「海の哺乳類」の生き残り作戦
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
哺乳類がここまで繁栄できた理由は「胎生」にある
「海の哺乳類」の生き残り作戦(4)オスとメスの秘密
田島木綿子(国立科学博物館 動物研究部 脊椎動物研究グループ 研究主幹)
哺乳類は皆、子宮、胎盤を持っているが、子どもを産むまでお腹のなかに収めておけるこのスタイルが、哺乳類繁栄の鍵なのだと田島氏は言う。また、子孫を残すための作戦はオスもメスも持っているが、特にオスの陰茎の特徴を見ていると確実な受精のために惜しみない努力がされていることがよく分かる。(全5話中第4話)
時間:13分58秒
収録日:2019年7月5日
追加日:2020年4月7日
カテゴリー:
≪全文≫

●「哺乳」のための戦略-表情筋


 今日は、海の哺乳類を含めた哺乳類について、彼らが「産む、育てる」についてどのような生き残り作戦を企ててきたか、または生き残ってきたかということを紹介したいと思います。

 海の哺乳類の哺乳ですが、実際に哺乳とはどういうことかと考えたときに、まずお母さん側はお乳を出すための乳腺を持っている、その乳腺からお乳が実際に出る、そして、そのお乳を出す乳頭がある、ということは皆さん、なんとなく想像できると思います。そこで、今日知っていただきたいのは、実は子ども側にもちゃんとした戦略があるということです。

 特に人間でいうと、「表情筋」というものについてよく耳にするのは、表情をつくるとかリフトアップのために表情筋を鍛えましょうとかというように、表情をつくるための筋肉だと思っている人が多いということです。

 しかし、実はそれは、哺乳類のなかでは本来の機能ではないのです。表情筋があるということは、ほおを使ってお乳をチュウチュウ吸うことができる、つまり口をチュウチュウするようにできるのは、表情筋があるからなのです。ですから、われわれも皆さんもみんなそうですが、どの哺乳類でも生まれたての子どもはお母さんのおっぱいを飲むために、口でチュウチュウできるというのが、表情筋の本来の機能です。ということで、お母さん側も子ども側も哺乳類である機能を、生まれたときからしっかりと持っているということをぜひ知ってください。

 私が担当しているのが海の哺乳類なのですが、そのなかでクジラたちはやはり海のなかでお母さんのおっぱいを飲まなければいけないので、抱っこして飲ませてもらうことはできません。そのため、もう少し特殊な形質を彼らは獲得していて、舌のところにフリンジがあるのです。そうすると、フリンジがあることで乳頭に舌が巻きつきやすくなって、お母さんの乳を泳ぎながら飲むということを獲得しました。

 ということで、生活環境が変わると少し特殊な形質を持っている動物もいるということを、ぜひ知ってください。


●哺乳類の繁栄の鍵は「胎生」にあり


 次の話なのですが、うまく育てるなかで哺乳類が獲得した形質としては、「胎生」といって、いわゆ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
本当によくわかる「量子コンピュータ入門」(1)量子コンピュータとは何か
「量子コンピュータ」はどういうもので、何に使えるのか
武田俊太郎
断熱から考える一年中快適で健康な住環境(1)日本の住宅の実態と問題点
なぜ日本は夏暑く、冬寒いのか…断熱から考える住宅の問題
前真之
ヒトの性差とジェンダー論(1)「性」とは何か
MLBのスーパースターも一代限り…生物学から迫る性の実態
長谷川眞理子
水から考える「持続可能」な未来(1)気候変動の現在地
最悪10メートル以上海面上昇…将来に禍根残す温暖化の影響
沖大幹
社会はAIでいかに読み解けるのか(1)経済学理論の役割
AIやディープラーニングによって社会分析の方法が変わる
柳川範之
性はなぜあるのか~進化生物学から見たLGBT(1)有性生殖と無性生殖
なぜ雄と雌の2つの性別があるのか…「性」の謎とLGBT
長谷川眞理子

人気の講義ランキングTOP10
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
編集部ラジオ2025(30)西野精治先生に学ぶ「熟睡の習慣」
熟睡できる習慣や環境は?西野精治先生に学ぶ眠りの本質
テンミニッツ・アカデミー編集部
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
禅とは何か~禅と仏教の心(2)仏典漢訳から日本仏教へ
「ブッダに帰れ」――禅とは己事究明の道
藤田一照
大人の学び~発展しつづける人生のために(2)熟達と遊び~好奇心から始まる学び
好奇心はコントロールが効かない…遊びの重要な条件とは
為末大
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑
金融政策正常化の難しさ(2)今後の可能性と日本への影響
欧米で高まる金融政策正常化の背景と今後の可能性
植田和男
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(2)翻訳に込めた日米の架け橋への夢
アメリカ人の心を震わせた20歳の日系二世・三上弘文の翻訳
門田隆将