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バーボンの本場で定着しつつある日本スタイル

『歩こうアメリカ、語ろうニッポン』レポート(3)ケンタッキー篇-2 本音で語り、本来の外交を知る

島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツTV副座長
情報・テキスト
フォア・ローゼズの古い醸造工場を訪問
Shimada Talks
白熱のパネルディスカッションや心温まるパーティー、そしてここでも実感した日本企業の地元貢献の力。目立たずとも、深く静かに根を下ろしている日本の姿を語る、島田晴雄氏のケンタッキー訪問レポート後半。(全5話中第3話目)
時間:11:39
収録日:2014/06/24
追加日:2014/08/28
カテゴリー:
≪全文≫

●日本の国際関係の草の根を担ってきた日米協会


 日米協会というのはとても素晴らしい組織です。この日米協会というのは、100年ぐらいの歴史があるのですが、ケンタッキー市日米協会はそれほど歴史はありません。1985年ぐらいに設立されました。実は85年にトヨタがケンタッキーに投資すると発表して、86年から建設が始まっているのですが、その頃から日米協会は一生懸命努力し、発展してきて、今や相当立派な協会になっているのです。まさに日本と手と手を結んで発展してきた人たちで、もう完全に日本ファンです。ですから、この人たちを大切にしなければいけないのだろうなと思いました。

 今回、官邸がそういう地方を回るというときに、結局役に立っているのは全部日米協会なのです。アメリカ側の協会の人たちは全員アメリカ人ですから。なるほど、日本の国際関係の草の根というのは、こういう人たちに支えられて守られているのだ、と痛感しました。このことを、日本の中央の官邸でも外務省でも経産省でも、もっともっと理解したほうが良いと思いますね。

 日米協会が案外頼りにしているのが、日本の役所で言うと総務省です。総務省はやはり日本の自治体をコントロールしていますし、自治体の姉妹都市、これはもう日本とアメリカの間には何百という姉妹都市がありますから。これをずっと傍らから見て、いろいろお世話をしているのが総務省なのです。ですから、アメリカでは総務省の存在が意外に近いということが分かりました。そういう草の根はやはり大事にする必要があるのだろうなと思った次第です。

●「建前より本音」に皆、身を乗り出す


 今回、地元の相当有力な人たちに集まってもらい、パネルディスカッションをやるということになっていました。このパネルディスカッションは、私のチームには3人の中年のボランティアの方がいて、昔商社にいたとか銀行にいた、中小企業のコンサルタントをやっていたという方々なのですが、普通の人ですから英語は多少できます。そこで、彼らが口を開くと、聴衆はものすごく関心を持って聞いてくれます。私のように「英語から先に生まれてきた」といった感じでペラペラ話しても、「そうだろうな」と聞き流してしまうということでしょうけれど、彼らが話すと非常に関心を持って聞いてくれるのです。そのためにパネルディスカッションをやりました。

 パネルディスカッションの最初に、私がスピーチをしました。どういうスピーチかと言いますと、「なぜ、あなた方はこのようなところに来たのですか」といつも聞かれるので、「われわれのオブジェクティブ、つまり目的は、アメリカの方々ともう一回、フェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションを熱く交わすために来たのだ」と話しました。しかし、このようなことは建前論ですから、「ふーん」という感じの受け止め方ですよね。そこで、「実は本音があるのですよ」と言うと、「それを聞きたい」ということになりました。

●本音で語った中国、TPP…白熱のパネルディスカッション


 こうなると、やはりどうしても中国のことを言わざるを得ない、韓国のことを言わざるを得ない、ということになります。そこで、私は次のようにお話ししました。

 中国がどんどん発展していくのは、われわれ日本人も大歓迎なのです。ただ、大歓迎だけれども、中国は、例えばオバマ大統領が訪問して「新型大国関係にしよう」というようなことを言っています。「太平洋はアメリカと中国でコントロールできるではないか」と。「アメリカは年中戦争をしてきて世界警察官と言っているのだから、アメリカに上回るかもしれない国力を持った中国が、同じことを言ってなぜ悪いのか」というような言い方です。

 しかし、「それは違うだろう」と私などは思うわけです。やはり戦後の世界というものは、イギリス大帝国が息切れしてしまったので、アメリカが引き受けて、ブレトン・ウッズ体制から、世界の自由貿易体制、また、固定為替で世界中を救う仕組みや安全保障、国連、パックスアメリカーナなどなどを整えて、要するに世界のシステムは全部アメリカ中心に回ってここまで来たわけです。それが戦後体制というもので、皆それを認めているわけです。力が強くなったからと言って、「お前、半分よこせ」と中国が言っている。では、日本はどこへ入るのかと言えば、もう第2防衛戦の中へ入ってしまっているわけでしょう。

 そういうことを聴衆に言いました。皆「こういった意見を初めて聞いて非常に勉強になった」と言っていました。私は、「やはり中国も、大国として国際社会から認めてもらうには、それなりのマナーというものがあるが、ちょっとこの今の状況はとんでもないのではないか」と述べました。

 中国は中国のことですから文句は言えませんが、ただ、日本について...
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