技術と民生から見た明治維新
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井上勝―日本の「鉄道の父」と呼ばれた男
技術と民生から見た明治維新(3)井上勝
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
本編シリーズ講話第3回、「長州ファイブ」のアンカーは「鉄道の父」、井上勝。世界に冠たる日本の鉄道技術と安全安心への信頼は、彼なくしてあり得なかった。関係者には親しまれ、政界には多くの敵を作った「おさる」の鉄道一筋の生涯とその信念とは。
時間:20分36秒
収録日:2014年2月12日
追加日:2014年3月13日
≪全文≫

●すさまじかった高速鉄道の事故とずさんな事故処理


 皆さん、こんにちは。

 今日は、これまで話してきた「長州ファイブ」のうち、三人の技術系専門家の最後として、井上勝についてお話してみたいと思います。井上勝は、日本の「鉄道の父」とも呼ばれた人物です。

 さて、数年前に、高速鉄道が大変な事故を起こした国がありました。その事故のすさまじさを、私たちもテレビ映像やさまざまな写真映像を通して知りました。

 その時に驚いたのは、生存者の確認や事故規模の点検などもそこそこに、事故の翌々日には早くも営業を再開したことでした。事故原因の特定や被害者数の把握などは、利用者の安全を図り、今後の利用に安心をもたらすためにも大変大事な作業です。にもかかわらず、日本人の常識では全く考えられないほどの早期に営業が再開される。そこには実利や政治的な思惑が優先されたのではないかと推測されたのは、記憶に新しい次第です。

 また、高架橋から無残にぶら下がった車両をこともなげに上から下に突き落としていく乱暴な作業や、破壊された車両を重機で土の中に埋め込んでいくありさまにも驚かされました。どう考えても、事故の原因の真相をきちんと突き止めるという姿勢からは、ほど遠いものである印象を受けました。

 しかし、さらに驚いたのは、同国のスポークスマンによるふるった言い草です。「下が泥土であるために、救助作業を促進することができない。そこで足場を固めるために、車両を破壊して穴に埋め、その上に土を撒いたのである」という説明がなされました。これは、世界最速を自慢する国の事故処理にしては驚くべきことであったのみならず、そのような国の車両にふさわしく、「事故処理も超特急だ」と評された向きもあったほどです。


●世界に冠たる日本の鉄道と鉄道技術の父、井上勝


 日本の新幹線や高速鉄道の安全・安心な技術は、JR・私鉄を問わず、世界でも一番だと言われています。しかし、それが一朝一夕になったものではないということに、私たちは注意する必要があります。

 確かに、私たちは新幹線をつくりました。しかし、そのためには明治の新時代から「安全とは何か」ということに取り組んできた多くの技術者たちの存在があったのです。スピードを上げるために安全を犠牲にしない。また、「乗客に安心感と快適な旅」が常に考えられている。技術は技術と...

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