『孫子』を読む :計篇
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
勝負を知るためには「七計」の比較が重要
『孫子』を読む :計篇(4)「七計」の比較
哲学と生き方
田口佳史(東洋思想研究家)
前回まで「五事」と呼ばれる戦略に重要な要素を見てきたが、今回は「七計」と呼ばれる組織の比較軸に関して解説する。「七計」には、組織内のさまざまな人員や制度運用に関する具体的な評価の方法が豊富に盛り込まれている。戦争戦略としてはもちろんビジネス戦略としても、今なお通じる示唆を与えてくれることが、今回の解説によって分かるだろう。(全5話中第4話)
時間:8分31秒
収録日:2019年5月30日
追加日:2019年12月17日
カテゴリー:
≪全文≫

●勝負を知るうえで奨励しているのは「七計」の比較


 次の章句では、「七計」という概念が出てきます。

 「之を校するに計を以てして、其の情を索む」ですが、ここで「校する」という表現があります。学校の「校」という字ですが、この「校」には、子どもの成長を柱に傷をつけて計り、それで背くらべをするという意味があります。学校というのは学んだ知識を比べる場所です。つまり、「校する」とは「比較する」という意味です。ここでは「七計」、七つの分野についての比較を奨励しています。そして、その次は「其の情を索む」ということで、ここでも情報探索が重要だと強調されています。


●「有道」、つまりどちらのトップが自国の大義を主張しているか


 まず、国のトップである主のうち、「孰れか有道なる」について。この「有道」(いうだう)の読み方はいろいろありますが、私が一番重要だと思うのは、「その国の大綱、存在意義に精通している。そのために自分の国はある」「世界広しといえども、このような持ち味で、このような役割を果たしている国は他にない」という大義を世界に主張することがトップの仕事であるということです。そのことを正々堂々と行っている国はどちらか、優れているほうを比べようということなのです。

 戦争を行う上で必須であるのは、終戦工作です。戦争では、勝っているときに終了すれば戦勝国になりますが、負けている、つまり劣勢のときに終われば敗戦国となります。したがって、ここで重要なのは、幕引きをあらかじめ決めておく必要があるということです。つまり、終戦工作があって初めて戦争が始まるのです。

 具体的な例として、日露戦争の成功に着目して見ましょう。この場合には、開戦前にアメリカ大統領であったセオドア・ルーズベルトのハーバード時代の同級生を通して、終戦工作に関して念入りに詰めてから開戦となりました。結果として、影響力のある第三国のアメリカが終戦工作に動いたために、日本が勝っている間に終戦となりました。

 逆に、感情に駆られて開戦した場合には、終戦工作も何もありません。終戦工作をする段階では、どちらの陣営が勝つのか分かりません。第三国としては勝ち戦に乗るのが基本となります。したがって、どちらが勝つかという際に、世論はどちらを支持す...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
イスラム教におけるシーア派とスンニ派の違い
イスラム教スンニ派とシーア派の違いとは?
山内昌之
おもしろき『法華経』の世界(1)法華経はSFだ!
法華経はSFだ!…心を元気にしてくれる法華経入門
鎌田東二
「心から幸せになるためのメカニズム」を学ぶ(1)心理学研究と日本の幸福度
実は今、「幸せにも気をつける」べき時代になっている
前野隆司
「怒り」の仕組みと感情のコントロール(1)「キレる高齢者」の正体
「キレやすい」の正体とは?…ヒトの「怒り」の本質に迫る
川合伸幸
「アカデメイア」から考える学びの意義(1)学びを巡る3つの危機
「学びの危機」こそが現代社会と次世代への大きな危機
納富信留
キリスト教とは何か~愛と赦しといのち(1)「イエス」とは一体誰なのか
「イエス・キリスト」という名前の本当の意味は?
竹内修一

人気の講義ランキングTOP10
未来を知るための宇宙開発の歴史(13)発展する宇宙空間利用と進化する技術
最近の話題は宇宙生命学…生命の起源に迫る可能性
川口淳一郎
編集部ラジオ2025(24)「理解する」とはどういうこと?
学力喪失と「人間の理解」の謎…今井むつみ先生に聞く
テンミニッツ・アカデミー編集部
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(1)ソニー流の多角化経営の真髄
ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?
水野道訓
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
ショパンの音楽とポーランド(1)ショパンの生涯
ショパン…ピアノのことを知り尽くした作曲家の波乱の人生
江崎昌子
クーデターの条件~台湾を事例に考える(6)クーデターは「ラストリゾート」か
中国でクーデターは起こるのか?その可能性と時期を問う
上杉勇司
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
大人の学び~発展しつづける人生のために(1)「Unlearn(アンラーン)」とは何か
見方を変える!生き方を変える!そのためのアンラーン
為末大