●銀河の中心に超大質量ブラックホールがある理由
次に、銀河の中心にどうして超大質量ブラックホールがあるのかという問題に移りたいと思います。これは大問題で、さまざまな説が提唱されています。
その中に、1つ有力な説があります。ここに示したものです。中心のブラックホールは、最初から大きかったわけではなく、小さなブラックホールが合体成長してできた、というものです。このシナリオは2000年初頭に提唱されました。
シナリオによれば、銀河の中心近くでは、ガスが集中することがあります。円盤部からガスがどんどん落ちてきて、中心部にガスがとても多く集まるということが起こり得ます。その中で、大量の星が生まれます。こうした現象を「爆発的星形成」(スターバースト)といいます。
こうした現象を起こしている銀河はいくつも見つかっており、とても明るい銀河として認識されます。ここでお見せしたのは、おおぐま座方向にある「M82」という銀河の写真です。中心部で爆発的星形成が起こると、その結果生まれたとても大きな星が生まれてすぐに、超新星爆発を起こします。すぐといっても数百万年ほどかかるのですが、割と短い時間スケールで超新星爆発を起こし、それによって、中心に集積したガス自身をまき散らします。M82は中心部での爆発的星形成とそれに伴う超新星爆発の結果、銀河の形態をも変えられてしまった「不規則銀河」と呼ばれるものになっています
この爆発的な星形成によって、中心部分には星の集まりである星団が大量に生まれます。この星団は、とても高密度なものが多いと考えられています。その高密度な星団が生まれると、今度はその高密度な星団の中心部で星同士が合体するというプロセスが起きます。このプロセスは、「暴走的合体」と呼ばれています。
その結果生まれるのは、中質量ブラックホールという、まだあまり見つかっていない天体です。この中質量ブラックホールと、それを抱え込んだ星の集まりが、全体として中心に集まっていきます。そして、中質量ブラックホール同士が銀河の中心核で合体を繰り返すことで超大質量ブラックホールが形成されます。あるいはすでにできているブラックホールが成長します。提唱されたのは、こうしたシナリオでした。
●シナリオの実証の困難さ
このシナリオは、さまざまな観...