テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2018.09.28

中国では当たり前!普及が進む「QRコード決済」

 2018年8月29日、webサービス大手のアマゾンジャパンが、すでにオンライン上の店舗で実装を進めている決済サービス「Amazon Pay」のQRコード決済対応を発表しました。これによってオフライン、つまりリアルの店舗でもAmazonアカウントでの支払いが可能になります。これに先立つ2月27日には、国内3大メガバンクである三菱UFJ、三井住友、みずほの3銀行がQRコード決済の規格を統一して市場参入するという報道もありました。先行している楽天の「楽天ペイ」やLINEの「LINE Pay」などとともに、QRコード決済市場が盛り上がりを見せています。

海外では普及が進んでいるQR決済

 この背景には、中国でQRコード決済が幅広く利用されている点が深くかかわっています。中国都市部では2016年5月の過去3か月間に、モバイル決済利用率が98.3%にものぼったというデータがあり、もはや当たり前になっています。中でもwebサービスを手がけるアリババグループの「Alipay」と、SNSやソーシャルゲームを運営するテンセントの「WeChat Pay」という2大QRコード決済の利用者はとても多いです。こうした中国のインバウンド需要に応えようと、日本もQRコード決済導入を進めているのです。

日本での現状はというと

 QRコード決済とは、クレジットカードや電子マネーと同様に現金が必要ないキャッシュレス決済のひとつ。アプリをスマホにダウンロードし、QRコードを読み込んで決済するのが特徴です。読み込み方には2種類あり、店側に掲示されたQRコードをアプリで読み込んで店側に金額を入力してもらう「読み取り支払い」か、アプリで生成されたQRコードを店側に読み取ってもらう「コード支払い」で決済します。

 しかし現金主義が根強い日本でのQRコード決済普及率はまだまだ低いと言わざるをえません。そもそもキャッシュレス決済全体でも、2015年時点で18%程度なのです。

 政府はこの状況が続いて日本市場が孤立することを懸念しており、「支払い方改革宣言」を出して2025年までにキャッシュレス決済率を40%程度まで引き上げることを目ざしています。この指標に設定されているのが、2020年の東京オリンピック・パラリンピック。多くの外国人が訪れる機会に、海外マネーにも対応できる体制を整えたいと考えています。

 実は、この計画にはすでにイギリスでの成功例があります。2012年のロンドンオリンピック、パラリンピックをきっかけとして、イギリス政府が主導したキャッシュレス化推進政策です。これによって2007年には37.9%だったキャッシュレス決済比率が、2016年には68.7%まで伸びました。30%以上の伸び率とは驚きですよね。ただしこの政策は政府の強いリーダーシップで成功したといわれているため、日本で実施する場合も政府を上げての推進活動が必要でしょう。

QR決済のメリットとデメリット

 日本でのキャッシュレス化推進政策がどれほどうまくいくかはまだわかりませんが、キャッシュレス化が進むことは間違いありません。慣れれば便利なキャッシュレス決済は、今まで使っていなかったとしてもチャレンジする価値があります。中でもQRコード決済は、クレジットカードやほかのモバイル決済にはないメリットがあります。

 QRコード決済はスマホアプリで実行するため、現金だけでなくカードも必要ありません。しかもスマホなら出かけるときには必ず持っているので、忘れてしまう心配もありませんよね。またアップル社の「Apple Pay」やNTTドコモの「おサイフケータイ」のようにOSや機種が限定されず、ほとんどの機種で利用できるのも魅力です。

 多くの人が真っ先に心配するセキュリティ面ですが、近年はオンラインで保管する文字列を暗号化ではなく無意味な文字列に置き換え、参照するときだけ復元するトークナイゼーションの技術が普及しています。QRコード決済のためのデータにもこの技術が使われていることが多いため、ほかの決済方法と比べて脆いということはありません。

 デメリットとしては、スマホが充電切れだったり故障していたりするとアプリが使えない点があげられます。さらにキャッシュレス決済すべてにいえますが、災害時などの非常事態にはスーパーやコンビニのレジが復帰しても現金しか扱えないケースもあります。アプリが使えないときのために、現金も手元に置いておくほうが安心でしょう。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
自分を豊かにする“教養の自己投資”始めてみませんか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,100本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

幸運と不運はあざなえる縄のごとし…非行少年の運と実力

幸運と不運はあざなえる縄のごとし…非行少年の運と実力

運と歴史~人は運で決まるか(3)幸運と開運

「幸運」と似た言葉に「開運」があるが、この二つは歴史的にみると少し違うと山内氏は語る。かつて或る国に非行少年だったが運にめぐまれて宰相に上り詰めた男がいたが、彼は本当に幸運だったのか。そもそも幸運とは何か。また...
収録日:2024/03/06
追加日:2024/05/02
山内昌之
東京大学名誉教授
2

起業の極意!サム・アルトマンと松下幸之助

起業の極意!サム・アルトマンと松下幸之助

編集部ラジオ2024:4月24日(水)

ChatGPTを開発したことで一躍有名となったOpenAI創業者のサム・アルトマン。AIの発展によって社会は大きく、急速に変化しており、その中心的な人物こそが彼であるといっても過言ではありません。

そんなアルトマンが...
収録日:2024/04/15
追加日:2024/04/24
テンミニッツTV編集部
教養動画メディア
3

驚愕的インフレを克服したブラジルの奇跡と強さの秘密

驚愕的インフレを克服したブラジルの奇跡と強さの秘密

グローバル・サウスは世界をどう変えるか(5)多民族国家ブラジルの強さ

グローバル・サウスで注目される6カ国の最後はブラジルである。南米最大の多民族国家として、文化やスポーツなどさまざまな面で注目を集めており、世界の中でもその開放的な国民性には関心が高い。しかし、政治では腐敗やスキャ...
収録日:2024/02/14
追加日:2024/05/01
島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授
4

地政学を理解する上で大事な「3つの柱」とは

地政学を理解する上で大事な「3つの柱」とは

地政学入門 歴史と理論編(1)地政学とは何か

国際政治を地理の観点からひも解く「地政学」という学問。近年、耳にすることも多くなった分野だが、どのような手法や意義を持った学問であるかを学ぶ機会は少ない。その基礎から学ぶことのできる今回のシリーズ。まず第1話では...
収録日:2024/03/27
追加日:2024/04/30
小原雅博
東京大学名誉教授
5

皇室像の転換…戦後日本的な象徴天皇はいかに形成されたか

皇室像の転換…戦後日本的な象徴天皇はいかに形成されたか

天皇のあり方と近代日本(1)「人間宣言」から始まった戦後の皇室

日本の歴史のなかで、天皇や皇室の姿は大きく移り変わってきた。日本が第二次世界大戦に負けた後、戦後日本的な象徴天皇の姿が確立されていったが、今、その「戦後の皇室像」の変化が求められているのではないか。その問題意識...
収録日:2021/11/02
追加日:2021/12/16
片山杜秀
慶應義塾大学法学部教授