●『秋田県の憂鬱』著者へ取材のため秋田へ
それから、当時は秋田大学の副学長をされていましたが、法医学教室の吉岡尚文先生という人が居らっしゃいました。この人は、平成4年に『秋田県の憂鬱』という小冊子を作っているわけです。それを編集者の方が見つけて、この人をインタビューに行きましょうかという話になりました。
その小冊子は自殺の統計的な内容だったので、私はあまり統計的なことに興味がなかったのです。しかし、『秋田県の憂鬱』というタイトルが面白いというか、秋田県が憂鬱ということで文学的でしたので、少し興味を持ちまして、吉岡先生に会いに秋田まで行きました。その時は秋田大学に居らっしゃったので、大学の中でお会いして、少しインタビューをさせてもらったのです。
●秋田県は自殺率が高い
その時の話もこの中(『自殺』朝日出版社)に入っていますけれど、秋田県は、自殺率(10万人当たり何人自殺したかという数値)がここ何年もずっと高いのですね。秋田、青森、岩手あたりが自殺率の上位を占めているわけですね。あと、新潟も入ります。つまり、秋田は自殺率が高いのです。
吉岡先生は法医学が専門ですから、変死体などが見つかると解剖のお仕事もやられていたので、自殺とも関わってくることになります。警察から調べてくれという話がきたら、当然そこにある遺書を読んだりもします。そうやって、自殺と関わっていく中で、秋田県は自殺が多いということを初めて知るのです。
●自殺への関心が高まったのは10年前から
当時、秋田県は自殺が多いということは、報道されていなかったわけです。吉岡先生はそのことを知り、なぜそうなのかということを調べようとして、いろいろな統計を取っていくのです。特に高齢者、お年寄りの方の自殺が多いのですが、それで『秋田県の憂鬱』を作るのです。そして、作った小冊子を、マスコミや県、学校などいろいろなところに配るのですが、当時は何の反応もなかったとおっしゃっていましたね。
当時は当然、自殺防止に対する予算が全くゼロで、興味も示してくれない。そこで、吉岡先生は、『秋田県の憂鬱』の第2弾を作るわけです。その後、その小冊子を3冊まで作るのですが、少しずつ予算を組んでもらったり、あるいはだんだんとマスコミが取り上げるようになりました。それが、大体10年ぐらい前のことです。いま自殺のこ...