技術と民生から見た明治維新
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
北垣国道―京都の水利に尽力した「琵琶湖疏水の父」
技術と民生から見た明治維新(4)北垣国道
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
本編シリーズ講話第4回は、琵琶湖疏水の父・北垣国道。いまで言えば新幹線や青函トンネルの開通にも比すべき琵琶湖疏水の大事業を成し遂げ、その後も北海道の民生の長期的な安定と繁栄のために尽力した彼の功績を振り返る。
時間:11分23秒
収録日:2014年2月26日
追加日:2014年3月20日
≪全文≫

●南禅寺と水路閣から日本の近代を考える


 皆さん、こんにちは。

 皆さんの中には、京都の南禅寺を訪れた方も多いかと思います。特に、朝の早い南禅寺の境内は、まことに不思議な霊気が漂っていまして、独特な雰囲気を醸し出しています。

 さて、南禅寺を正面に見たときに、有名な楼門(ろうもん)があります。これは歌舞伎の有名な『楼門五三桐(さんもんごさんのきり)』の中で、石川五右衛門が、「絶景かな絶景かな…」と名科白を叫んだ場所としても知られていますが、その門の右手を見ますと、映画のロケなどでもよく目にする水路閣があります。

 この水路閣と南禅寺の組み合わせというのは、まことに面白いものがあるのですが、さて、こうした日本の伝統的な社寺と西洋の影響を受けた建築物が、同じ境内に共存しているというのは、なぜなのでしょうか。このあたりに、日本の近代というものを考える、また別の手がかりがあるかと思います。


●元勤皇の志士・北垣国道率いる水路閣建設という大事業


 この南禅寺を流れている水路閣は、もともとは琵琶湖疏水の水道橋、すなわち、琵琶湖から京都まで引いた疏水の支線です。つまり、琵琶湖の水をいくつもの山をうがったトンネル、隧道を通して琵琶湖から水を持ってきたのですが、その支線が水路閣だったのです。

 この水路閣の建設は、明治新政府の下で行われましたけれども、この大建築と大工事を現在風に言うならば、北海道新幹線や青函トンネル、東海道新幹線などの建設にも匹敵する、時代における最先端の事業でした。

 この掘削をした人物が、北垣国道という京都知事でした。北垣は、もともと但馬国の出身でしたが、幕末に勤皇の志士として、「生野銀山の変」という生野銀山で公家を盛り立てて倒幕に動いたことでも知られています。

 彼は、幕末から明治にかけまして、幕府を倒す戦争である戊辰の役で、特に越後の方の北越戦線にも転戦した人で知られていますが、明治になってからは、地方の知事として、さまざまな手腕と力量を発揮していきます。


●北垣・田辺コンビがつくり上げた誇るべき明治の遺産-琵琶湖疏水


 中でも、彼は、京都知事になった時に、これは豊臣秀吉以来か、ひょっとしたらもっとそれ以前の人の夢であった「琵琶湖の水を京都に引こう」という壮大な計画を実現しようとします。

 京都は、明治に入って、東京に奠都(てん...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
最初の日本列島人~3万年前の航海(1)日本への移住 3つのルート
最初の日本列島人はいつ、どうやって日本に渡ってきたのか
海部陽介
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(1)古代の持つ意義と重み
一神教もアルファベットも貨幣も全て古代に生まれた
本村凌二
明治維新から学ぶもの~改革への道(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新…官軍史観、占領軍史観、司馬史観、過誤論の超克
島田晴雄
『江戸名所図会』で歩く東京~吉原(1)「苦界」とは異なる江戸時代の吉原
遊女の実像…「苦界?公界?」江戸時代の吉原遊郭の真実
堀口茉純
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
渡部昇一

人気の講義ランキングTOP10
内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
日本の財政と金融問題の現状(1)財政赤字の何が問題か
日本の財政は本当に悪いのか?将来世代と金利の問題に迫る
木下康司
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
戦史に見る意思決定プロセス~日本海軍の決断(1)日本海海戦・東郷平八郎
なぜ東郷平八郎はバルチック艦隊を対馬で迎え撃ったのか?
山下万喜