●夢を押し上げるための「動くガンダム」開発
市川 1つつくるに当たって、感動を創造する機械とつながっていると思うのですけれど、「夢を押し上げる」と先生がおっしゃっていたのが非常に印象的で、どういったことか、教えていただけますか。
橋本 私は、10年以上前から新入生に1回だけ、全員に講演をする機会があります。毎回言っているのですけれど、理工系の新入生の学生です。
100年前のことを考えてみると、例えば電話だとか、テレビだとか、何もなかったのです。100年前というと、音がやっと街にあふれそうになり始めた時代です。レコードだとか、そういうものができてきて、そういうときのわれわれが持っていた夢があります。遠くの人と話をしたい。遠くが見たい。月に行きたいとかです。
そういう夢があったのだけれど、特に最近の50年ぐらいは非常にテクノロジーの発達があって、それが実現してきています。例えば、ドラえもんのポケットの中、四次元ポケットの中に入っているいろいろな夢の道具がありますけれど、それもかなりのものが実現しています。「ほんやくコンニャク」とかいうものがあったりします。
市川 「ほんやくコンニャク」。はい、たしかにほぼ携帯電話(スマホ)でできますね。
橋本 どこでもドアとか、ああいうものも、同じものではないけれど、今のバーチャルリアリティではほぼ(実現)できてきているという意味で、現在は夢があったとすると、100年前の現実はこんなに下のほうにあったものが、上がってきました。相当近づいている時代だと思いますし、場合によっては、(あるいは)人によっては、夢を現実が超えている場合もあります。
例えば、(昔)山奥でひっそりと暮らしている人にとっては、携帯電話の小さい箱を持って歩きながら、地球の裏側の人と顔を見ながら話ができるというのはまだ夢(だった)でしょう。でも、もう実現しているわけです。これがデジタルデバイドというものの本質ではないかと思うのです。
言いたいことは、相当実現してしまっているということです。これは技術の問題だけではないです。今、世界各地にいろいろな紛争があるから、まだまだ不完全ですけれど、平和がほしいとか、民主主義だとか、それから男女平等だとかも、100年前に比べたらはるかにどんどん近づいてきているという意味で、社会的にもそうだという時代だと思うのです。
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