『孫子』を読む :計篇
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
兵は詭道なり…その意味は?具体的な方法は?
『孫子』を読む :計篇(5)「詭道」と計算
田口佳史(東洋思想研究家)
『孫子』の「計篇」の最後には、「詭道」、すなわち敵を欺くことの重要性が説かれている。現代の価値観では汚いと思われるかもしれないが、戦争で勝利を得るためには無視できないことである。これまでに論じられてきた「五事」、「七計」に加えて、「詭道」こそが『孫子』の戦争戦略論の中心である。(全5話中第5話)
時間:9分29秒
収録日:2019年5月30日
追加日:2019年12月24日
カテゴリー:
≪全文≫

●「戦争とは欺く道」とはどういうことか


 次に、「兵は詭道なり」という文があります。『孫子』の内容をまとめると、今までお話ししてきた「五事」と「七計」が重要ですが、もう一つ重要な内容としてこの「兵は詭道なり」という表現があります。要するに、戦争とは欺く道と論じています。

 孫子読みは必ず『孫子』の重要な概念として、「五事」、「七計」、「詭道」の三つを挙げます。ですので、詭道に関して少しお話をしたいと思います。

 「戦争は欺く道だ」というと、『孫子』は汚い、悪辣な方法を推奨していると解釈されることがよくあります。しかし、決してそうではありません。ここでいいたいのは、欺かれないためには、欺くこともよく理解していなければいけないということです。百戦錬磨とはさまざまな体験をしているので、敵の欺きに乗らないということです。それゆえに、百戦錬磨と呼ばれるのです。逆にいえば、汚い戦略などは邪道であるといって、きれいごとの戦略ばかり学んでいると、敵から欺かれてしまうということです。

 現代の日本は平和呆けのような状態ですので、孫子に対して「聞くに堪えない」、「そのような汚いことをいっているのか」、などの評価があります。しかし、命のやりとりをするのが戦争ですので、それを考えればなんとしても勝たなければならないという心持ちになります。そのように切羽詰まった状況では、手練手管が多くあるほうが良いでしょう。

 しかしここでは、きれいごとになってしまいますが、欺かれない、騙されないためにも、欺くことをよく知っておく必要があると解釈しましょう。


●敵を欺くためのさまざまな具体的な方法


 具体的にはまず、「故に能にして之に不能を示し」とあります。自陣営の能力が高ければ高いほど、能力が低いように示すのが基本です。「うちの軍隊はこんなに優秀だ」とはあまりいわないほうが良いのです。むしろ、「うちの軍隊はこうしたところがおかしいので駄目だ」と示しておくべきなのです。

 次にあるのは、「用にして之に不用」にするということです。用いやすく、用件が整った部分が多くとも、あえて不用に見せるという意味です。逆にいえば、そうした相手は、反対に実力を持った組織かもしれないと思って用心したほうが良いのです。


スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
西洋哲学史の10人~哲学入門(1)ソクラテス 最初の哲学者
ソクラテス:「フィロソフィア」の意味を問う最初の哲学者
貫成人
「50歳からの勉強法」を学ぶ(1)大人の学びの心得三箇条
大人の学び・3つの心得=自由、世間が教科書、孤独を覚悟
童門冬二
今こそ問うべき「人間にとっての教養」(1)なぜ本を読むことが教養なのか
『人間にとって教養とはなにか』に学ぶ教養と本の関係
橋爪大三郎
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照
楽観は強い意志であり、悲観は人間の本性である
これからの時代をつくるのは、間違いなく「楽観主義」な人
小宮山宏
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一

人気の講義ランキングTOP10
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
編集部ラジオ2025(30)西野精治先生に学ぶ「熟睡の習慣」
熟睡できる習慣や環境は?西野精治先生に学ぶ眠りの本質
テンミニッツ・アカデミー編集部
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治
プロジェクトマネジメントの基本(4)スケジュール・マネジメント
スケジュール管理で重要な「クリティカル・パス法」とは
大塚有希子
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(2)量子論と空海密教の本質
脳内の量子的効果――ペンローズ=ハメロフ仮説とは
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