独裁の世界史~ヴェネツィア編
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
なぜヴェネツィアは議員の世襲制が行われていたのか
独裁の世界史~ヴェネツィア編(3)世襲制は必要か否か
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
ヴェネツィアの長い繁栄を支えたのは、ローマのカエサルのように傑出した「一人」ではない。独自の「くじ」と組み合わせた選挙によって選ばれるようになった、能力のある人々である。そこにあるのは、野心的な個人を排除するシステムである。その一方で、議員の世襲制は行われていた。その理由とは。(全4話中第3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:11分22秒
収録日:2019年12月19日
追加日:2020年6月13日
カテゴリー:
≪全文≫

●民意の中で一番優れた見識の人が選ばれるシステムが出来上がった


―― ヴェネツィアの場合は通商国家であるため、シリーズ冒頭でお話があったように外交が優れていなければ国家運営自体ができないですし、同時に非常に強力な海軍国家でもありましたよね。

本村 そうですね。

―― となると、当然軍事力をどう使うかという選択もあったはずで、実はかなり力で「率いる」という意味でのドージェもいたのではないか。つまり、政治家としては機敏な選択が大切で、機を逃したらそれこそ滅亡し兼ねないような場面での臨機応変さが求められると思います。そのあたりは、共和政の中でどのように保ち続けたのでしょうか。

本村 それは、やはり優れた人がそれを行ったということです。選挙で選ぶことにまつわる多数派工作や誰かの意図的なことを排除し、民意の中で一番優れた見識の人が選ばれるシステムが、くじと選挙を繰り返すことによって出来上がったということですから。

 ヴェネツィアには傑出した人物が輩出しました。例えば、私がかつて「世界史の遺風」(産経新聞連載)で取り上げたヤコポ・ティエポロは、その点で典型的ではないかと思います。彼は軍人として非常に輝かしい経歴を持つ人で、市民総会で元首にと期待されながら、ヴェネツィアを離れていきました。

 その理由は、祖父も父親もドージェで、だから自分がやると3代続いてしまうということです。自分が選んでくれと言ったわけではなく、民衆のほうからやってくれとなったわけだけれども、それをあくまでも拒否する。そういうことで、彼はドージェにはならなかった人物ですが、それくらいの人材が結局は選ばれるということではないかと思います。

―― それは、世襲になってしまうことを恐れるということですか。

本村 そうですね。2代ぐらいまでならいいけれども、3代、4代になると、それはもう君主政になっていくのに近い。それを身をもって示したということが、やはりあったのではないかと思うのです。


●野心的な個人を排除して続いたヴェネツィアの繁栄


―― くじ引き制を基本とする制度をつくって以降、ヴェネツィアは通商国家なので、環境の変化もかなり激しく到来します。一般によく言われるのは、喜望峰まわりの航海ですね、ヴァスコ・ダ・ガマなどが地中海権益だけではなく、アフリカを回っていくような航路を開発したりする。まさに...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
核DNAからさぐる日本のルーツ(1)人類の起源と広がり
人類の祖先たちの「出アフリカ」…その時期はいつ頃?
斎藤成也
「武士の誕生」の真実(1)10世紀の東アジア情勢と「王朝国家」
「王朝国家」と「武士」が誕生した理由は大唐帝国の解体
関幸彦
徳川将軍と江戸幕府~徳川家斉(1)家斉が長期政権を維持できた理由
11代将軍・徳川家斉が50年もの長期政権を築けた理由
山内昌之
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(1)古代の持つ意義と重み
一神教もアルファベットも貨幣も全て古代に生まれた
本村凌二

人気の講義ランキングTOP10
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(3)未解決のユダヤ問題
「白人vsユダヤ人」という未解決問題とトランプ政権の行方
東秀敏
徳と仏教の人生論(6)物事の本質を見極めるために
「境地は裏切らない」とは?禅の体験から見えてきたもの
田口佳史
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
人生100年時代の「ライフシフト概論」(3)キャリアの危機〈下〉
40代前半に訪れる「中年の危機」、鍵は「人生の成長戦略」
徳岡晃一郎
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(6)習近平のレガシー
国力がピークアウトする中国…習近平のレガシーとは?
垂秀夫
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(6)評価制度設計と「夢」の重要性
なぜ二本立ての評価制度が必要か…多種多様な人材の評価法
水野道訓
経験学習を促すリーダーシップ(4)成功を振り返り、強みを伸ばす
なぜ強みが大事なのか?ドラッカー、西田幾多郎の答えは
松尾睦
編集部ラジオ2025(26)ソニー流!多角化経営と人材論
ソニー流「人材の活かし方」「多角化経営の秘密」を学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
「アカデメイア」から考える学びの意義(1)学びを巡る3つの危機
「学びの危機」こそが現代社会と次世代への大きな危機
納富信留