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部下を潰して出世する「クラッシャー上司」とは?
会社を辞めたい…。多くの人が一度や二度、頭をよぎったこともあるはず。原因はそれぞれですが、実際の退職、転職者が会社に告げた退職理由で一番多いのは「結婚や家庭の事情」、次いで「体調を壊した」ではないでしょうか。しかしそれはあくまで建前で、本音では「人間関係」が最も多い理由だという興味深いデータもあります。
「すべての悩みは対人関係にある」と心理学者のアドラーも説いていますが、ブラック企業であろうとなかろうと、どんな会社でも起こりうる人間関係の問題の中で、最近注目されているのが部下を潰す「クラッシャー上司」の存在です。
では、実際に被害に遭った会社員の方に、具体的にクラッシャー上司にはどんな言動があったのか、お話を伺ってみましょう。
【不動産会社勤務・38歳男性・Yさんの場合】
「営業成績トップの社員が部長として異動してきて、初めは彼のやる気と手腕に部員のモチベーションは上がりました。部長は『俺の真似をすればいいだけだ』と言い、なんとかついて行こうと残業時間はどんどん増え、接待やゴルフにも毎回出席。部長が休日出勤すれば自分たちも休めず、若手社員が体調を崩し休みがちに。今度は『部次長のお前が管理を怠るからだ』と責められ、私は部下の管理と営業成績の両方で、顔を合わせば部長から文句を言われるように。ずっと睡眠不足で怒られている状態で仕事にも集中できず、とにかく怒られないことだけが目的になり限界でした。」
その後Yさんはうつ病の症状を自覚し医療機関を受診。診断書を持って転属願いを訴え、異動に。今後の出世に影響は出るかもしれないが、長い会社人生ここで潰れるよりマシだと「逃げて良かった」と言います。
【広告会社勤務・45歳男性・Nさんの場合】
「叩き上げの部長が社長になり、規模の小さい会社のため、業務内容や達成ノルマにも、直接社長が社員に指示を出すように。新社長就任1年目に黒字を達成しようとプレッシャーもあったようで、常にイライラとして、そのストレスを部下にぶつける。『なんとかしろ』『なんで出来ないんだ』が口癖で、人件費を減らして黒字維持をしようと反抗的な社員は評価査定を下げ減給したり、出向させたり、完全ワンマン状態。自分は精神的に強い方ですが、それでもストレスは想像以上でした。」
このままではまずいと思ったNさんは、上司の心理や扱い方を知ろうと、さまざまな本やネット情報に目を通したといいます。
「そこで目にした社員を潰す上司の特徴や傾向は『自分が出来るのになぜ他人は出来ないのかわからない』、『メンタルが弱い人間が嫌い』、『規律や精神論が好き』、『厳しくしないと部下はたるむ』、『理詰めで相手を言い負かす』など…。あぁ社長のことだと思いつつも、自分も同じだったと気づいたんです。クラッシャー上司、まさに俺かも!と思って焦りましたね。」
それからNさんは社長を反面教師に、出来る限り部下の精神状態や健康に気を配り、厳しいことを言っても必ずフォローを入れるように。仕事も出来る方でメンタルにも自信があった自分でも潰れそうになったことで、初めて自分より若く弱い部下がいることを認識し、守るという発想を持てたといいます。
しかし、クラッシャー上司という言葉が生まれたことで、「会社に来なくなったり、辞めていく部下を持つ上司には、今まで以上に会社は敏感になっていくと思う」とNさんは話します。Nさんの会社は、その社長になってからというもの、退職者や精神的な疾患で休職する社員が急増したことで、株主たちが第三機関に依頼して内部調査を実施、その結果、社員からの社長への不満の声があまりに多いという事実も含め、結局社長は任期を全うせずに退任となったそうです。複数の被害者社員がいたことが、「クラッシャー上司」認定につながりました。
過労から自殺した高橋まつりさんの事件などで、労働条件見直しやコンプライアンス管理、そして社内カウンセリングなどの必要性に注目が集まっている今こそ、ひとりではなく、みんなで声を上げてクラッシャー上司と戦うべき時なのかもしれません。
「すべての悩みは対人関係にある」と心理学者のアドラーも説いていますが、ブラック企業であろうとなかろうと、どんな会社でも起こりうる人間関係の問題の中で、最近注目されているのが部下を潰す「クラッシャー上司」の存在です。
身も心も潰される。クラッシャー上司はこんな人
