技術と民生から見た明治維新
この講義は登録不要で無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
次の動画も登録不要で無料視聴できます!
山尾庸三―工部大学校を設立した「工学の父」
第2話へ進む
遠藤謹助―造幣局をつくった「造幣の父」
技術と民生から見た明治維新(1)遠藤謹助
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
明治維新と言えば、ともすると政治家や外交官、軍人に焦点が当たりがちだが、技術や科学の面でも多大に貢献した人々がいる。本編シリーズ第1話では、かの「長州ファイブ」の一人であり、「造幣の父」と言われる遠藤謹助にスポットを当て、貨幣鋳造で日本の近代化に寄与した遠藤の経歴や功績、その気骨についても紹介する。
時間:10分05秒
収録日:2014年2月5日
追加日:2014年2月24日
≪全文≫

●「桜の通り抜け」を始めた造幣の父・遠藤勤助


 歴史家として、明治維新について、特に外国などとの関係も含めて話してみたいと思います。今日から3回、あるいは4回連続で、このテーマについて触れてみたいと思います。

 明治維新と申しますと、幕末、明治初期というのは、ともすれば、政治家、外交官、軍人という人たちのあり方に焦点が当てられますが、やはり近代日本をつくった私たちの先人の中に、技術者や科学者、あるいは、そうした民生家とも言うべき人たちもいたわけで、彼らがつくった明治という新しい時代、ひいては、幕末とはどのようなものだったのかということを、3回くらいに分けて少し考えてみたいのです。

 最初に取り上げたい人は、遠藤謹助という人です。遠藤謹助という人物は知らなくても、大阪の市民の人たちだけではなく、日本人の多くは、大阪にある造幣局の花見、「桜の通り抜け」という行事を知っている人が多いと思います。それに関連した話です。

 大阪の北区の天満に、昔の大蔵省造幣局であり、今、独立行政法人造幣局の本部が置かれて、本局があります。そこは、ちょうど旧淀川沿いの景勝の地として江戸時代から知られていまして、特に春は桜見物、それから夏は涼み船や夕涼み、秋は月見といった形で、昔の浪速、今の大阪の市民たちの憩いとにぎわいの場所になっているのです。特に、先ほども触れましたが、春の桜は名所として知られていまして、対岸は「桜ノ宮」と呼ばれるほど、桜が咲き乱れていたと私は聞いたことがあります。この造幣局の桜の通り抜けを始めた人物に関係する話です。

 この通り抜けを始めたのが、明治16(1883)年で、当時の造幣局長の遠藤謹助の発議によるものでした。もともと造幣局の敷地内でしたから、局員たちが桜見物を楽しんでいました。今ならば、市民たちが「自分たちにも見せろ」と言うのでしょうが、当時はお上が偉かったので、そういうことも市民たちは公然とは言わなかったようです。しかし、遠藤は、「局員だけの花見ではもったいない」「市民とともに楽しもうではないか」という、まことにあっぱれな提案によって、構内の桜並木を一般の大阪市民に開放したという、大変素晴らしいことに由来するものなのです。

 ところで、この遠藤謹助が事実上つくった大阪の造幣局は、日本の近代化の象徴です。資本主義の発展にとって必要なのは金銀銅貨であり...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
本当のことがわかる昭和史《5》満洲事変と石原莞爾の蹉跌(1)なぜ満洲が重要だったのか
放っておけば朝鮮はロシア領になりかねなかった
渡部昇一
古代中国の「日常史」(1)日常史研究とは何か
『古代中国の24時間』英雄だけでなく無名の民に注目!
柿沼陽平
『昭和16年夏の敗戦』と『昭和23年冬の暗号』
『昭和16年夏の敗戦』『昭和23年冬の暗号』が映す未来とは
猪瀬直樹
『江戸名所図会』で歩く東京~日本橋 (1)日本橋に見る徳川家康の手腕
徳川家康と江戸の町づくりー江戸時代の「日本橋」の姿とは
堀口茉純
家康の人間成長~戦略性をいかに培ったか(1)今川「人質」時代と今川義元の思惑
徳川家康の秘密…「辛抱」イメージとは異なる自由奔放な人質時代
小和田哲男
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎

人気の講義ランキングTOP10
高齢者のフレイル・認知症とその予防対策(1)老年病科と高齢者の疾患・病態の特徴
頻尿、低栄養、転倒、誤嚥、フレイル…増える老年症候群と高齢者の疾患・病態の特徴
小川純人
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(5)恐るべき台湾への「浸透」
浸透工作…台湾でスパイ裁判が約70件、それも氷山の一角
垂秀夫
「満洲」から考える日本とアジア(6)21カ条の要求と第一次世界大戦
日本が中国に出した「21カ条の要求」の罠と必然…不安定な満洲利権を手にした日本が直面した難題とは?
宮脇淳子
『オデュッセイア』で読み解く神話の秘密(1)物語の構造を読み解くおもしろさ
『オデュッセイア』の面白さの秘密を神話の構造から読み解く…なぜ波乱万丈の神話が人間の創作の源泉になったか
松村一男
「ホメロス叙事詩」を読むために(5)『イリアス』の世界ーその1
叙事詩イリアス…トロイア戦争最後の50日間を描いた傑作
納富信留
キリンでつかんだ「幸せになる」仕事術(1)悩みの99%は他者との関係性
「使命観=パーパス」に立脚できないのは自分のエゴのせい
田村潤
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
日本の財政の真実を検証する(1)膨らむ借金の知られざる実態
日本の財政の「真実」をデータで徹底検証…国際機関の分析は?
宮本弘曉
仏教とキリスト教が照らし出す日本の宗教(1)神とは何か、そして天皇とは?
日本と世界の「神と信仰」の違いは?…そして天皇の大切な役割
橋爪大三郎
中国春秋戦国時代と始皇帝(序)映画『キングダム』の中国史監修
中国古代史の真実と『キングダム』…史実がわかれば物語はもっと面白い
鶴間和幸