テンミニッツ・アカデミー|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツ・アカデミーとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2017.03.20

子どもの近眼予防の鍵は「太陽光」にあった!

東アジアで広まる、子どもの近眼

 「自分の子どもの近視は、何とか予防したい」。そう思う親御さんも多いのではないでしょうか。ところが近年、日本を含む東アジアでは子どもの近視が増えているそうです。いったいどんな予防策が効果的なのか。筑波大学眼科教授の大鹿哲郎氏が、最新の研究成果を教えてくれました。

 大鹿教授によれば、子どもが近視になるには、遺伝的な素因と環境的な要因の二つがあります。特に環境的な要因が大きく影響していることが、最近の研究で分かってきました。

 環境的な要因と聞いてすぐ思い浮かべるのは、スマートフォンやパソコン、あるいは携帯ゲーム機利用の増加です。昔に比べて「近くの作業」が増えていることが子どもの近視を進める原因では…と考えがちですが、大鹿教授いわく、実はそうでもないようです。

子どもの近眼予防の鍵は「太陽光」にあった

 では、子どもの近視に影響を与えるものは何でしょうか。ずばり、それは「太陽光」です。最新の研究では、屋外で遊ぶ時間が長いほど、近視の進行が遅くなったという報告が出ています。つまり医学的には、「部屋でゲームばかりしていると近視が進む」というよりは、「外で元気に遊ぶ子どもの方が近視は予防できる」ということだそうです。

 となると、「勉強しない子どもは目が良い」ということになりそうですが、最近の研究ではそのあたりもきちんと考慮されています。同程度の学力であっても、屋外での活動時間が長い子どもの方が、近視が予防できるという結果が出ているのです。

 また、目に過度の負担をかけないことも、子どもの近視予防では大切なようです。昔からよく親に「姿勢を正しなさい」とか、「暗いところで字を読まない」などと言われました。たしかに、姿勢を正せば必要以上に近づけて見る必要はないですし、明るい場所で読めば自然と正しい姿勢に近づいていきます。目に負担をかけないという意味では、親に散々言われてきた「小言」も、実は理にかなっていたのですね。

その他に効果的な方法は?

 その他に、有効な方法はあるのでしょうか。大鹿教授は、目薬やコンタクトレンズを使用する方法もあるといいます。例えば、瞳孔を拡張するアトロピンという目薬を、濃度をとても薄くして点眼すると、近視予防に効果があるとされます。

 また、オルソケラトロジーという特殊なコンタクトレンズを使う方法もあります。これは寝ている間につけるコンタクトレンズで、何年か続けていると、角膜のカーブを変えられるため、近視の予防につながるそうです。

 このように、アトロピンやオルソケラトロジーは、子どもの近視予防に一定の効果が見込まれることが、医学的にも明らかになりつつあるものですが、他方であまり効果がないとされる方法も、残念ながらあります。

 例えば、二重焦点レンズを使った眼鏡をかけると、子どもの近視予防に効果があるとされていました。しかし、二重焦点の使い分けが子どもには難しいため、それほど効果的ということではないようです。

 ということで、今のところ、子どもの近視予防に効果的なのは「元気よく外で遊ぶこと」にまとめられそうです。当たり前といえば当たり前のことで拍子抜けしそうですが、きちんとした医学的根拠に基づくものです。つまり、当たり前のことが大事だということですね。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
より深い大人の教養が身に付く 『テンミニッツTV』 をオススメします。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,500本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

より良い人生への学び…開かれた知、批判の精神、学ぶ主体

より良い人生への学び…開かれた知、批判の精神、学ぶ主体

「アカデメイア」から考える学びの意義(4)学びの3つのキーワード

私たちにとって「学び」はどんな意義を持つのか。学びについて考えるべき要素は3つあると納富氏はいう。さらに、「学びは生きる場所」でもある。今生きている人と対話をする。先人たちと書物を通じて対話する。そのことで、自分...
収録日:2025/06/19
追加日:2025/09/03
納富信留
東京大学大学院人文社会系研究科教授
2

ヒトは共同保育の動物――生物学からみた子育ての基礎知識

ヒトは共同保育の動物――生物学からみた子育ての基礎知識

ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(1)動物の配偶と子育てシステム

「ヒトは共同保育の動物だ」――核家族化が進み、子育ては両親あるいは母親が行うものだという認識が広がった現代社会で長谷川氏が提言するのは、ヒトという動物本来の子育て方法である「共同保育」について生物学的見地から見直...
収録日:2025/03/17
追加日:2025/08/31
長谷川眞理子
日本芸術文化振興会理事長 元総合研究大学院大学長
3

日本の弾道ミサイル開発禁止!?米ソとは異なる宇宙開拓の道

日本の弾道ミサイル開発禁止!?米ソとは異なる宇宙開拓の道

未来を知るための宇宙開発の歴史(7)米ソとは異なる日本の宇宙開発

日本は第二次大戦後に軍事飛行等の技術開発が止められていたため、宇宙開発において米ソとは全く違う道を歩むことになる。日本の宇宙開発はどのように技術を培い、発展していったのか。その独自の宇宙開拓の過程を解説する。(...
収録日:2024/11/14
追加日:2025/09/02
川口淳一郎
宇宙工学者 工学博士
4

日本は集権的か分権的か…地理と歴史が作る人間の性質とは

日本は集権的か分権的か…地理と歴史が作る人間の性質とは

「集権と分権」から考える日本の核心(1)日本の国家モデルと公の概念

今も明治政府による国家モデルが生きている現代社会では、日本は中央集権の国と捉えられがちだが、歴史を振り返ればどうだったのかを「集権と分権」という切り口から考えてみるのが本講義の趣旨である。7世紀に起こった「大化の...
収録日:2025/06/14
追加日:2025/08/18
片山杜秀
慶應義塾大学法学部教授 音楽評論家
5

著者が語る!『『江戸名所図会』と浮世絵で歩く東京』

著者が語る!『『江戸名所図会』と浮世絵で歩く東京』

編集部ラジオ2025(19)堀口茉純先生の「講義録」発刊!

テンミニッツ・アカデミーで6回のシリーズ講義として続いてきた、堀口茉純先生の《『江戸名所図会』で歩く東京》が、遂に講義録として発刊されました。今回の編集部ラジオでは、著者の堀口茉純先生にお越しいただき、この書籍の...
収録日:2025/08/19
追加日:2025/09/03