「クラッシャー上司」という言葉を命名したのは、産業医としての経験もある筑波大学教授・松崎一葉さん。彼は著書『クラッシャー上司 平気で部下を追い詰める人たち』(PHP新書)の中で、「部下を精神的に潰しながら、どんどん出世していく人」をクラッシャー上司と定義づけ、その行動パターンや傾向を分析、対処法に言及しています。では、実際に被害に遭った会社員の方に、具体的にクラッシャー上司にはどんな言動があったのか、お話を伺ってみましょう。
【不動産会社勤務・38歳男性・Yさんの場合】
「営業成績トップの社員が部長として異動してきて、初めは彼のやる気と手腕に部員のモチベーションは上がりました。部長は『俺の真似をすればいいだけだ』と言い、なんとかついて行こうと残業時間はどんどん増え、接待やゴルフにも毎回出席。部長が休日出勤すれば自分たちも休めず、若手社員が体調を崩し休みがちに。今度は『部次長のお前が管理を怠るからだ』と責められ、私は部下の管理と営業成績の両方で、顔を合わせば部長から文句を言われるように。ずっと睡眠不足で怒られている状態で仕事にも集中できず、とにかく怒られないことだけが目的になり限界でした。」
その後Yさんはうつ病の症状を自覚し医療機関を受診。診断書を持って転属願いを訴え、異動に。今後の出世に影響は出るかもしれないが、長い会社人生ここで潰れるよりマシだと「逃げて良かった」と言います。
「出来ない人の気持ちがわからない」まさか自分が…?
そんなYさんとは対照的に「自分がクラッシャー上司だったかもしれない」という方にもお話しを伺いました。【広告会社勤務・45歳男性・Nさんの場合】
「叩き上げの部長が社長になり、規模の小さい会社のため、業務内容や達成ノルマにも、直接社長が社員に指示を出すように。新社長就任1年目に黒字を達成しようとプレッシャーもあったようで、常にイライラとして、そのストレスを部下にぶつける。『なんとかしろ』『なんで出来ないんだ』が口癖で、人件費を減らして黒字維持をしようと反抗的な社員は評価査定を下げ減給したり、出向させたり、完全ワンマン状態。自分は精神的に強い方ですが、それでもストレスは想像以上でした。」
このままではまずいと思ったNさんは、上司の心理や扱い方を知ろうと、さまざまな本やネット情報に目を通したといいます。
「そこで目にした社員を潰す上司の特徴や傾向は『自分が出来るのになぜ他人は出来ないのかわからない』、『メンタルが弱い人間が嫌い』、『規律や精神論が好き』、『厳しくしないと部下はたるむ』、『理詰めで相手を言い負かす』など…。あぁ社長のことだと思いつつも、自分も同じだったと気づいたんです。クラッシャー上司、まさに俺かも!と思って焦りましたね。」
それからNさんは社長を反面教師に、出来る限り部下の精神状態や健康に気を配り、厳しいことを言っても必ずフォローを入れるように。仕事も出来る方でメンタルにも自信があった自分でも潰れそうになったことで、初めて自分より若く弱い部下がいることを認識し、守るという発想を持てたといいます。
被害者は自分だけではない、ということを味方に。
おふたりの話からも、クラッシャー上司は、仕事の能力が高く出来る人、頑張れる人であるのは間違いないようです。それ故、自分の物差しが正しいと信じていますから、「直せ」と言っても直りません。同じことを繰り返し、ひとりではなく何人もの部下を潰していくのが特徴です。しかし、クラッシャー上司という言葉が生まれたことで、「会社に来なくなったり、辞めていく部下を持つ上司には、今まで以上に会社は敏感になっていくと思う」とNさんは話します。Nさんの会社は、その社長になってからというもの、退職者や精神的な疾患で休職する社員が急増したことで、株主たちが第三機関に依頼して内部調査を実施、その結果、社員からの社長への不満の声があまりに多いという事実も含め、結局社長は任期を全うせずに退任となったそうです。複数の被害者社員がいたことが、「クラッシャー上司」認定につながりました。
過労から自殺した高橋まつりさんの事件などで、労働条件見直しやコンプライアンス管理、そして社内カウンセリングなどの必要性に注目が集まっている今こそ、ひとりではなく、みんなで声を上げてクラッシャー上司と戦うべき時なのかもしれません。
<参考文献>
・『クラッシャー上司 平気で部下を追い詰める人たち』(松崎一葉著 PHP新書)
・『クラッシャー上司 平気で部下を追い詰める人たち』(松崎一葉著 PHP新書)
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