テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2016.05.21

Amazonプライム「囲い込み」戦略の先に待っているのは?

 4月22日に音楽配信「プライムラジオ」を開始するなど、次々とサービスを拡大しているAmazonの有料会員制度「Amazonプライム」。Amazonの狙いはいったい何なのでしょうか。サービス内容から探ってみたいと思います。

動画に音楽、1時間以内の配送も!

 もともとは送料やお急ぎ便の手数料が無料となるサービスとして始まったものですが、今では特典内容が多岐に渡るようになりました。たとえば「プライム・ビデオ」。「Amazonビデオ」内にある「プライム・ビデオ」の対象作品は見放題となります。「hulu」(月額1007円)や「Netflix」(同702円~)など類似サービスと比べると配信作品本数で劣ることは否めません。ただ、「Amazonプライム」は年会費3900円のため、一カ月あたり325円。仮に動画だけが目当てだとしても、価格面で「プライム・ビデオ」に分があります。

 音楽聞き放題「Prime Music」の競合は、「Google Play Music」や「Apple Music」、「LINE Music」、「AWA」など。こちらも、配信曲数では他のサービスには及びませんが、やはり価格では最安です。

 さらにKindle端末を持っていれば毎月1冊無料で読める「Kindleオーナーライブラリー」、会員限定先行タイムセール、エリアは限られるものの注文から1時間以内に商品を届けてくれる「Prime Now」、写真を容量無制限で保存できる「プライム・フォト」など、幅広い分野で展開しています。

 動画も音楽も単体で見れば“品ぞろえ”がもっと良いサービスはありますが、「Amazonプライム」のすごさは他より低価格で、しかも様々なサービスを利用できること。「どうしても見たい動画がhuluにあるんだ、プライム・ビデオじゃ見られないんだ」という人は別ですが、「暇な時に動画をいろいろ見られたらいいかな」という人にとっては、「プライム・ビデオ」で十分でしょう。そういったライト層を根こそぎ他サービスから奪い取る可能性を持ち合わせているのです。「Amazonプライム」さえ入っておけば大丈夫、そう思わせることが狙いなのではないでしょうか。送料無料、お急ぎ便の手数料無料だけが売りだった頃と比べると隔世の感があります。

囲い込み戦略の先に待っているのは…

 一方で、4月6日から非プライム会員に対しては全品送料無料を廃止し、2000円未満の注文に対しては350円の送料がかかるようになりました。「Amazonプライム」の優遇を進め、"囲い込み"を強化していることが見てとれます。その先にはどのような未来があるのでしょうか?

 米国の事例が参考になるかもしれません。米国の「Amazonプライム」は現在年会費99ドルですが、2014年に79ドルから99ドルへ値上げした過去があります。また、今年から月額プラン、「プライム・ビデオ」のみの月額プランも登場しています。ユーザーを囲い込んだ後に日本でも値上げをするのでは…?そんな心配もしてしまいます。月額プランの導入もあるかもしれません。

 もしも値上げが発表されたとしたら、その時にはもう「Amazonプライム」なしには生活できない、そんな状態になっている人も少なくないかもしれませんね。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
雑学から一段上の「大人の教養」はいかがですか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,100本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

日本は再エネが難しい!?再エネ比率が高い国との相違点

日本は再エネが難しい!?再エネ比率が高い国との相違点

日本のエネルギー&デジタル戦略の未来像(3)電力の部分最適と全体最適

サステナブルな電力の供給と消費が求められる現代社会。太陽光発電のように電力の生産拠点が多元化する中で、それぞれの電力需給と国全体の電力需給のバランス調整が喫緊の課題となっている。実はヨーロッパなどの「再エネ比率...
収録日:2024/02/07
追加日:2024/04/27
岡本浩
東京電力パワーグリッド株式会社取締役副社長執行役員最高技術責任者
2

なぜ民主主義が「最善」か…法の支配とキリスト教的背景

なぜ民主主義が「最善」か…法の支配とキリスト教的背景

民主主義の本質(1)近代民主主義とキリスト教

ロシアや中華人民共和国など、自由と民主主義を否定する権威主義国の脅威の増大。一方、日本、アメリカ、西欧など自由主義諸国における政治の劣化とポピュリズム……。いま、自由と民主主義は大きな試練の時を迎えている。このよ...
収録日:2024/02/05
追加日:2024/03/26
橋爪大三郎
社会学者
3

イーロン・マスクと対立…ChatGPT大ブームまでの紆余曲折

イーロン・マスクと対立…ChatGPT大ブームまでの紆余曲折

サム・アルトマンの成功哲学とOpenAI秘話(2)ChatGPT開発秘話

仕事をはじめさまざまな生活シーンで多様な役割をこなすチャットボットとなった「ChatGPT」。OpenAIが公開したこのサービスが世界中を驚かせるまでには、その創業に携わったサム・アルトマンとイーロン・マスクの対立など紆余曲...
収録日:2024/03/13
追加日:2024/04/26
桑原晃弥
経済・経営ジャーナリスト
4

運も実力のうち!?小早川の寝返りを生んだ黒田長政の好運

運も実力のうち!?小早川の寝返りを生んだ黒田長政の好運

運と歴史~人は運で決まるか(2)運に恵まれるにはどうすればいいか

普通の人間の「運」については、どう考えればいいのだろうか。例えば、日本において消費文化が花開いた江戸時代、11代将軍・徳川家斉の治世には、庶民が「運がめぐってこない」ことを皮肉った狂詩があった。運には「めぐりあわ...
収録日:2024/03/06
追加日:2024/04/25
山内昌之
東京大学名誉教授
5

「和歌」と「宣命」でたどる奈良時代の日本語とその変遷

「和歌」と「宣命」でたどる奈良時代の日本語とその変遷

文明語としての日本語の登場(1)古代日本語の復元

日本語の発音は、漢字到来以来一千年の歴史を通してどう変わってきたのか。また、なぜ日本語は「文明語」として世界に名だたる存在といえるのか。二つの疑問を解き明かす日本語学者として釘貫亨氏をお招きした。1回目は古代日本...
収録日:2023/12/01
追加日:2024/03/08
釘貫亨
名古屋大学名誉教授