資本主義の再定義…哲学で考える
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強欲資本主義は死んだ…他者を助けることのできる他者を助ける
資本主義の再定義…哲学で考える(3)害なき利とコミュニティの時代
中島隆博(東京大学東洋文化研究所教授)
「強欲資本主義」と呼ばれるように、これまでの資本主義は環境や社会に害を与えても利を追求すればいいというグリーディな方向へ進みすぎたが、これからは「害なき利(profit without harm)」の時代だという。企業は「他者を助けることのできる他者を助ける」ために活動するべきなのだ。それは、ギリシャ・ローマの時代に説かれた人間の社会性や渋沢栄一の思想にも通じる。「カンパニー(一緒にパンを食べる仲間)」の原点に立ち返り、「コミュニティのためにマーケットがある」という視点に立つのである。(全6話中第3話)
時間:9分20秒
収録日:2026年1月21日
追加日:2026年8月10日
≪全文≫

●害なき利――他者を助けることができる他者を助けるために


 一昨年(2024年)の秋、しばらくオックスフォードを訪問していました。オックスフォード(大学)の経済学の先生たちとずっと議論をしていたのですけれど、アメリカの経済学者とは全然違う。それに私は感心をしたのです。

 お一人がコリン・メイヤーという先生で、非常に面白いことを言うのです。2つ、ここでポイントを申し上げたいと思います。

 1つは「プロフィット・ウィズアウト・ハーム(profit without harm)」。こういう言い方をするのですが、「害なき利」ということです。

 今までの社会、資本主義的な活動は、害を与えても利益を上げていい、そういう非常に強欲的な考えを持っていたということです。例えば、環境などがそうですね。環境に少々害を与えても、それは外部だからいいでしょうという考えで利を上げていたということです。これからはそういう時代ではない。害を与えてはいけない。逆に私たちが利益を上げる。しかも、正しい利益を上げるためには、問題を作るのではなく、問題を解決すること(が大事で、)それによって利(益)を上げるべきだ。こういう言い方をされたのです。

 なるほどと思ったわけです。では今の資本主義をベースにした経済活動の中で、企業の役割は何か。企業は何をするべきか。メイヤー氏が非常に面白いことを言っています。

 「私たちは他者を助けることができる他者を助けるために存在している」

 少し変な日本語ですよね。メイヤー氏の本は早稲田の宮島(英昭)先生たちが日本語に翻訳してくださっています(『資本主義再興――危機の解決策と新しいかたち』)。それで読めるのですけれど、ここのところの訳は分かりやすく日本語訳されているのですが、私は原文のある種のぎこちなさ、こちらのほうがいいなと思っているので、あえて原文から訳させてもらったのです。

 人間は先ほど言ったように「根源的な社会性」を持っている。そうすると、他者を助けるわけです。(つまり)そういう人はいる、あるいはそういう機会はあるわけです。ところが、それが一回こっきりになってしまったり、何かの事情でできなかったりすることはよくあります。

 でも、それを企業がバックアップする。そうやってやっていくと問題も解決するし、社会のあり方も大きく変...

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