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低所得化の進む40代…その貯金額と平均年収は?
2,000万円以上の貯蓄と年金で「悠々自適」の高齢者世帯が増えた一方、40代が世帯主で年間所得300万円未満と「かつかつ」の世帯が増えてきました。そんな事実が、厚生労働省の調査で明らかになり、世代を越えた衝撃が走っています。
まず、「年間所得」と「年収」が違うことに注意しておきましょう。サラリーマンの場合、年収から給与所得控除を差し引いたものが年間所得。およそ年収440万円が所得300万円のボーダーになります。300万円未満を低所得と呼ぶ厚労省分類にしたがうと、日本人の平均年収420万円を確保してもあまり喜んではいられないのです。
今の40代は1970年代生まれが中心。社会に出る矢先にバブルが崩壊し、就職で苦労した「氷河期」、またはロストジェネレーションと呼ばれる世代です。ずっと非正規雇用に甘んじて、キャリアを積む機会のないまま40代を迎えた人も少なくありません。収入が安定しないことが原因で結婚に踏み切れない「おひとり様」の単独世帯や、シングルマザー(ファザー)の一人親世帯の割合が多いことも、所得引き下げの要因となっています。
さらに35~59歳の“中年ニート”は123万人で、15~34歳の57万人の2.2倍に達していることも、総務省の2016年の労働力調査から分かりました。バブル崩壊→デフレの長期化→グローバリゼーションの拡大→リーマン・ショック→東日本大震災と、縮小していく日本経済の波をモロにかぶってしまった世代。氷河期世代を失われたままにしては、日本全体の「寝覚め」がよくありません。
その端的な結果は、年齢別の平均貯蓄額にも出ています。2017年5月16日に公表された2016年の家計調査の平均貯蓄額の結果を見ていきましょう。以下の数字は2人以上の世帯のみを対象としたものです。
1世帯あたり平均貯蓄額/平均値1,820万円/中央値1,064万円
この数字だけを見ると、「日本人はまだまだ豊かだよね」と思いかねませんが、平均値が中央値よりかなり高いということは、一部の人がケタ違いの貯蓄をしている格差のあらわれです。
また、貯蓄額に含まれるのは預貯金だけではありません。株式や債券、投資信託などの有価証券や資産性のある生命保険なども含まれるため、貯蓄額というより金融資産のイメージが近いでしょう。なお、ここには住宅ローンなどの負債は含まれていません。
では、次の数字はいかがでしょうか。
勤労者世帯1世帯あたり平均貯蓄額/平均値1,299万円/中央値 734万円
少し実感に近づいたでしょうか。貯蓄額を引き上げているのは、働かなくてもいい少数のお金持ちと高齢者なのですね。では、いよいよ年代順に比べてみましょう。今度は負債との差し引きで、純資産額も分かります。
<年代別/平均貯蓄額/負債額/純資産額>
40歳未満/574万円/▲1,098万円/▲524万円
40代/1,065万円/▲1,047万円/21万円
50代/1,802万円/▲591万円/1,211万円
60代/2,312万円/▲220万円/2,092万円
70歳以上/2,446万円/▲90万円/2,356万円
教育費や住宅ローンが終わる頃から老後資金をがっちり貯蓄することができた世代は、時代がよかったとも、それだけ老後の公的支援が不安だったともいえるでしょう。いずれにせよ今の現役世代が定年を迎える頃には、これほど退職金も期待できず、制度も変わっている可能性が高く、右肩上がりを楽観視する人は少ないと思います。
貯蓄に頼らなくても安心して老後を迎えられるような社会保障制度の変革とともに、働く人が「健康で文化的な最低限度の生活」を営めるよう、働き方改革にも期待したいところです。
氷河期世代の人生は、どこまで続くぬかるみか
40代といえば働き盛りで社会の中心を担うイメージがありますが、世帯主が40代で年間所得が300万円未満の低所得世帯の割合は、1994年から2014年までの20年間で11%から17%に増加して、1.5倍に増えています。2017年10月24日に厚生労働省が発表した「平成29年度版厚生労働白書」が明らかにした数字です。まず、「年間所得」と「年収」が違うことに注意しておきましょう。サラリーマンの場合、年収から給与所得控除を差し引いたものが年間所得。およそ年収440万円が所得300万円のボーダーになります。300万円未満を低所得と呼ぶ厚労省分類にしたがうと、日本人の平均年収420万円を確保してもあまり喜んではいられないのです。
今の40代は1970年代生まれが中心。社会に出る矢先にバブルが崩壊し、就職で苦労した「氷河期」、またはロストジェネレーションと呼ばれる世代です。ずっと非正規雇用に甘んじて、キャリアを積む機会のないまま40代を迎えた人も少なくありません。収入が安定しないことが原因で結婚に踏み切れない「おひとり様」の単独世帯や、シングルマザー(ファザー)の一人親世帯の割合が多いことも、所得引き下げの要因となっています。
さらに35~59歳の“中年ニート”は123万人で、15~34歳の57万人の2.2倍に達していることも、総務省の2016年の労働力調査から分かりました。バブル崩壊→デフレの長期化→グローバリゼーションの拡大→リーマン・ショック→東日本大震災と、縮小していく日本経済の波をモロにかぶってしまった世代。氷河期世代を失われたままにしては、日本全体の「寝覚め」がよくありません。
社会保障は「すねかじり」奨励策なのか?
