『「甘え」の構造』(土居健郎著)によると、大人になってメンタルの病気を発症する人は、幼少期に甘えない子に多い。甘えない子には、甘えることを恐れる場合と甘えは良くないと思っている場合があり、前者は統合失調症、後者はうつ病を発症しやすい。中井氏は著書でこの土居氏の考えを引用しているが、二宮尊徳は後者のタイプにあたるため、今風にいえば、彼は「ヤングケアラー」ではないかと與那覇氏は言う。では前者のタイプ、統合失調症を発症しやすい人についてはどうか。今回は両者の違いについて解説する。(2025年8月30日開催:早稲田大学Life Redesign College〈LRC〉講座より、全7話中第4話)
※司会者:川上達史(テンミニッツ・アカデミー編集長)
≪全文≫
●二宮尊徳は今風にいえば「ヤングケアラー」
與那覇 かつて同じように、精神科医や心理学者の書いたものが日本文化論の分野でも広く読まれた時代がありました。その代表的なものの1つが、まさに1971年、あの学生運動の最中に出た、土居健郎さんの『「甘え」の構造』です。テンミニッツ・アカデミーでも、この本をめぐって一つのシリーズ講義(『「甘え」の構造』と現代日本)を配信したことがあるので、もし興味があったらそちらを見てください。
よくこの本は誤読されます。『「甘え」の構造』が日本人論としてすごくヒットしたのですが、そう聞くと「日本人は甘えてしまうところがあり、これはダメだよね」と。つまり「甘えとは日本にしかないダメな感情であり、それを日本人は克服しなければならない」といった主張だと誤解されます。でも読むと、全然そんなことは書いていません。日本にしかないわけでもない。そして甘えが悪いものともいえない。
この本が1971年に、やはり精神科医だった土居さんによって書かれて非常にヒットしているので、先ほどまで取り上げた中井久夫さんの本でも何回か引用されています。土居さんのいう「甘え」を踏まえると、中井さんの主張はどうなるかというわけです。
そこでは非常に重要なことがいわれています。ここからは、今まで取り上げてきた第2章の1つ前にある、第1章の内容を主に取り扱いたいと思います。少なくともこの当時、1970年代、1980年代ぐらいには、大人になってメンタルヘルスに関連する病気を発症する人は、幼少期にさかのぼると、むしろ「甘えない子」が多かった。
親からすると、手がかからない、「いい子」が多かった。幼少期は、すごくいい子、「手がかからなくて、親が楽ちんだわ」という子が、青年期、あるいは社会に出てから、心の病気を発症しがちだといわれておりました。中井さんは、そうした当時の認識を前提としつつ、非常に面白い考察をしているのです。
確かにメンタル(に関わる病気)を発症した人の幼少期を見てみると、あまり甘えなかった、甘えないから親からしてみたら、手がかからない、いい子だった人が多い。ただし、どんな病気を発症するかで、同じ「甘えない子ども」といっても、両極端なぐらいタイプが違うのではないかと、この本で中井さんは言っています。
今、「統合失調症」と呼んでいる病気を、昔は「精神分裂病」とい...