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DATE/ 2017.11.09

上場企業2,172社の「平均年収」とは?

 上場企業の平均年間給与額が、東京商工リサーチから発表されています。2017年3月期決算の2172社の平均は、628万1,000円(中央値610万円)で、民間企業平均の420万円(国税庁調べ)よりも200万円以上高く、ほぼ1.5倍に上る勘定だ。効果が薄いと言われるアベノミクスだが、上場企業にはまんべんなく波及しているのでしょうか。

7年連続増加の確かな効果だが、この先は?

 実際、上場企業2172社の平均年間給与は、2011年以来7年連続で伸びています。

2011年 590.3万円
2012年 598.2万円
2013年 599.5万円
2014年 605.7万円
2015年 616.2万円
2016年 624万円
2017年 628.1万円

 2013年4月に実施された「異次元緩和」以降は伸びが大きくなっているようにも見えますが、世界的な好景気到来のおかげだという意見もあります。いずれにせよ、今回の伸び率は2016年3月期(前年比1.2%増)を0.6ポイント下回り、鈍化が目立っていることも見逃せない事実です。

 経団連によると、今春の大手企業(売上高500億円以上の東証1部123社)の賃上げ率は2.3%増で、4年連続の2%超。上場企業の中でさえ格差が進み、高水準給与の上場企業が常連化している傾向がわかります。

業種別で、意外に強い/弱いのは?

 業種別にみると、10業種の中、水産・農林・鉱業、金融・保険業、不動産業の3種類を除く7業種が増加。活発な建設投資により好決算が続出した建設業では、711.8万円(前年比3.1%)と、唯一700万円を超える額になっています。

<業種/平均年間給与/前年比>
建設業/711.8万円/3.1%
水産・農林・鉱業/694.6万円/▼0.76%
金融・保険業/694万円/▼1.81%
不動産業/690.2万円/▼2.06%
電気・ガス業/690.1万円/3.88%
運輸・情報通信業/654.9万円/0.74%
卸売業/626.5万円/0.29%
製造業/622.4万円/0.81%
サービス業/539万円/0.79%
小売業/515.3万円/0.4%

 2016年決算で700万円台入りしていた不動産業と金融・保険業の2業種は、そろってマイナスに転じ、不動産業では、不動産そのものの価格上昇は続いていますが、高騰により投資物件などの動きが鈍化してきたことが、従業員の給与に反映した可能性があると東京商工リサーチでは分析しています。また、金融・保険業は、マイナス金利や低金利競争など、金融機関の厳しい収益環境の影響がみてとれます。

 伸び率が顕著なのは電気・ガス業。東日本大震災による原発稼働停止などで賞与カットが続いていたのですが、2016年に5年ぶりに上昇に転じ、従来の「安定業種」の横顔を取り戻そうとしています。

トップ企業の多様化、所在地格差は?

 個別企業の平均年間給与トップは、東京放送(TBS)ホールディングスの1,661.5万円。以下、メディア関連、証券、商社など、おなじみのトップ企業が顔を並べています。

<会社名/平均年間給/業種/所在地>
東京放送ホールディングス/1661.5万円/運輸・情報通信業/東京都
朝日放送/1515.8万円/運輸・情報通信業/大阪府
フジ・メディア・ホールディングス/1485.4万円/運輸・情報通信業/東京都
野村ホールディングス/1451万円/金融・保険業/東京都
日本テレビホールディングス/1427.5万円/運輸・情報通信業/東京都
日本M&Aセンター/14188万円/サービス業/東京都
三菱商事/1386.2万円/卸売業/東京都
伊藤忠商事/1383.8万円/卸売業/東京都
テレビ朝日ホールディングス/1373.9万円/運輸・情報通信業/東京都
スクウェア・エニックス・ホールディングス/1365.1万円/運輸・情報通信業/東京都

 ベスト10ともなると、民間平均の3倍以上の年収を確保しています。そんなうらやましい上位50社のうち、約8割の43社が前年に続くランクイン。地方に本社を置く企業では、朝日放送のほか、山梨県の富士山麓に工場だけでなく本社や研究所をそろえるファナック(1318.3万円)、愛知県の中部日本放送(1227.7万円)がベスト20入りしているのが目を引くぐらいでしょう。

 5カ年計画の3年目に入った「地方創生」の道も、まだまだこれからが長いようです。

<参考サイト>
・東京商工リサーチ:2017年3月期決算「上場企業2,172社の平均年間給与」調査
http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20170725_01.html
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