「動くガンダム」開発の傍ら、「動くガンプラ(ガンダムのプラモデル)」づくりにも勤しんだ橋本氏。その実践からは、とにかくやってみる、すなわち実際に手を動かし、試行錯誤してものづくりを進めていくという“工学の楽しさ”が伝わってくる。氏の話から、夢や目的を定め、失敗すらも楽しむエンジニアリングの意義を学びたい。(2024年2月18日開催「大人の学びフェス」講演〈「動くガンダム」から考えるロボット工学と未来〉より、全6話中第3話)
※本講義は期間限定配信となっております。(~2025年11月26日まで)
≪全文≫
●“ガンダムは深い”――「動くガンプラ」で分かったこと
市川 先生は、もともとガンダムはご覧になっていましたか。
橋本 見たことはありますけれど、私は鉄腕アトムとか、鉄人28号の世代なのです。ですからガンダムとは少し違うのです。
市川 そうですね。心を持ったというところで、ロボット観が少し違いますね。
橋本 はい。ただ、アトムは特にロボットが主人公ですよね。
市川 はい。
橋本 でも、ガンダムはガンダムという名前だけれど、ガンダムが主人公ではなくて、人間が主人公、人間社会が主人公なので、そういう意味で非常に違うし、話も非常に複雑です。
実は私、「こういう(「動くガンダム」の)話があるのだ」と息子に言ったときに、息子はちょうどガンダム世代なのですけれど、「親父、ガンダムというのは深いのだから、やめておいたほうがいいよ」と言われました。
市川 すごい(笑)。
橋本 「分かるはずないよ」とか言われたのです(笑)。だから、そういう意味で明らかに私が子どもの頃のロボットのモデルであるアトムとは違うのです。
市川 そうですね。息子さんがもともと好きだったガンダム世代ということで、どうですか。一緒にいろいろつくり出すときにガンプラ(ガンダムのプラモデル)とか、いろいろ出してきたと伺ったのですよね。
橋本 そうです。ガンプラはうちにたくさんありますけれど、玄関に飾ってあります(笑)。
市川 玄関にいっぱいあると。
橋本 ケースに入れて飾ってあるけれど、いろいろなものをつくるのが好きですから、まず自分でつくってみたいと思ってつくったのです。
市川 はい。ガンプラを組み立てたのですね。
橋本 今ガンプラのこのくらい(10数センチメートル)のが普通の標準だけれど、30センチぐらいの大型があるのです。
市川 ありますね。
橋本 それを2、3個目に買ってきて、つくって、これが18メートルになったらどうだろうなんて思ったのですけれど、自分でつくって動かしてみたいと思って、つくる過程のこんな映像があります。
市川 先生が自宅でマスターグレードのガンダムをつくったのですね。
橋本 これは30センチのガンダムです。
市川 おおっ。
橋本 この中にこれだけのものを入れたいと思って、全部バラしてみると、入れる隙間がほ...