技術と民生から見た明治維新
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
田辺朔郎―北垣国道と土木事業の前線を担った「水運の父」
技術と民生から見た明治維新(5)田辺朔郎
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
本編シリーズ講話第5回は、北垣国道とともに京都や北海道で数々の土木事業に取り組んだ田辺朔郎。その仕事に見る明治の先人たちの発想の豊かさ、教養とセンス、志の深さに触れつつ、現代日本の繁栄がこの努力に根差していることを、感謝をもって振り返る。
時間:10分51秒
収録日:2014年2月26日
追加日:2014年3月27日
≪全文≫

●琵琶湖疏水建設に見る驚くべき明治人のスケール


 皆さん、こんにちは。前回は、北垣国道について触れました。北垣が着手し、そして開削、設計、その開通を命じた琵琶湖疏水や北海道の各鉄道。彼は、さまざまな土木事業に大きな影響を与えましたが、それを実際に前線で担ったのが、田辺朔郎であるということは、既に触れたとおりであります。

 とにかく驚きますのは、何と言ってもこの明治人のスケールの大きさです。大津市の三井寺の近くから、大体におきまして、長等山を掘り抜いてくる。その第1トンネルだけで、2436メートルあったと言います。この2436メートルを、当時はまだパワーショベルや重機のようなものがない時代に、ほとんど人力を中心に開削事業をしたのですから、大変な努力も必要でした。

 しかし、同時にそれが間違いなくきちんと大津と京都との間をつないだということは、驚くべきことです。前回申し上げましたように、浜大津から京都の蹴上までの高低差がわずか4メートルの中に琵琶湖疏水をつくっていったという点にも大変な驚きを感じるのです。

 そこで、前回の話に引き続きまして、今日はその田辺朔郎についてお話ししてみたいと思うのです。


●画期的運搬方法-インクライン


 前回もお話ししましたけれども、私は自分が特に好きなせいか強調したいのですが、京都の蹴上や岡崎のあたり、南禅寺を中心とした地域は本当に静かで、あちらこちらに煉瓦造やアーチの構造が残っています。中でも代表的なのはもちろん水路閣ですが、この水路閣を出て、下りまして南禅寺を出て、蹴上の方に坂を上がっていくと、すぐにレールがあることに気がつく人も多いかと思います。私も高校生の時に初めて京都を訪れ、その時に、このレールとここにある遺跡を見たくて、出かけて行きました。

 そこで私も皆さんも、今ではさびついた不思議な台車を見出す方も多いかと思います。これが、いわゆるインクラインの名残です。インクラインとは、舟のためにつくられた傾斜鉄道のことです。

 琵琶湖から通じた水路、水運のためのトンネルが蹴上の上の方に来ると、そこから今度は南禅寺の正門あたりまで、30メートル以上という大変な高低差が生じます。ここにどうやってその水を通すかという大問題があったのです。

 また、琵琶湖からせっかく運んで来たのは水だけではなく、舟を使って物も運ん...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(1)「無任所大臣」が生まれた経緯
現代の「担当大臣」の是非は戦前の「無任所大臣」でわかる
片山杜秀
最初の日本列島人~3万年前の航海(1)日本への移住 3つのルート
最初の日本列島人はいつ、どうやって日本に渡ってきたのか
海部陽介
徳川将軍と江戸幕府~徳川家斉(1)家斉が長期政権を維持できた理由
11代将軍・徳川家斉が50年もの長期政権を築けた理由
山内昌之
『江戸名所図会』で歩く東京~吉原(1)「苦界」とは異なる江戸時代の吉原
遊女の実像…「苦界?公界?」江戸時代の吉原遊郭の真実
堀口茉純
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
渡部昇一
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦

人気の講義ランキングTOP10
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(7)史料の真贋を見極めるために
質疑編…司馬遼太郎の「史料読解」をどう評価する?
中村彰彦
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか
ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
西垣通
熟睡できる環境・習慣とは(2)酒、コーヒー、ブルーライトは悪者か
ブルーライトは悪者か?近年分かった「第3の眼」との関係
西野精治