いま、日本人の“心”はどこにあるか――この問いに対して、中井久夫氏の著書『分裂病と人類』をもとに「現代社会とメンタルヘルス」を大きなテーマとして解説を進める本シリーズ講義。第1話では昨今、注目を集めている「米(コメ)」を取り上げる。「日本人がコメに自覚的になると政治が乱れる!?」ということで政治との関連性を追いながら、稲作ベースの日本社会について中井氏の著書から発表当時の社会情勢とともに考える。(2025年8月30日開催:早稲田大学Life Redesign College〈LRC〉講座より、全7話中第1話)
※司会者:川上達史(テンミニッツ・アカデミー編集長)
日本人とメンタルヘルス…心のあり方
日本人の生きづらさの特徴は?~中井久夫著『分裂病と人類』
日本人とメンタルヘルス…心のあり方(1)米を食べる日本人と『分裂病と人類』
與那覇潤(評論家)
6.日本の異様さ…フィリピンから復員した山本七平が驚いたこと
2026年4月9日配信予定
7.日本の引きこもりの深い根源…「核家族」構造の問題とは?
2026年4月10日配信予定
時間:10分30秒
収録日:2025年8月30日
追加日:2026年3月27日
収録日:2025年8月30日
追加日:2026年3月27日
≪全文≫
●稲作社会であることが日本人が与えている影響とは?
―― 本日、與那覇先生には大きなテーマとして、「現代社会とメンタルヘルス」というお題を設定していただきました。「生きづらさ、心のつらさを感じる人が多いのはなぜか」という内容です。
中井久夫さんの『分裂病と人類』をテキストにして、お話をいただく形となります。歴史の記述も山ほど入っていて、気づきが多い書籍かと思います。この本をもとに、どういうことが見えてくるのかを與那覇先生にお話しいただきたいと思います。では與那覇先生、どうぞよろしくお願いいたします。
與那覇 本日はよろしくお願いいたします。先ほどご紹介にあずかりました、與那覇と申します。私も病気をする以前は、大学で教えていたことがあります。私自身のメンタルヘルスの体験等も踏まえながら、今日は「いま、日本人の“心”はどこにあるか」というテーマ設定でお話ししたいと思います。
中井久夫さんは3年ほど前(2022年8月8日)に亡くなられました。私はもともと歴史学が専門でした。その歴史学者だった者の視点で、また自分自身、うつを体験して離職したこともある者の視点で、日本人の心はどうなっていくのか、そして心と社会の関係は、今どこで問題が生じているのかをお話ししたいと思っています。
それでは順々に進めていきます。今ですが、こんなに米や稲作が注目される時代も久しぶりではないかと思います。昔も平成の序盤頃に、米が注目される時代がありました。当時の私は小学校高学年ぐらいだったので、よく覚えています。
1993年に東北地方で大冷害がありました。「“やませ”という冷たい風が吹くと、冷害になることがあります」と、社会科の地理の授業で習います。ただ当時の私は東京の小学生だったので、何の実感もありませんでした。
「ふーん。“やませ”って何ですか。人名ですか」みたいな感じでした。それが本当に冷害になって、米がないということが起こり、あまりにもびっくりしたので、非常にこの当時をよく覚えています。
あまりにも米が穫れなかったのでタイ米を緊急輸入するのですが、(それまでは)「米だけは何としても輸入しない」と言っていたのが、そんなことも言っていられなくなって初めて輸入をしました。
その頃、貿易自由化の交渉などもあって、1995年から「食わなくてもい...
●稲作社会であることが日本人が与えている影響とは?
―― 本日、與那覇先生には大きなテーマとして、「現代社会とメンタルヘルス」というお題を設定していただきました。「生きづらさ、心のつらさを感じる人が多いのはなぜか」という内容です。
中井久夫さんの『分裂病と人類』をテキストにして、お話をいただく形となります。歴史の記述も山ほど入っていて、気づきが多い書籍かと思います。この本をもとに、どういうことが見えてくるのかを與那覇先生にお話しいただきたいと思います。では與那覇先生、どうぞよろしくお願いいたします。
與那覇 本日はよろしくお願いいたします。先ほどご紹介にあずかりました、與那覇と申します。私も病気をする以前は、大学で教えていたことがあります。私自身のメンタルヘルスの体験等も踏まえながら、今日は「いま、日本人の“心”はどこにあるか」というテーマ設定でお話ししたいと思います。
中井久夫さんは3年ほど前(2022年8月8日)に亡くなられました。私はもともと歴史学が専門でした。その歴史学者だった者の視点で、また自分自身、うつを体験して離職したこともある者の視点で、日本人の心はどうなっていくのか、そして心と社会の関係は、今どこで問題が生じているのかをお話ししたいと思っています。
それでは順々に進めていきます。今ですが、こんなに米や稲作が注目される時代も久しぶりではないかと思います。昔も平成の序盤頃に、米が注目される時代がありました。当時の私は小学校高学年ぐらいだったので、よく覚えています。
1993年に東北地方で大冷害がありました。「“やませ”という冷たい風が吹くと、冷害になることがあります」と、社会科の地理の授業で習います。ただ当時の私は東京の小学生だったので、何の実感もありませんでした。
「ふーん。“やませ”って何ですか。人名ですか」みたいな感じでした。それが本当に冷害になって、米がないということが起こり、あまりにもびっくりしたので、非常にこの当時をよく覚えています。
あまりにも米が穫れなかったのでタイ米を緊急輸入するのですが、(それまでは)「米だけは何としても輸入しない」と言っていたのが、そんなことも言っていられなくなって初めて輸入をしました。
その頃、貿易自由化の交渉などもあって、1995年から「食わなくてもい...