第一次世界大戦100年と日本
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石油における安全性と確実性は多様性と多元性に潜む
第一次世界大戦100年と日本(2)石油と安全保障
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
中東の紛争、「イスラム国」(IS)、ウクライナ。現在の国際秩序を揺るがす混乱のどれもが、まさか100年前に五つの大帝国が崩壊した余波だとは。歴史学者・山内昌之氏が“石油エネルギー”の視点からこの一世紀の近代史を読み解き、紛争の構造を説く。シリーズ「第一次世界大戦100年と日本」第2回(全5回)。
時間:11分34秒
収録日:2015年4月15日
追加日:2015年5月21日
カテゴリー:
≪全文≫

●100年前に崩壊した五つの大帝国


 皆さん、こんにちは。前回に引き続き、第一次世界大戦から100年というテーマでお話しします。最初に、孔子の言葉をもう一度おさらいしておきましょう。

 「我欲載之空言、不如見之於行事之深切著名也」

 「抽象的な言葉に依拠しようとするよりも、具体的な出来事で説明することの方が、極めてねんごろで明快にすぎるものはない」という意味です。

 本日は、崩壊した帝国と石油エネルギーというテーマで、第一次大戦後100年がたっても、中東から黒海に至る地域で国際秩序を揺るがす事件が起こっている背景について探っていきたいと思います。それは、歴史的に多民族国家として形成された帝国が崩壊した余波、そして、帝国の領土が分解しても、そのかけらをめぐる争いがまだ消えていないからです。

 今、ご覧いただいているように、そこには、ホーエンツォレルン朝ドイツ帝国、ロマノフ朝ロシア帝国、そしてオスマン朝トルコ帝国、さらに、ハプスブルク朝オーストリア=ハンガリー帝国、この四つの大きな帝国をヨーロッパから中東にかけて指摘することができます。ここに、大戦勃発の直前、1911年に辛亥革命で解体した清朝の中華帝国を加えることもできます。


●米露発のイデオロギーが国際秩序を変えた


 ところで、第一次世界大戦に当たって、戦争の遂行と終結に大きなインパクトを与えたものの一つに、イデオロギーの強さがありました。中でも、国際平和主義の提唱者であるアメリカ合衆国大統領ウッドロウ・ウィルソン、そして、ボリシェヴィズムの提唱者でロシアの革命家・政治家であったウラジーミル・レーニン、この二人のイデオロギーの強烈さを指摘しなければなりません。

 その中心にあったのは、植民地として支配されていた国々や住民・民族が、自らの運命を自らが定めることができるという民族自決権、そして彼らが主権独立国家・自治国家を持つことができるという原理でした。これが、それぞれニュアンス、あるいはイデオロギーが根本的に違いながらも、ウィルソンとレーニンの主張として共通していた面です。

 こうした新しいダイナミズムは、近代ヨーロッパ各国の従来の秘密外交、あるいは旧外交と呼ばれた国際秩序間に、大変大きな修正と転換を余儀なくさせました。

 イギリス、フランス、ドイツ、ロシアといったヨーロッパの古典的な...

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