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DATE/ 2017.11.13

糖質制限ダイエットで日本人は痩せられるのか?

 美容と健康はいつの時代も人々の関心の的です。中でも近年もっとも注目されているものといえば糖質制限ではないでしょうか。ダイエットはもちろん糖尿病の治療、さらにはアルツハイマーの予防にも効果があるのではないかとメディアでもしばしばとりあげられています。

 一方で、糖質制限反対派からの警告、デメリットも唱えられているのをご存じですか?自己流で糖質制限をしても思ったような効果が得られなかったり、身体を悪くしたりというリスクも報告されています。実は医学界では、糖質制限推進派と反対派の間で論争が長年続いているのです。

糖質制限のはじまりは治療行為だった

 誰でも一度は耳にしたことのある「糖質制限」は、もともとは糖尿病治療のための食事法としてはじまりました。できるだけ糖質、炭水化物を摂らないようにすることで食後の血糖値の上昇と、インスリンの過剰分泌を抑えようという狙いがあります。糖尿病を患っていると、食後の血糖値上昇から動脈硬化につながる恐れがあるのですが、その血糖値上昇を回避できるということです。主食を摂らないかわりに肉や魚はたくさん食べられることも魅力のひとつになっているのです。

 このインスリンは、またの名を「肥満ホルモン」と言い、過剰に分泌するとメタボや肥満を引き起こしますが、そちらを抑制できるため体重が減っていくというメカニズムを持っています。この特性を利用して、「糖質制限」はダイエット法として多くの注目を集めるようになったのです。

糖質制限はアリなのか、ナシなのか

 2017年8月に、世界五大医学雑誌である『ランセット』のオンライン版に「炭水化物の摂取増加で死亡リスク上昇」という主旨の論文が掲載され、炭水化物をとるほど死亡リスクが上昇し、脂肪をとるほど死亡リスクが低下するという、従来の栄養学とは一線を画した内容が発表されました。

 推進派にとっては追い風の論文でしたが、こちらの論文に書かれているのは、死亡リスクが上昇するのは総エネルギーに対して炭水化物を約70%以上摂取しているグループであり、日本人の平均摂取量は約55%から60%ということで許容値内。反対派は一般的な食生活を過ごしている人にまで、糖質制限を促すものではないと反論を唱えています。

 また、日本の米の摂取量が最も高かったのは戦後すぐでした。そこから現在に至るまで、消費量は右肩下がりになっています。ひとえに炭水化物の食べ過ぎが糖尿病の原因となりうるのならば、糖尿病患者数は戦後に比べ増大したことを疑問視しなくてはなりません。むしろ糖尿病発症には、赤肉とその加工食品の摂取量が密接な関係にあるのではないかという研究論文もハーバード大学から過去に発表されています。

 さらには真逆の結果を示す研究データも出てきており、アメリカでは糖質制限ダイエットで死亡率が2割上昇したと報告されたようです。また、糖質制限をすることでインスリンが効きにくくなり逆に糖尿病になってしまうパラドックスも懸念されています。

糖質制限論争はまだまだ続く

 メディアに取り上げられるようになり、注目を集めている糖質制限ですが、現状ではまだ、推進派、反対派それぞれで新しいデータを論拠として説を戦わせている段階のようです。

 主食を減らすことで、ダイエットができるというのは魅力的な話ではありますが、単純に糖質だけ減らせば良いというものではなく、1日に必要なカロリーはきちんと摂取しなくてはなりません。それを怠り、糖質制限をやってみたら頭がふらふらした、低血糖になったという実例もあります。

 やはり健康を維持するには、適度な運動と、適切な量とバランスのとれた食事を摂取することが一番なのかもしれませんね。

<参考サイト>
・東洋経済オンライン:「糖質制限」論争に幕?一流医学誌に衝撃論文
http://toyokeizai.net/articles/amp/190605
・NPO法人日本ローカーボ食研究会『日本人の摂取総カロリー、蛋白、脂質、炭水化物比の経年変化』
http://low-carbo-diet.com/low_carbo_food/to_dr/contents-of-review/changes-in-pfc-ratio-in-japanese/

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今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授