末井昭、「自殺」を語る
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『自殺』の執筆を奮い立たせたのは東日本大震災
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人に言えなかった母のダイナマイト心中
末井昭、「自殺」を語る(1)母のダイナマイト心中
末井昭(編集者・作家)
編集者・作家の末井昭氏は、2014年に第30回講談社エッセイ賞を受賞した。著作のタイトルは、なんと『自殺』である。重いテーマを独特のユーモラスな文章で表現し、自殺をタブー視しがちな社会への一投とした。著作の裏には、母親がダイナマイト心中で命を落とした経験と、それを長い間話すことができなかった苦悩があった。(2015年6月16日開催日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー講演「私が『自殺』を書いた理由と“生きづらさ”を取り除く方法」より、全6話中第1話目)
時間:9分38秒
収録日:2015年6月16日
追加日:2015年7月27日
カテゴリー:
≪全文≫

●「お金」の概念がない山奥の村に生まれて


 自己紹介を兼ねて、私の子どもの頃の話をしたいと思います。私は岡山に生まれ、一昨日が誕生日で67歳になりましたが、自分ではあまりピンときていません。生まれたのは岡山の山奥で、私がまだ子どもの頃はお金という概念がない所でした。たまに町から車で物売りがやって来ますが、大体米などと物々交換するのです。そういう原始共産社会のような状態で、イノシシが捕れると半鐘が鳴って、皆が川に集まり、肉を切り分けるようなそういう村で育ちました。

 お金という概念がなく物々交換をしていた子ども時代から、今の電子マネーの時代まで、自分の中では40年か50年でわっと変化が起きているわけです。その違いはすごいなという感じです。

 うちの母親は当時、肺結核で町の病院に入院していたのですが、もう治らない状況で家に帰ってきました。それが私の小学校1年生の頃です。


●母親の死とダイナマイト


 当時、村で唯一の現金収入の道は、鉱山で働いて給料をもらうことだけでした。うちは農業をあまりやっていなかったので、父親が鉱山に働きに行っていました。

 当時の鉱山では坑道を掘り進む途中、ダイナマイトを使って、あちこち爆発させるのです。今ではそういうことはしませんが、昔は穴を開けてダイナマイトを詰めて爆発させ、鉱石を運び出すということを、毎日繰り返していたわけです。今は削岩機でやりますが、その結果、珪肺が増えたともいわれています。そういうこともありますが、当時はダイナマイトを使っていました。

 このダイナマイトを家でも使うため、父親が鉱山から持ち帰るので、家には大体いつも1箱はありました。それに火を付けて魚を捕ったりするのです。水しぶきがバッと上がってメダカが浮いたりするのですが、魚はあまり捕れません。そんなわけで、ダイナマイトはいつも身近にありました。

 なぜダイナマイトの話をするのかというと、私の母親がダイナマイトで死ぬからなのです。普通、ダイナマイトはそれほど身近なものではありませんので、まずその説明をしておこうと思ってお話をしました。


●人に言えなかった母のダイナマイト心中


 それで、母親が町から帰ってきたのですが、鉱山で仕事をしている近所の若者がうちに出入りするようになりました。その中の一人が母と恋愛関係になり、二人は山の中に行って、ダイ...

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