社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
日本はデータアナリストが決定的に不足している
少子高齢化に伴う労働力減少。シルバー人材とともにAIの活用が必須な時代。日本ではいずれの企業もこのようなことはたっぷりと刷り込まれているはずです。事実、ディープラーニングのめざましい進化で、ロボットや機械に非ルーティンの仕事を自動で任せられるようにもなってきました。
コンピューター産業の競争力自体も落ちており、若者はこうした会社に就職したがらない。大学でも情報工学の研究をする学生が減少しかねない。必要な人材の地盤そのものが、極めて心もとない現状なのです。
一例をあげれば、一橋大学院では、集合研修とe-ラーニングを組み合わせたブレンディッド・ラーニングを実施しているのですが、これには指導者のそばでネットのアクセストラブルを防いだり、ハウリングが起こらないようにするTA、ティーチングアシスタントの存在が非常に大事です。そのためこのTAを特任教授として1年ほどかけて募集したにもかかわらず、なんと応募はゼロだったとか。やむなくアウトソーシングに切り替えざるを得なかったそうです。
このような人材枯渇の背景には、いまだにITをマージナルな位置づけにしたままという日本企業の考え方の問題もあるようです。頻繁に大規模なシステム改革を行い、そのたびに大量の人材を募集するアメリカとは違って、日本ではシステムの大幅な改革も10年20年単位でしか行わない。しかも必要最小限の人材、コストで対処しようとする。こうした土壌をひっくり返す、日本企業全体のパラダイムシフトが必要だ、と一條氏は厳しく指摘します。
もう一社、一條氏が注目するのがリクルートです。ここでは、Googleの親会社であるAlphabetのAI部門トップ、アロン・ハレヴィ氏を2015年に迎え入れました。ハレヴィ氏がリクルートを選んだ理由がふるっています。「人工知能で人を幸せにできるのはGoogleよりリクルートだと考えたから」で、決め手となったのは、リクルート社が持つ「肌感覚のデータ」なのだとか。ハレヴィ氏は、アルゴリズムやネットで得るビッグデータよりも、SUUMOやゼクシィ、じゃらんといった媒体を通して入ってくる肌感覚のデータに魅力と将来性を感じたのだそうです。ここでも人を介したデータ活用の新展開が期待されます。
求められる企業のパラダイムシフト
しかし、10年後を見据えれば日本企業の体制はまだまだ不十分、と一橋大学大学院国際企業戦略研究科研科長で教授の一條和生氏は警鐘をならします。なぜならば、人工知能分野で欠かせないプログラマー、データアナリストが、日本では決定的に不足しているからなのです。コンピューター産業の競争力自体も落ちており、若者はこうした会社に就職したがらない。大学でも情報工学の研究をする学生が減少しかねない。必要な人材の地盤そのものが、極めて心もとない現状なのです。
一例をあげれば、一橋大学院では、集合研修とe-ラーニングを組み合わせたブレンディッド・ラーニングを実施しているのですが、これには指導者のそばでネットのアクセストラブルを防いだり、ハウリングが起こらないようにするTA、ティーチングアシスタントの存在が非常に大事です。そのためこのTAを特任教授として1年ほどかけて募集したにもかかわらず、なんと応募はゼロだったとか。やむなくアウトソーシングに切り替えざるを得なかったそうです。
このような人材枯渇の背景には、いまだにITをマージナルな位置づけにしたままという日本企業の考え方の問題もあるようです。頻繁に大規模なシステム改革を行い、そのたびに大量の人材を募集するアメリカとは違って、日本ではシステムの大幅な改革も10年20年単位でしか行わない。しかも必要最小限の人材、コストで対処しようとする。こうした土壌をひっくり返す、日本企業全体のパラダイムシフトが必要だ、と一條氏は厳しく指摘します。
動きだした企業-SOMPO、リクルートの例
