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年収は日本でも「住むところ」で決まる?
インターネットの発達によって、最近では場所を選ばずに仕事ができるようになってきました。またミーティングや会議もスカイプで行う企業も増えています。もはや、働くために場所を選ぶ必要はないのかもしれません。しかし、アメリカ在住の経済学者エンリコ・モレッティ氏は著書『年収は「住むところ」で決まる 雇用とイノベーションの都市経済学』において、住む場所によって年収に差が生まれると言っています。これはアメリカだけの事情といっていいでしょうか。詳しく見てみましょう。
ここからシアトルの大躍進が始まります。マイクロソフトが企業として拡大していくと、お金と経験を積んだ従業員たちが独立し、近くで新しいビジネスを立ち上げます。その数はいまや4000社にも達しているそうです。こうしてシアトルにはさまざまなハイテク関連技術を有した巨大企業群が出来上がりました。優れた人材と資金が集まり、町は発展していきます。発展が発展を呼び、シアトルはどんどん豊かになります。
また、同書では大卒者の割合が多い都市ほど、高卒者の給料が高いことが明らかにされています。つまり、経済的に豊かに生きるポイントの一つは、自分の意志とは無関係に「隣人の教育レベルに依存している」といえるとのことです。
移住するにはまず経済力が必要です。この点について著者は「移住クーポン」を提案します。これは失業保険の一部を外の町へ出る人へ給付するという考え方です。1000人の失業者のうち、500人が移住すれば、残りの500人の失業者が職に就ける確率は2倍になるといいます。たしかに、なかなかシンプルな論ですが説得力はありますよね。
しかし、マイクロソフトがシアトルに移転した理由は、単に自分たちの出身地だったからというものでした。ここから正の循環が生まれています。こう考えると、日本でもイノベーターが思い切って地方で新しい技術開発をスタートさせることで、町を再生させていくことは可能なのではないかという気がしてきます。こういった試みもまた時折耳にします。どんどん場所を選ばずに働くことができるような技術革新は進んでいます。今後の日本の姿は大きくかわるかもしれません。
発展は発展を呼ぶ
アメリカのシアトルという町は、もともとは航空機メーカーのボーイングを中心とした製造業の町でした。今から30年前にこのボーイングの業績悪化に伴い、町は衰退します。そのとき、まだ社員十数名だったマイクロソフトはシアトルに移転しました。理由は創業者のビル・ゲイツとポール・アレンの出身地だったから、ということだけです。ここからシアトルの大躍進が始まります。マイクロソフトが企業として拡大していくと、お金と経験を積んだ従業員たちが独立し、近くで新しいビジネスを立ち上げます。その数はいまや4000社にも達しているそうです。こうしてシアトルにはさまざまなハイテク関連技術を有した巨大企業群が出来上がりました。優れた人材と資金が集まり、町は発展していきます。発展が発展を呼び、シアトルはどんどん豊かになります。
また、同書では大卒者の割合が多い都市ほど、高卒者の給料が高いことが明らかにされています。つまり、経済的に豊かに生きるポイントの一つは、自分の意志とは無関係に「隣人の教育レベルに依存している」といえるとのことです。
積極的に移動することが豊かさの鍵
アメリカにおいて失業率の上がった地域を調べると、少なくとも高学歴であればあるほど別の仕事を探して移住する傾向があり、逆に低学歴であればあるほど失業してもその地域で仕事を探し続け、何年も失業状態を続けてしまうそうです。移住するにはまず経済力が必要です。この点について著者は「移住クーポン」を提案します。これは失業保険の一部を外の町へ出る人へ給付するという考え方です。1000人の失業者のうち、500人が移住すれば、残りの500人の失業者が職に就ける確率は2倍になるといいます。たしかに、なかなかシンプルな論ですが説得力はありますよね。
日本でどう生かせるか
ここまで書籍の内容を見てきました。人がどのようにして都市に集まるか、また失業率の上がった地域の人の移動をどう促すか。なかなか面白い視点からの考察ですよね。さて、翻って日本で考えてみると、どうでしょうか。東京一極集中が問題になっています。仕事があるところに移住できる「クーポン」を与えられても、現状では意味がないでしょう。東京以外で仕事を見つけられる確率は、あまり高くないことが想像できます。しかし、マイクロソフトがシアトルに移転した理由は、単に自分たちの出身地だったからというものでした。ここから正の循環が生まれています。こう考えると、日本でもイノベーターが思い切って地方で新しい技術開発をスタートさせることで、町を再生させていくことは可能なのではないかという気がしてきます。こういった試みもまた時折耳にします。どんどん場所を選ばずに働くことができるような技術革新は進んでいます。今後の日本の姿は大きくかわるかもしれません。
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