一方で、世帯主が65歳以上の高齢者の世帯では、この20年間で低所得の割合が減り、中所得の割合が増加しています。白書が「現役世代に比べ、高齢者世代に手厚い構造になっている」と分析しているように、この世代の所得格差は年金によって補填されているのです。その端的な結果は、年齢別の平均貯蓄額にも出ています。2017年5月16日に公表された2016年の家計調査の平均貯蓄額の結果を見ていきましょう。以下の数字は2人以上の世帯のみを対象としたものです。
1世帯あたり平均貯蓄額/平均値1,820万円/中央値1,064万円
この数字だけを見ると、「日本人はまだまだ豊かだよね」と思いかねませんが、平均値が中央値よりかなり高いということは、一部の人がケタ違いの貯蓄をしている格差のあらわれです。
また、貯蓄額に含まれるのは預貯金だけではありません。株式や債券、投資信託などの有価証券や資産性のある生命保険なども含まれるため、貯蓄額というより金融資産のイメージが近いでしょう。なお、ここには住宅ローンなどの負債は含まれていません。
では、次の数字はいかがでしょうか。
勤労者世帯1世帯あたり平均貯蓄額/平均値1,299万円/中央値 734万円
少し実感に近づいたでしょうか。貯蓄額を引き上げているのは、働かなくてもいい少数のお金持ちと高齢者なのですね。では、いよいよ年代順に比べてみましょう。今度は負債との差し引きで、純資産額も分かります。
<年代別/平均貯蓄額/負債額/純資産額>
40歳未満/574万円/▲1,098万円/▲524万円
40代/1,065万円/▲1,047万円/21万円
50代/1,802万円/▲591万円/1,211万円
60代/2,312万円/▲220万円/2,092万円
70歳以上/2,446万円/▲90万円/2,356万円
教育費や住宅ローンが終わる頃から老後資金をがっちり貯蓄することができた世代は、時代がよかったとも、それだけ老後の公的支援が不安だったともいえるでしょう。いずれにせよ今の現役世代が定年を迎える頃には、これほど退職金も期待できず、制度も変わっている可能性が高く、右肩上がりを楽観視する人は少ないと思います。
貯蓄に頼らなくても安心して老後を迎えられるような社会保障制度の変革とともに、働く人が「健康で文化的な最低限度の生活」を営めるよう、働き方改革にも期待したいところです。
<参考サイト>
・厚生労働省:平成29年版厚生労働白書
http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/17/
・厚生労働省:国民生活と社会保障
http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/17/dl/1-02.pdf
・総務省統計局:家計調査報告
http://www.stat.go.jp/data/sav/sokuhou/nen/index.htm
・厚生労働省:平成29年版厚生労働白書
http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/17/
・厚生労働省:国民生活と社会保障
http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/17/dl/1-02.pdf
・総務省統計局:家計調査報告
http://www.stat.go.jp/data/sav/sokuhou/nen/index.htm
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