●今回の参議院選挙とはどんな選挙だったのか
2019年参議院選挙の総括をします。この選挙は何だったのでしょうか。簡単にいえば、この選挙では、自民党と公明党が過半数を取りました。ただし気を付けなければいけないのが、自民党のみによる過半数ではないということです。
過半数とは何を意味するのでしょうか。参議院選挙は政権選択の選挙ではありませんが、参議院で過半数を持っていないと、法案が通らないということです。過半数を割るとねじれが発生してしまうからです。
もう一つ、今回の特徴は、憲法改正の発議に必要な3分の2を、与党は取ることができなかったということです。今まで、自公プラス維新(日本維新の会)その他で、3分の2の議席があったのですが、今回は3分の2に足りません。足りないということが、何を意味するのかについては、後ほど申し上げます。
●参議院選挙は政権の中間評価としての役割を果たしてきた
参議院選挙の位置づけは、大変難しい問題です。通常は政権の中間評価的な役割を果たしており、中間選挙としての役割を有しています。2007年の参議院選挙で安倍政権が大敗した際も、安倍信三首相は、おそらく参院選を中間評価だと位置付けていたと思います。
しかしながら、安倍政権が発足してから最初の選挙がこの時の参議院選挙でした。その意味で、この選挙は中間評価ではなく政権審判としての意味を持っていました。これは安倍首相にとって「悪夢」でした。安倍首相はよく「悪夢」という言葉を使いますが、悪夢とは実はこの時の選挙のことを指しているのです。本人の病気も絡み、早々に退陣することになってしまいました。
参議院選挙は、政権選択でも内閣を決める選挙でもありません。しかし、この選挙が政局(政治変動や政治変化)に果たす役割は結構大きいのです。このことは別の言葉で、参院選は「政権の鬼門」とよくいわれてきました。
●参議院選挙の結果は時の政権に大きな影響を与えてきた
では、そもそも参議院というのは何か、また参議院選挙がなぜ鬼門だったのかということについてお話しします。
上の図をご覧になっていただければ分かるように、参議院の一つの特徴は、職能集団、利益集団、業界団体、あるいは労働組合など、各種集団の代表が全国規模で当選するということです。もちろん、昔に比べると集票の数は非常に落ちています。しかし依然として、参院選は職能団体的な意味がある選挙です。
しかしながら、参議院が今果たしている役割は、全く別のことです。次の図をご覧ください。これは、朝日新聞が選挙の時に掲載した図なのですが、獲得議席と政治的な出来事が示されています。
小泉ブームが終焉し安倍内閣が大敗して、政権交代のきっかけができました。さらに、民主党政権時代における菅内閣の2010年には、ねじれていない国会がねじれてしまいました。
これらの事例では参院選で負けることによって、その後、法案が通らなくなります。そして、自民党が政権に復帰した後の参議院選挙では、改めて自民党が65議席を取りました。今回の選挙では、その人たちが改選になったという状況です。
これを見ると、実は通常の議席数だけではなく、60議席以上を取った時、あるいは逆に議席数が非常に少なくなってしまった時があることを読み取ることもできます。
これだけではありません。橋本内閣が退陣となった1998年の参議院選挙では、自民党は60議席から44議席に減らしました。また、1989年の参議院選挙では、社会党は22議席から46議席に増えました。土井たか子社会党党首(当時)が「山が動いた」と言った選挙です。宇野内閣は退陣するわけですが、自民党は69議席から36議席に減らしました。
要するに、参議院選挙は首相が交代したり政権にダメージを与えるような役割を果たしたのです。参議院は、みなが思っている以上に大きな役割を果たしてきたということです。
●今回の参議院選挙では大きな変動は見られない
今回の参議院の結果を足してみた図をご覧ください。
これは朝日新聞の図に合わせて私が作ったものですが、今回はあまり変動がありませんでした。
実際には全体の議席数は増えているのですが(定数増)、無所属の9議席があるため、政党間の競争ではあまり大きな変化にはなっていません。過去、民進党が32議席を取っていたのに対し、今回は立憲と国民で23議席です。新しい党であるため、ゼロから比べると増えたという言い方もできますが、そんなに増えたわけではありません。自民も公明もそれほど変動がありません。その他には今回、れいわ新選組と社民党、そしてNHKから国民を守る党が入っています。
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