●固定観念にとらわれないロボット研究
橋本 そういうことで、ものを何かつくるとき、考える範囲をどこまでにするかということで、その人の考えられることが決まってしまうから、そんなものを外して考えればもっとできるだろうということで、1つ、これを見ていただくと分かります。
これは化学反応で動くロボットといってしまうと変なゲル(ゼリー)なのだけれど、この中で化学反応が起きています。周期的に反応を繰り返します。ただそれだけなのですけれど、こういうものもロボットの1つと考えれば。
市川 そうなのですね。
橋本 このような材料を使った新しいタイプのロボットのつくり方です、この場合には温度をうまく管理しないとこれが動かないのですけれど、そういう環境をうまく管理して、種の薬品をうまく混ぜてというようなこととか、薬品と薬品がどうくっつくかということを制御するための遺伝子みたいな薬品をまた入れて、とかです。そういうことをやっていけばできるのではないかと思っているのです。
市川 すごい。
橋本 これをやった人は私のところで学位を取って、今、東京工業大学の先生になっています。まさにこういう研究を進めています。
市川 今、これは、ロボットの形に対してそもそもいろいろとらわれてしまっているところがあるということですね。こういうものを見ていると、生命とロボットの差がもう(分からない…)。化学反応で動き出すということで…。
でも、人も化学反応で動いているわけですよね。
橋本 そういうことですね。それと科学物理的な電気信号が流れているのでしょう。
市川 はい。
橋本 そういう意味でいうと、まず次に問題になってくるのは、自分に寿命があるから、自分で材料を使って組み立てられるためには何をしたらいいかです。
これは非常に簡単なゼリーのキューブの表面に工夫をして、グルグル震わせているうちにだんだん組になってくるという簡単な例ですけれど、こんなこともできるようになります。
そういうものをうまく合わせれば、今とは違うもののつくり方があるだろうし、これが1000に1つできれば十分なわけですね。
今の工業生産は、歩留まりが80パーセントないとダメだとかいうけれど、1000分の1だっていいので...