本番に向けた「心と身体の整え方」
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期待の構造を知って自分なりの距離感をつかんでおく
本番に向けた「心と身体の整え方」(5)期待をコントロールする
為末大(Deportare Partners代表/一般社団法人アスリートソサエティ代表理事/元陸上選手)
「周囲の期待」と「本来の自分」とのギャップが大きくなると、人は苦しくなる。周囲が勝手に期待しているだけなのに、それに応えられないことを申し訳なく思ったり、そのことで傷ついたりするからだ。そうした期待の構造を知ったうえで、自分は期待されると力を発揮するタイプなのか、そうしたタイプではないのかなど、期待に対する自分なりの距離感をつかんで、それを上手にコントロールすることが肝要である。(全8話第5話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:9分14秒
収録日:2020年9月16日
追加日:2021年2月16日
≪全文≫

●期待が高すぎるときは早めにギブアップして等身大の自分にする


―― 前回のお話の中で、開き直りの自信という話がありましたけれども、おそらく一番の大敵は周囲からの期待ですよね。

為末 はい。

―― 「メダル確実」といわれるケースもあれば、もっと身近なところでは両親の期待とか、会社の人の期待とかがあって、そういうものがどうしても開き直りをさせてくれないような局面もあると思うのですが、これはどうすればいいのでしょうか。

為末 理想として、育てる局面ではなるべく期待に応えるサイクルを回さないことですね。ある程度はいいのですが、ディテールに入らないことです。やること1個1個に対して、期待している人からほめられるというサイクルはあまり回さず、単純に自分で「こうなったら、どうやったらいいのだろう」というときに、「こうやってやろう」というようなものを作れれば、期待が強くても瞬間的に自分の世界に入れるので、いいと思います。

 ただ、大人になってから、これをはねのけるのはなかなか大変な話ではあります。「相手の期待に応えなくてはいけない」と思うときに、無意識に「自分はこのくらいの大きさでなくてはいけない」と思い込んでいる自分がいるわけです。

―― それはどういうことでしょうか。

為末 相手が期待をしていて、うまくいかなかったらガッカリするわけですよね。相手がガッカリすることで、なぜ自分は傷つくのかということなのです。本当は何も起きておらず、高すぎた期待が本来価値に戻ったという見方もできるわけです。でも、なぜか自分はそのことを悪いことだと思っていて、自分自身が傷つくか、または相手に申し訳ないと思っている自分がいる。その原因は、自分の大きさを過剰に膨らませていることにあります。

―― 膨らんでしまったイメージということですね。

為末 はい。会社の価値でいくと、バブルで膨らんでいたのが本来価値に戻っただけなのに、そのときの落差を見てしまっている状態ですね。だから、なるべく早めにギブアップして、思い込んでいた自分の大きさを、等身大の自分にすることが大事ですね。


●競技とは関係がない自分の居場所を用意しておく


為末 もう1つ、逆説的ではありますが、大事なことがあります。緊張してうまく弾けなくなるような方だけにカウンセリングをやっている音楽の指導者がいて、その人は学生の頃、とに...

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