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小池新党が選挙の「台風の目」になる3つの理由
2017年秋、衆議院解散と総選挙(10月10日公示、22日投票)をめぐって注目が集まっています。その間の急な動きを時系列で確認しておきましょう。
・9月27日午前、小池百合子都知事が「日本をリセットするために希望の党を立ち上げる」と設立記者会見。
・9月28日午前、民進党前原誠司代表が、衆院選に向け、「希望の党」に事実上合流する方針を表明。午後、衆院本会議冒頭で大島理森議長が解散宣言。
これにより、野党第1党が希望の党に吸収されることは容易に予想され、与野党は蜂の巣をつついた騒ぎとなったわけです。小池新党が総選挙の「台風の目」であることは衆目の一致するところ。その理由について、政治学者で慶應義塾大学大学院教授の曽根泰教氏は、「不意打ちを食らわせようとした自民党が不意打ちを食らった」と解説しています。
要するに「ここで選挙をすれば勝てるだろう」というのが自民党の読みだったわけですが、結果的には小池新党に不意打ちを食らってしまった形となりました。安倍首相が2018年の自民党総裁選で3選を望んでいると考えられますが、その前後のどちらで総選挙を行うかという時期に関しては慎重でした。また、天皇陛下の退位時期を避け、2019年10月実施予定の消費税引上げ時期とも重ならないよう、周到に「勝てる時期」を模索してきた安倍首相にとっては、痛恨の一撃と呼べる出来事でしょう。
また、憲法改正の内容として触れられたのは、次の4点にわたります。第一に「憲法9条の改憲と、自衛隊が合憲であることの付記」、第二に「緊急事態条項」。第三に「参議院議員を各県1名を選出できる旨の記載」、第四に「教育の無償化」です。どれを取っても議論の必要な重要問題ばかり。とくに、教育の無償化は、日本の国の仕組みそのものを根本から変えることになります。
こうした問題を解散の理由に取り上げることは「後付け」であって、安倍首相の真意が分からない点に、曽根氏は非を鳴らしているのです。
一方、民進党について曽根氏は、過去に貯め込んできた100億円超の政党助成金が鍵となると指摘していますが、前原代表自らが「名を捨てて実を取る」と繰り返している裏には、そうした現実の駆け引きがあるのでしょう。選挙戦において、希望の党は資金不足、民進党は訴求力を失いがち。両者が合意できる点を模索するのが、今回の総選挙の見どころとなりそうです。
実際、9月28日に毎日新聞が行った世論調査では、政党支持率で1位の自民党29%に続いて希望の党が18%で2位となり、3位以下の民進党8%、公明党5%、共産党5%に早くも差をつけたと報じられました。
予断を許さない小池新党の機敏な動きが10月総選挙の「台風の目」となることは、やはり間違いなさそうです。
不意打ちをねらった解散が、不意打ちを食らった?
・9月25日、安倍晋三首相、衆議院解散表明。同日、小池百合子都知事が新党「希望の党」立ち上げと自らの代表就任を都庁で記者会見。ただし選挙出馬については否定。・9月27日午前、小池百合子都知事が「日本をリセットするために希望の党を立ち上げる」と設立記者会見。
・9月28日午前、民進党前原誠司代表が、衆院選に向け、「希望の党」に事実上合流する方針を表明。午後、衆院本会議冒頭で大島理森議長が解散宣言。
これにより、野党第1党が希望の党に吸収されることは容易に予想され、与野党は蜂の巣をつついた騒ぎとなったわけです。小池新党が総選挙の「台風の目」であることは衆目の一致するところ。その理由について、政治学者で慶應義塾大学大学院教授の曽根泰教氏は、「不意打ちを食らわせようとした自民党が不意打ちを食らった」と解説しています。
その1: 選挙で「勝てる時期」を狙いすぎた?
安倍首相は今回の解散を「国難解散」と名付けました。しかし、小池新党の動きが明らかになる以前より、野党からは「森友・加計解散」「こじつけ解散」との声がもっぱら。「なぜ今なのか」と考えると、小池新党の具体化には時間がかかるだろうという読みと、民進党の山尾志桜里氏が幹事長就任直前に不倫問題で離党した「民進党のつまずき」に乗じようとした作戦の二つが考えられます。要するに「ここで選挙をすれば勝てるだろう」というのが自民党の読みだったわけですが、結果的には小池新党に不意打ちを食らってしまった形となりました。安倍首相が2018年の自民党総裁選で3選を望んでいると考えられますが、その前後のどちらで総選挙を行うかという時期に関しては慎重でした。また、天皇陛下の退位時期を避け、2019年10月実施予定の消費税引上げ時期とも重ならないよう、周到に「勝てる時期」を模索してきた安倍首相にとっては、痛恨の一撃と呼べる出来事でしょう。
その2: 後付けの理由に根拠がなさすぎる?
解散が必要な理由(大義)を、安倍首相は記者会見でいくつもあげました。一つは「財政再建の先延ばし」について「国民に信を問う」という理由。二つ目に、ミサイルを連発する北朝鮮の脅威。三つ目に、社会保険関係から幼児教育無償化への消費税の使途変更。最後に任期中の悲願である「憲法改正」です。また、憲法改正の内容として触れられたのは、次の4点にわたります。第一に「憲法9条の改憲と、自衛隊が合憲であることの付記」、第二に「緊急事態条項」。第三に「参議院議員を各県1名を選出できる旨の記載」、第四に「教育の無償化」です。どれを取っても議論の必要な重要問題ばかり。とくに、教育の無償化は、日本の国の仕組みそのものを根本から変えることになります。
こうした問題を解散の理由に取り上げることは「後付け」であって、安倍首相の真意が分からない点に、曽根氏は非を鳴らしているのです。
その3: 希望の党の動きは予断を許さない
一方、「希望の党」については、従来から曽根氏が予測してきた小池氏による「2017年の日本新党」路線と合致したものと評価しています。一方、民進党について曽根氏は、過去に貯め込んできた100億円超の政党助成金が鍵となると指摘していますが、前原代表自らが「名を捨てて実を取る」と繰り返している裏には、そうした現実の駆け引きがあるのでしょう。選挙戦において、希望の党は資金不足、民進党は訴求力を失いがち。両者が合意できる点を模索するのが、今回の総選挙の見どころとなりそうです。
実際、9月28日に毎日新聞が行った世論調査では、政党支持率で1位の自民党29%に続いて希望の党が18%で2位となり、3位以下の民進党8%、公明党5%、共産党5%に早くも差をつけたと報じられました。
予断を許さない小池新党の機敏な動きが10月総選挙の「台風の目」となることは、やはり間違いなさそうです。
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