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「工夫のない奴らが売れるのはおかしい」と管理業に転換

億万長者への道(2)拡大破滅型リスクを回避し累積商売の道へ

高橋誠一
三光ソフランホールディングス株式会社 代表取締役社長
情報・テキスト
「億万長者への道」の後半は、さながらビジネス獣道である。独力で不動産業を始めた高橋誠一氏は、やめるとき、方向転換を図るときにこそ、抜群の嗅覚を働かせる。第2次オイルショック、バブル、リーマン・ショックと荒波の続く業界を生き残り、積算ゲームを続ける男のコツは、「2倍働き」「欲をかかない」ことだと言うのだが。(後編)
時間:12:34
収録日:2014/07/24
追加日:2015/06/11
カテゴリー:
≪全文≫

●初めての事業は難しい。建売事業は銀行とのバトルから


高橋 何でもそうなのですが、初めてのことは難しいです。建売を始めようと、わずかに50坪分、坪20万円で1000万円の資金を銀行で借りようとしたときが、そうでした。不動産を始めて1年経った頃、「建売をやりたいので、貸してくれないか」と申し込んだら、「実績、ありますか?」と言われました。

 実績と言われても、初めてですからね。「初めてで、実績はないのですか?」と聞かれたので「ないです」と言ったら、「ああ。お貸しできません」と言われて、終わり。「貸してくれないの、これ?」「いや、駄目です」「なぜ?」と粘っても駄目なものは駄目でした。

 次の銀行へ行ったら、「実績はありますか?」「ありません」「初めてですか?」「初めてです」「はい。では、お貸しできません」それで終わりです。全部断られる。

 「これは、どうなっているのだ。何? 初めてだと全部駄目なの?」と言いながら4軒回りましたが、全部断られた。それで、これは駄目だな、と気が付きました。

 「でも、地主さんとは契約してしまったから、何とかしなければ」と自分に言い聞かせ、きょうだいのところへ行きました。僕は六人きょうだいの末っ子ですから、兄と姉に「200万円ずつ貸してよ。金利10パーセント払うから」と頼み、上の四人が800万円貸してくれました。これに自分の手持ち資金200万円を足し、1000万円で土地を買いました。


●大工さんに頭を下げて、建った、売れた、また建った


高橋 買った土地は25坪ずつに二分割して建物を建てよう、あまり大きなものは建てられないので、当時の相場で500万円ぐらいでお願いしよう、と決めていました。ところが土地代に全部はたいてしまったので、もう1銭も残っていない。そこで、大工さんの所へ行って「すいません。僕、お金ないのですけれど、ここに建物建ててくださいよ」と頭を下げました。「売れ次第払うという条件でやってくれないか」と聞いたら、「おお。やってやるよ」と言ってくれました。

―― すごいですね。

高橋 面白いな、と思いました。「絶対に、何でもできるな」と思い、1軒建ててもらってすぐ売って、またすぐ次を建ててもらってまた売って。

 次は3区画買おうと思ったのですが、銀行が駄目なのは分かっているので、信用金庫へ行ってみました。「貸してくれない?」と言うと、出て来たのが一つ後輩で、「いいよ、貸すよ」と言う。「お前、そんな簡単に言って大丈夫? 後で貸してくれないとなると、僕の手付金、パーになるぜ」と念を押したのですが、「大丈夫だよ」と貸してくれました。

 その3区画もすぐに売れたので、「今度は10区画にしよう」ともくろみました。すると、これまで断ってきた銀行の方から「実績ができましたね」と連絡が入るのです。「2区画分貸しましょう」「3区画分貸します」と、合計10区画分が借りられました。今回は道路を入れた大きな開発となり、盛大に売って20区画買う。それも売れて、また30区画。35歳のときには40区画を売ることになり、儲かって仕方がない状態になりました。

―― それはそうですよね。


●儲かり過ぎにストップをかけた、周辺業者への観察


高橋 社員は5人しかいないから、もう人には言えないぐらい儲かった。建てている最中から売れていくので、「こんなに儲かっていいのかな?」と。

 あまりに儲かりすぎるので、「なぜ売れるのだろう?」と他の会社の状況を見渡してみたのです。大手で100棟の開発をしているところは、150棟分も200棟分も土地を買っていく。40区画の会社は60区画分。皆5割増しで、余分に土地を買っているのですね。それで、買ったらすぐに建てる。

 自分より小さな業者はどうかと思ってみると、やはり10区画ぐらいを手がけているのが15区画ぐらい買う。「あれ、こいつもか」と思うと、1、2戸しかやらない人までその方式でやっていて、やはり売れている。

 「なぜ全部売れるの? これは、おかしいよ」と僕は思いました。自分の物件が売れるのは分かるけれど、彼らが売れているのはおかしいと、真剣にそう思ったのです。

―― あまり工夫しない連中でも?

高橋 そう。「僕は工夫しているけど、彼らは工夫してない。それなのに彼らが売れているのはおかしい」と思いました。自社はともかく、あんなものまで売れるのは、雰囲気で売れているだけだろうと思い、「やめる!」と決断しました。手持ちの土地を全部売り飛ばして、銀行の借入金を全額返したのです。


●拡大破滅型の恐ろしさを目の当たりにし、管理業へ移行


高橋 「売るものがなくなるから、続けてやりましょうよ」と社員は言いましたが、自分は「やらない」の一点張り。「うちは、注文建築にする...
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