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『リスクマネジメントの真髄』から学ぶ、その基本姿勢
身のまわりに「安全」「安心」という言葉が溢れるようになったのは、最近、多くの人が何かしらの危険に対する不安が高まっているからではないでしょうか。なんであれ、不安を解消するためにはきちんと「リスク」を見極めることです。
ここでは、そのためのポイントを、『リスクマネジメントの真髄ー現場・組織・社会の安全と安心』(井上欣三 編著、北田桃子・櫻井美奈 共著、成山堂書店)をもとに考えていきます。
リスクマネジメントの基本姿勢は「危険を侮ってはいけない」「当事者意識をもつ」「危険を先読みする」の3つです。こうしたリスクに対する姿勢は私たちの日常生活や仕事において当てはまります。
「プロの将棋の棋士は対戦相手の打ち手を想定しながら何通りもの駒の打ち手の組み合わせを先読みする」、「また、できるだけ多くの打ち手を手の内に宿して対局に臨む」、「このように棋士が負けるという危険を克服するために先読みの鍛錬に励む」ように、リスクマネジメントの実践者は「日頃から先読みの習慣を身につけてリスクに立ち向かう姿勢が望まれる」というわけです。
ヒューマンエラーの発生は「見違い」「聞き違い」などの知覚エラー、「記憶違い」「ど忘れ」などの記憶エラー、「憶測」「思い込み」「勘違い」などの判断エラー、「やり間違い」「やり残し」などの行動エラーの順番で起こります。
認知心理学では、「記憶違い」「ど忘れ」などの記憶エラーには「マジカルナンバー」という方法が効果があるといわれているのです。マジカルナンバーは、人間が一度に短期記憶できる情報の数のことで、マジカルナンバー「4」が定説となっています。つまり、人間が一度に短期記憶できる情報の数は「3」か「4」、多くても「5」くらいというわけです。身近な例で言うと、マジカルナンバーは電話番号の表示方法に応用されています。電話番号は、03-XXXX-XXXXのように最大で4つのかたまりに分けて、直感的に分かりやすく記載しているのです。
本書のあとがきにはリスクマネジメントの本質について、「リスクマネジメントの目先の技術ではなく、意識改革に基づく行動への姿勢」と記しています。「安全はみんなでつくるもの」です。誰か個人を批判したところで何も生み出しません。個人のリスクも、組織のリスクも、社会のリスクも、他人任せにせずに、「当事者意識をもつ」ことを忘れないようにしましょう。
ここでは、そのためのポイントを、『リスクマネジメントの真髄ー現場・組織・社会の安全と安心』(井上欣三 編著、北田桃子・櫻井美奈 共著、成山堂書店)をもとに考えていきます。
リスクマネジメントの3つの基本姿勢
4年ほど前、安倍首相が東京オリンピック招致の最終プレゼンテーションで福島第一原発事故に関して「アンダーコントロール」と発言したのはまだ記憶に新しいところですが、本当の意味でアンダーコントロールするためには、都合のいい「安心」「安全」を振りまくだけではなく、きちんとリスクマネジメントできていなくてはなりません。リスクマネジメントの基本姿勢は「危険を侮ってはいけない」「当事者意識をもつ」「危険を先読みする」の3つです。こうしたリスクに対する姿勢は私たちの日常生活や仕事において当てはまります。
プロ棋士に学ぶ「リスクの先読み」
リスク・マネジメントの3つの基本姿勢のうち、「危険を先読みする」はすこし分かりづらいかもしれませんが、本書にはとても理解しやすい例が載っています。将棋のたとえです。「プロの将棋の棋士は対戦相手の打ち手を想定しながら何通りもの駒の打ち手の組み合わせを先読みする」、「また、できるだけ多くの打ち手を手の内に宿して対局に臨む」、「このように棋士が負けるという危険を克服するために先読みの鍛錬に励む」ように、リスクマネジメントの実践者は「日頃から先読みの習慣を身につけてリスクに立ち向かう姿勢が望まれる」というわけです。
事故全体の7~8割がヒューマン・エラー
「危険を侮ってはいけない」という点についてもすこし詳しく述べたいと思います。これは、人間の能力には限界があることを知るということでもあります。実は、事故全体の7~8割が、ヒューマン・エラーなどの人為的なミスから起こるといわれているのです。ヒューマンエラーの発生は「見違い」「聞き違い」などの知覚エラー、「記憶違い」「ど忘れ」などの記憶エラー、「憶測」「思い込み」「勘違い」などの判断エラー、「やり間違い」「やり残し」などの行動エラーの順番で起こります。
「うっかり」が減るマジカルナンバー
上のようなエラーは、できるだけ防ぎたいものです。そのためのちょっとしたテクニックがあるので紹介します。認知心理学では、「記憶違い」「ど忘れ」などの記憶エラーには「マジカルナンバー」という方法が効果があるといわれているのです。マジカルナンバーは、人間が一度に短期記憶できる情報の数のことで、マジカルナンバー「4」が定説となっています。つまり、人間が一度に短期記憶できる情報の数は「3」か「4」、多くても「5」くらいというわけです。身近な例で言うと、マジカルナンバーは電話番号の表示方法に応用されています。電話番号は、03-XXXX-XXXXのように最大で4つのかたまりに分けて、直感的に分かりやすく記載しているのです。
リスクマネジメントの本質とは
『リスクマネジメントの真髄ー現場・組織・社会の安全と安心』の編著者である井上欣三氏は、神戸大学大学院海事科学研究科の名誉教授。2002年、日本航海学会会長に就任し、現在は名誉会員となっています。また、2012年4月に西宮市に「Inoue 海事科学研究所」を開設し、海上交通工学、操船論、港湾計画に関する研究を行っています。ということで、本書は、船の操縦や海上交通など海事に関する事柄もいくつか取り上げられていますが、海事を知らなくても万人が共感し理解できるように丁寧な工夫が施されています。本書のあとがきにはリスクマネジメントの本質について、「リスクマネジメントの目先の技術ではなく、意識改革に基づく行動への姿勢」と記しています。「安全はみんなでつくるもの」です。誰か個人を批判したところで何も生み出しません。個人のリスクも、組織のリスクも、社会のリスクも、他人任せにせずに、「当事者意識をもつ」ことを忘れないようにしましょう。
<参考文献>
『リスクマネジメントの真髄ー現場・組織・社会の安全と安心』(井上欣三 編著、北田桃子・櫻井美奈 共著、成山堂書店)
https://www.seizando.co.jp/shop/index.php?main_page=product_info&products_id=1464
『リスクマネジメントの真髄ー現場・組織・社会の安全と安心』(井上欣三 編著、北田桃子・櫻井美奈 共著、成山堂書店)
https://www.seizando.co.jp/shop/index.php?main_page=product_info&products_id=1464
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