●2014年にはすでにデジタルディスラプションは始まっていた
デジタル時代に対する危機感は、世界中の経営者に共有されています。それを示すのが、「デジタル化の渦(Digital Vortex)」というIMD(International Institute for Management Development、国際経営開発研究所)のサーベイです。IMDは、徹底的に経営者教育に特化したビジネススクールです。MBAは90人しかいません。ハーバードビジネススクールは毎年800人の卒業生がいますから、それと比べると10分の1です。
ただしキャンパスでは、毎日平均500人のエグゼクティブが勉強しています。世界中のエグゼクティブがIMDを訪れます。IMDはスイスにありますが、ヨーロッパだけではなく、中東やアフリカ、アジア、中国、日本、あらゆるところから来ます。そして、とにかく勉強します。勉強といっても、やはり非常に実践的です。IMDのスローガンは、「REAL WORLD, REAL LEARNING」です。実践的な世界で、実践的な勉強をするということです。常に新しいことを取り入れて、それを学びます。授業や研究の内容も、常に最先端です。
そのIMDが2015年に発表したのが、「デジタル化の渦」という調査です。2015年発表ですから、データ収集は2014年に行われています。つまり、ファーストリテイリング代表取締役会長兼社長の柳井正氏が、有明に物流拠点をつくると言ったときと、ほぼ同時期です。その時からすでに、デジタルディスラプション(Digital Disruption、デジタル破壊)の動きは始まっていたのです。
●新しいデジタル・ビジネスモデルが急増している
この調査は、世界中の12種類の産業分野、941人のビジネスリーダーを対象にしています。現在、新しいデジタル・ビジネスモデルが急増している中で、変革への意識を聞いたものです。
例えば、新しいビジネスモデルの特徴には、price transparency(価格の透明性)があります。Everlaneが行っていたものですね。あるいは、consumption-based pricing(使用量に応じた値段設定)。ミシュランは、タイヤの走行距離によって値段を変える方針を打ち出しました。さらに、experience value(経験の価値)です。日本語では「モノからコトへ」と言いますが、「コト」は英語だとexperienceです。つまり、出来事です。出来事の中で、会社の提供する物やサービスがどのような価値を持つのかということです。他にも、いろん...