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自動運転バス「e-Palette」など公園内での実用化は目前

「自動運転の民主化」が生み出す近未来の社会(4)自動運転実用化への道筋

加藤真平
東京大学大学院情報理工学系研究科 特任准教授/株式会社ティアフォー 創業者
情報・テキスト
短期的な自動運転の実用化という視点で見ると、工場内の物の移動の自動運転や、公園内での人の移動の自動運転など、用途や環境を限定した状況での実用が最初のステップとして考えられている。最近ではトヨタ自動車が自動運転バス「e-Palette」を開発するなど大手企業も参入してきており、その実用化は目前に迫っているといえるだろう。(全5話中第4話)
時間:10:10
収録日:2020/11/25
追加日:2021/04/22
タグ:
≪全文≫

●工場内の物の移動が実用化に向けた最初のステップ


 前回、自動運転という技術は、これから5年、10年かけて実用化に向かっていくと指摘しました。これは、市街地や郊外などの一般道路での自動運転、つまり道路交通法や車両法といった法規制がかかってくる、かつ人間と関わらなければならない環境で、理想的な自動運転を目指す場合を念頭に置いています。

 一方、自動運転技術そのものは、これからマーケット化していかなければなりません。マーケット化のために、5年から10年必要かというと、そうではありません。今回は、足元でどのような実用化の道筋があるのか見ていきたいと思います。

 まず、私が最も注目しているのは、工場内の運転の無人化という自動運転技術の実用化です。現在動画でお見せしているのは、工場内でものを牽引する場面です。国内のみならず全世界的に、ほぼ全ての工場の中で牽引という工程が存在します。牽引に関しては、各工場間にほぼ違いがなく、要求は非常に似ています。そのため、同じ技術を横に展開していくことができるのです。工場内では道路交通法や車両法といった法規制のかからない点、そして無数にある工場で共通の要求があるという点で、工場内の物流、牽引に関しては、近い将来実用化されると考えています。

 完全に全て無人化するわけではなく、人間が行わなくてはならない部分は人間が行います。例えば、自動運転車が物を牽引してきたものを積み上げするという場合には、人間が行っても良いと考えています。また、積み上げた後に次の場所に進んでいくように発進ボタンを押すなども同様です。人間と機械の業務内容を分けて整理することができれば、いち早く自動運転技術を本当のビジネスとして実用化していけると思います。


●公園内移動の自動運転車はオンデマンド型


 次に、物を運ぶだけではなく人を運ぶ場合でも、環境を限定していけば近い将来実用化されていくと思います。今、動画でお見せしているのは、非常に広い公園内の移動です。公園に遊びにきたお子さんや高齢者の方々が、気軽に自動運転車を呼び出すことができるようになるという状況を考えると、非常に実用化は近いと考えられています。ここでの自動運転車とは、時速50キロメートルくらい出るようなものではなく、時速10キロメートル程度の小型カートのようなものを想定しています。

 ただ、先ほど言及した工場内の物流とは異なり、オンデマンド型になります。つまり、工場内では決められたルート、時間、場所を発着すれば良いのですが、公園内で人を乗せるということになると、人は必ずしも同じところにおらず、目的地も変わります。かつ、人を乗せるために、一般道路であれば歩行者と乗員のどちらを優先するかという、物流の場合には考慮しなくても良い問題が生じます。

 こういった点で少し難易度は上がりますが、それでも公園内は道路交通法や車両法が適用されない環境ですので、乗員と歩行者の安全をどのように優先順位をつけるか、またオンデマンドの要求にどのように対応するか、という点をクリアできれば、自動運転技術自体は実は工場内の自動運転と公園内の自動運転は、そこまで大きくは変わりません。工場内の物流と公園内の人の移動の支援が、自動運転技術の最初の応用事例ではないかと考えています。


●大手企業の参入という追い風


 われわれの大学における研究成果をヴェンチャーで活用して実用化を進めていますが、この領域には大手企業も参入を始めています。例えば、工場内の物流に関していえば、ヤマハ発動機と共同開発を行っています。小型の自動搬送機に関しては、例えば建設会社が現場や施設においてものを運ぶために、導入され始めています。こういった大手企業が参入してくると、マーケットが形成されてきます。環境を限定することで、大手企業がマーケットに参入しつつあるというのが現状です。

 日本においても象徴的なのは、自動車会社が参入してくる市場がどこにあるのかという点です。2020年には東京オリンピックが予定されていましたが、自動車メーカーは自分たちの技術を、選手村など場所や期間を限定した上で、本物のサービスとして提供する予定でした。東京オリンピック自体は延期されてしまいましたが、実際の技術開発やサービスの実証は進んでいます。

 例えばマイクロバスがあります。現在の国内の自動運転の社会実験を見ていると、小型のマイクロバスを自動運転化するという事例が増えてきています。

 今動画でお見せしているのは、トヨタ自動車が開発している「e-Palette」という自動運転バスです。これはトヨタ自動車のホームページに実際に掲載されている動画です。一般人から車椅子を用いてい...
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