐといっても数百万年ほどかかるのですが、割と短い時間スケールで超新星爆発を起こし、それによって、中心に集積したガス自身をまき散らします。M82は中心部での爆発的星形成とそれに伴う超新星爆発の結果、銀河の形態をも変えられてしまった「不規則銀河」と呼ばれるものになっています

 この爆発的な星形成によって、中心部分には星の集まりである星団が大量に生まれます。この星団は、とても高密度なものが多いと考えられています。その高密度な星団が生まれると、今度はその高密度な星団の中心部で星同士が合体するというプロセスが起きます。このプロセスは、「暴走的合体」と呼ばれています。

 その結果生まれるのは、中質量ブラックホールという、まだあまり見つかっていない天体です。この中質量ブラックホールと、それを抱え込んだ星の集まりが、全体として中心に集まっていきます。そして、中質量ブラックホール同士が銀河の中心核で合体を繰り返すことで超大質量ブラックホールが形成されます。あるいはすでにできているブラックホールが成長します。提唱されたのは、こうしたシナリオでした。


●シナリオの実証の困難さ


 このシナリオは、さまざまな観測的な事実を同時に説明するのに非常に都合が良いので、数ある超大質量ブラックホール形成メカニズムの形成シナリオの中でも、特に有望なものであると考えられています。

 ただ問題は、銀河の中心部に、実際に観測されている高密度な巨大星団がそうそうないということです。これは、1つには観測が難しいという理由があります。私たちの銀河系(=天の川銀河)の中心だと、星がびっしりで銀河系円盤部のちりが邪魔して見えず、とにかく観測が困難です。

 他の銀河の中心部分を見ようとしても、そこも星がいっぱいで、どこに星団があるのか見るのはとても難しい状況です。こうした事情で、今のところ信頼のおけるものはそんなにありません。

 もう1つ、前回申し上げました通り、信頼のおける中質量ブラックホールの検出例がまだないということがあります。そのため、これらが見つかることによって、このシナリオはかなり強いサポートを得られるでしょう。

 一説によると、シナリオに沿えば、銀河系中心部分には約50個の中質量ブラックホールがあるという理論計算もあります。そのため、これを探すのがシナリオの確認にとって本質的なことです。


●銀河系中心の観測で見いだされたのは、巨大な分子雲の固まり


 私たちは、この銀河系中心を随分長い間、観測してきました。観測していたのは、中心に終結した分子ガスの層である「銀河系中心分子層」と呼ばれるものです。これを2つの望遠鏡で観測していました。左側の写真は長野県の野辺山にある45メートルの電波望遠鏡で、右側の写真はチリのアタカマ高地に置かれたアステ望遠鏡です。どちらも国立天文台によって運用されている望遠鏡です。

 これらを使って中心部分を長期間観測していました。そこで見いだされたものは、巨大な分子雲の固まりです。差し渡し1000光年程度あります。

 観測したのは、一酸化炭素の2つのスペクトル線です。2つのスペクトル線は115ギガヘルツと345ギガヘルツで、周波数が違います。この2つのスペクトル線の強度を比べることで、そのスペクトル線を放射している領域の密度や温度を評価することができます。物理状態を診断することができるわけです。

 それを行ったのがこの図です。白く見えているところは、高温なガスが集結していると考えられる部...
テキスト全文を読む
(1カ月無料で登録)
会員登録すると資料をご覧いただくことができます。