●6リットル規制により、アメリカで注目された
大上 もう一つ、TOTOはコアバリューが強い会社だという印象があります。そこで今度は、TOTOのコアバリューのお話を聞かせていただけませんか。
成清 われわれが海外で成功するに至ったターニングポイントは、アメリカ、特にカリフォルニア州など西海岸の水不足でした。アメリカは1994年に、トイレを1回洗浄する際の水量を6リットル以下にしなければならないと法で定めました。そこでわれわれは6リットルできちんと流れるトイレの開発を目指しました。かなり難しいテーマだったのですが、日本の開発陣が頑張って何とか発売したのです。
しかし、6リットル規制はしたけれども、アメリカで当時販売されていたトイレが6リットルでは十分流れないというクレームが多く、アメリカの住宅産業協会がトイレを集めて、本当に6リットルで全部流せるかどうかをチェックしたら、たまたまわれわれの商品が流れの良い製品トップ3の1、2、3位に並んだのです。
2000年頃に、そのことが全米でニュース番組にもなりました。「このトイレは流れるけれど、このトイレは流れない」などとトイレをテストするのは、ニュースとしても面白かったのでしょう。非常に大きなインパクトがありました。
私も海外で営業をしていましたが、海外ではバスルーム商品のデザインを重視して、機能をあまり見ない傾向があります。日本の場合、家の中で水を使う所は、トイレと洗面所とキッチンとお風呂の4カ所です。これを私たちは「4部位」と呼びます。ところが、日本以外の国は、基本的にキッチン以外はバスルームにオールインワンです。業界では、「キッチン・アンド・バス」、略して「KB」と言います。
欧米のバスルームは日本のトイレに比べて広く、視線が行きますから、トイレもデザインはかっこいい方が良いと考える人が多いのです。一つのベットルームに、必ず小さなバスルームが付いているのが当たり前ですから、友達が遊びに来ても、トイレを借りるとバスルームそのものを見るという構造になっています。そうすると、デザイン性が大事になります。
しかし、そのニュース番組が流れたおかげで、今までデザインにフォーカスしていたアメリカのお客さまたちが、「トイレは機能も大事なのだ」と思うようになりました。特に、環境問題に興味のある高感度層が皆、...