本番に向けた「心と身体の整え方」
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限界に影響を及ぼす、陸上界で有名な「当たり前の力」とは
本番に向けた「心と身体の整え方」(6)限界とどう向き合うか
為末大(Deportare Partners代表/一般社団法人アスリートソサエティ代表理事/元陸上選手)
限界には、チャレンジしていったときの限界と当たり前に対する限界の2つあるが、実は「当たり前の力」のほうが強い。陸上界では有名な話だが、100メートルの日本記録で10秒を切るのに約20年かかったが、一旦10秒を切ると2年間で3人が9秒台を記録した。当たり前が変わると人の行動が変わり、気がついたら限界が見えなくなって抜けていく。ただ、その岩盤を突き破る寸前で諦めてしまう人が多い。よって、自分で自分の限界を決めず、周りの意見を少し信じてやってみるのも大事ではないだろうか。(全8話中第6話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:9分49秒
収録日:2020年9月16日
追加日:2021年2月23日
≪全文≫

●当たり前が変わると行動が変わり、限界が見えなくなって抜けていく


―― 自分の限界が見つけられるかどうかということですが、100回やってできなかったものが、101回目でできるようになって、そこからはうまくいきましたというケースが、スポーツでもおそらくあると思います。あるいは、伸びる可能性は多分にあって、記録が3カ月伸びなかったけれども、4カ月目から急に伸び出したり、とか。ただ、そのタイミングがいつ来るか分からない。また、例えば外国人と身長を比べて、向こうはかなり高いが自分は低いというように、「自分の器はこのくらいかな」と自分の身体性をなんとなく分かっているつもりが、意外とこの筋肉がこう動いたら変わってきたぞとか。でも、それが見つかるかもしれないし、見つからないかもしれないというところですよね。

 その中で、夢に向かっていく部分と、自分の限界を悟る部分は、どういうバランスでやっていくのでしょうか。

為末 本当に素晴らしいご質問だなと思います。まず1つは、チャレンジしていったときの限界の感覚がある一方で、何を当たり前として育ってきたかという意味での限界もあります。両方あるのですが、実は後者の「当たり前の力」のほうが強い。私たちが当たり前に生きている世界での最たるものの1つは、十進法だと思うのです。つまり、なぜか10とか100という数字に、私たちはクリアな線を感じて、9秒99と10秒00は全然違う気がしますよね。

―― 確かにそうですね。

為末 でも、時間的な差としては本当は11秒33と11秒34の差と一緒なはずです。陸上では有名な話なのですが、100メートルの日本記録が10秒00から9秒98に更新されるまでに約20年かかりました。日本記録が9秒98になってからは、2年間で3人が入ってきている。一度誰かが壁を超えたら、まるで壁なんてなかったかのように、みんながスルスルッと入ってきている。今、9秒98が日本記録と書いてあるので、高校生が当たり前のように「9秒台が目標です」と言う。当たり前が変わると、人の基本的な行動が変わって、気がついたら限界が見えなくなって抜けていくという力があるのです。これはすごいことで、スポーツが社会に提供している大きな力の1つだと思います。


●岩盤を突き破る寸前で諦めて、辞めてしまう人が多い


為末 まず、このことが前提としてある一方で、個人の人生のほうは、ある程度進んできたあとに...

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