『孫子』を読む :計篇
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勝負を知るためには「七計」の比較が重要
『孫子』を読む :計篇(4)「七計」の比較
田口佳史(東洋思想研究家)
前回まで「五事」と呼ばれる戦略に重要な要素を見てきたが、今回は「七計」と呼ばれる組織の比較軸に関して解説する。「七計」には、組織内のさまざまな人員や制度運用に関する具体的な評価の方法が豊富に盛り込まれている。戦争戦略としてはもちろんビジネス戦略としても、今なお通じる示唆を与えてくれることが、今回の解説によって分かるだろう。(全5話中第4話)
時間:8分31秒
収録日:2019年5月30日
追加日:2019年12月17日
カテゴリー:
≪全文≫

●勝負を知るうえで奨励しているのは「七計」の比較


 次の章句では、「七計」という概念が出てきます。

 「之を校するに計を以てして、其の情を索む」ですが、ここで「校する」という表現があります。学校の「校」という字ですが、この「校」には、子どもの成長を柱に傷をつけて計り、それで背くらべをするという意味があります。学校というのは学んだ知識を比べる場所です。つまり、「校する」とは「比較する」という意味です。ここでは「七計」、七つの分野についての比較を奨励しています。そして、その次は「其の情を索む」ということで、ここでも情報探索が重要だと強調されています。


●「有道」、つまりどちらのトップが自国の大義を主張しているか


 まず、国のトップである主のうち、「孰れか有道なる」について。この「有道」(いうだう)の読み方はいろいろありますが、私が一番重要だと思うのは、「その国の大綱、存在意義に精通している。そのために自分の国はある」「世界広しといえども、このような持ち味で、このような役割を果たしている国は他にない」という大義を世界に主張することがトップの仕事であるということです。そのことを正々堂々と行っている国はどちらか、優れているほうを比べようということなのです。

 戦争を行う上で必須であるのは、終戦工作です。戦争では、勝っているときに終了すれば戦勝国になりますが、負けている、つまり劣勢のときに終われば敗戦国となります。したがって、ここで重要なのは、幕引きをあらかじめ決めておく必要があるということです。つまり、終戦工作があって初めて戦争が始まるのです。

 具体的な例として、日露戦争の成功に着目して見ましょう。この場合には、開戦前にアメリカ大統領であったセオドア・ルーズベルトのハーバード時代の同級生を通して、終戦工作に関して念入りに詰めてから開戦となりました。結果として、影響力のある第三国のアメリカが終戦工作に動いたために、日本が勝っている間に終戦となりました。

 逆に、感情に駆られて開戦した場合には、終戦工作も何もありません。終戦工作をする段階では、どちらの陣営が勝つのか分かりません。第三国としては勝ち戦に乗るのが基本となります。したがって、どちらが勝つかという際に、世論はどちらを支持す...

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