●AIのプログラマーやデータアナリストの人材が不足している
AIを活用してトップライングロース(売上増加)を目指すために、鍵となってくるのは、やはり人材です。その点で日本は、非常に厳しい状況にあります。
日本の今の若者は、就職ではリスクを回避する傾向があります。発展しない産業には向かいません。残念ながら、日本のコンピューター産業はほとんど競争力を失っており、優秀な若者はそうした会社には入らないでしょう。さらに、学生が情報工学を勉強することが少なくなってくれば、情報工学の研究自体も非常に弱くなっていきかねません。AIのプログラマーや、これと同じように重要なデータアナリストの人材が、決定的に不足しています。
私たちの大学院を例に挙げましょう。ブレンディッド・ラーニングをやるにあたって大事なのは、授業のやり方を変えることだけではなく、TA(ティーチングアシスタント)です。先生の横にいて、例えば、ネットのアクセストラブルを防いだり、ハウリングが起きないようにしたり、あるいは先生に生徒から質問があると伝えたり、そのような作業をするのがTAです。しかも、一橋大学大学院国際企業戦略研究科は、全て英語で授業を行いますので、こうした作業を英語で行える必要があります。
私たちはこうした人材を特任助教として1年ほどかけて募集したのですが、結局集まりませんでした。ゼロ人です。例えばアメリカでは、大学でコンピューター工学を勉強して、就職後、ビジネススクールで経営学を学んだことのある、センスの良い人材はたくさんいます。中国人とインド人ではありますが。しかし、日本にはこうした人材が枯渇しています。仕方がありませんので、採用募集をやめて、企業にアウトソーシングすることにせざるを得ませんでした。
●リクルートはデータ中心の世界に大変革を起こそうとしている
他方で、人材に関してうれしいニュースもあります。2015年、Googleの親会社であるAlphabetでAI部門のトップだったアロン・ハレヴィ氏が、リクルートに入ったのです。これはかなり衝撃的な出来事でした。ハレヴィ氏は非常に優秀な研究者で、Alphabetの中のAI部門の本当に中心を担ってきた人でした。
しかし、彼はなぜリクルートに来たのでしょうか。ハレヴィ氏は、AIで人を幸せにしたいと考えていたところ、それが可能なのはGoogleよりもリクルートだと判断し...