このような現状の中、既に、先を見据えて先手を打っている会社もあります。たとえば、「安心・安全・健康のテーマパーク」をキーワードに掲げる損保ジャパンは、「保険の先へ、挑む」として、SOMPOデジタルラボを東京とシリコンバレーに設立しました。保険会社がデジタルテクノロジーを武器に新たな価値創造を図る、保険からの飛躍を目指す大胆なパラダイムシフトといえるでしょう。同社では、やはりデータアナリストが鍵となると考え、シリコンバレーでは多くのデータアナリストを現地採用しているそうです。もう一社、一條氏が注目するのがリクルートです。ここでは、Googleの親会社であるAlphabetのAI部門トップ、アロン・ハレヴィ氏を2015年に迎え入れました。ハレヴィ氏がリクルートを選んだ理由がふるっています。「人工知能で人を幸せにできるのはGoogleよりリクルートだと考えたから」で、決め手となったのは、リクルート社が持つ「肌感覚のデータ」なのだとか。ハレヴィ氏は、アルゴリズムやネットで得るビッグデータよりも、SUUMOやゼクシィ、じゃらんといった媒体を通して入ってくる肌感覚のデータに魅力と将来性を感じたのだそうです。ここでも人を介したデータ活用の新展開が期待されます。
企業はニューカラー育成をめざすべき
人を幸せにするためのITであり人工知能。その人工知能を操作するのは人であり、人とAIをつなぐのがプログラマー、データアナリストといった「ニューカラー」といわれる職種の人々です。一條氏はこうした職種・人材の確保は急務であり、そのためにはアウトソーシングやパートナーシップも必要だけれども、自社内で育成していくことも非常に重要だと言います。必要な人材は、不足を嘆いたり慌てたりするよりも、まず「自給自足」を目指して体制作りをすることが鍵になってきそうです。~最後までコラムを読んでくれた方へ~
“社会人学習”できていますか? 『テンミニッツTV』 なら手軽に始められます。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。
『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
なぜ『ホトトギス』に注目?江藤淳の「リアリズムの源流」
AI時代に甦る文芸評論~江藤淳と加藤典洋(2)江藤淳の「リアリズムの源流」
文芸評論を再考するに当たり、江藤淳氏の「リアリズムの源流」を振り返ってみる。一般的に日本で近代小説が始まった起源は坪内逍遥だといわれるが、江藤氏はそれに疑問を呈す。そして注目したのが、夏目漱石の「坊ちゃん」であ...
収録日:2025/04/10
追加日:2025/07/02
ヨーロッパとは?地図で読み解く地政学と国際政治の関係
地政学入門 ヨーロッパ編(1)地図で読むヨーロッパ
国際政治の戦略を考える上で今やかかせない地政学の視座。今回のシリーズではヨーロッパに焦点を当て、地政学の観点から情勢分析をする。第1話目では、まず地政学の要点をおさらいし、常に揺れ動いてきた「ヨーロッパ」という領...
収録日:2025/02/28
追加日:2025/05/05
アジア的成熟国家モデルづくりへ、日本が目指すべき道とは
日本の財政と金融問題の現状(4)日本が目指すべき成熟国家への道
機関投資家や経営者の生の声から日本の金融市場の問題点を見ていくと、リスクマネーを供給するための市場づくりや人材育成等の課題が浮き彫りになる。良質なスタートアップ企業を育てるにはどうすればいいのか。今こそアジア的...
収録日:2025/04/13
追加日:2025/07/01
「イエス・キリスト」という名前の本当の意味は?
キリスト教とは何か~愛と赦しといのち(1)「イエス」とは一体誰なのか
キリスト教とは何か。「文明の衝突」が世界中で現実化する中、この問題は日本人にとっても重要なものになっている。上智大学神学部教授・竹内修一氏は、「キリスト教とは何か」という問いは、同時に「イエスとは誰なのか」も意...
収録日:2016/12/26
追加日:2017/02/28
最悪のシナリオは?…しかしなぜ日本は報復すべきでないか
第2次トランプ政権の危険性と本質(8)反エリート主義と最悪のシナリオ
反エリート主義を基本線とするトランプ大統領は、金融政策の要であるFRBですらも敵対視し、圧力をかけている。このまま専門家軽視による経済政策が進めば、コロナ禍に匹敵する経済ショックが世界的に起こる可能性がある。最終話...
収録日:2025/04/07
追加日:2025/06/28