本番に向けた「心と身体の整え方」
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オリンピックで勝つのが一番難しいのは最初でも最後でもない
本番に向けた「心と身体の整え方」(4)世界という舞台で力を出すために
為末大(Deportare Partners代表/一般社団法人アスリートソサエティ代表理事/元陸上選手)
オリンピックで勝つのが一番難しいのは“ちょっと知ってしまった”あとだという。よく分からない世界を一度知ってしまったので、元にはもう戻れない。だから知り尽くすしかない。そのためにはとにかく自分と向き合うことが大事である。選手はオリンピックに出たとき、「こういう場所に来ると、こんな自分が出てくる」ということを発見する。そこで改めて「世界という舞台ではどういう心境で挑めばいいか」を考え直す機会になる。(全8話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:9分12秒
収録日:2020年9月16日
追加日:2021年2月9日
≪全文≫

●「オリンピックとはこういうもの」と思ってしまったあとで勝つのは難しい


―― これは合っているかどうか分からないのですが、開き直りができるケースは、まだ駆け出しだけれども、ただし結構実力はあって、まだ若いから次のオリンピックも行けそうで、その次のオリンピックも行けるかもしれない。だから、ここはドカンとやってしまおうというタイプの人。あとは、いろいろと実践を積んできて、「まあ、こんなものだよね」ということを含めて、自分の心の中でいろいろとコントロールできるようになったタイプの人。こうした人が開き直りの世界に行けそうな気がするのですが、そういうものですか。

為末 素晴らしいご質問ですね。オリンピックで勝つ選手を見ていると、オリンピックをよく知らない方か、オリンピックを知り尽くした方が多い。オリンピックを“ちょっと知ってしまっている”というのが一番難しい。

―― そこが一番難しいのですか。

為末 はい。最初のオリンピックと人生最後のオリンピックの2つのオリンピックで、選手はパフォーマンスが出やすい。「オリンピックというのはこういうものだ」と思ってしまったあとが一番難しいので、その意味ではおっしゃる通りだと思います。

―― 最初と最後というのは、自分で選べるものではないですよね。

為末 選べないですね。

―― 今、自分が最初と最後の真ん中にいるとすると、ジタバタするしかないのですか。

為末 自分と向き合って、知り尽くして、やるしかありません。よく分からない世界だったのが、一度知ってしまうと、元にはもう戻れない。1回でもオリンピックの怖さとかを経験してしまったら、それを味わい尽くすしかない。酸いも甘いも噛み分けるしかない、というような世界ですね。

―― オリンピックに限らず、大舞台という場を楽しめるようになるのは難しいことですよね。どうすれば、そうした境地にたどり着くことができるのでしょうか。

為末 そうですね。ただ、いろいろなことがありますが、要するに、たくさんチャレンジして、たくさん転んで回りましょうというシンプルな話でもあります。結果、人は自然に鍛えられていくものです。転び方とかいろいろなものがあって、早い段階、短い時間である程度成熟してくるということはありますが、1回、2回で成熟する人はまずいない。逆にいうと、どんな選手でも数年間はジタバタすることで、習...

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