「働き方改革」の課題と展望
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
働き方改革の本質は待遇改善よりも生産性の向上
「働き方改革」の課題と展望(2)非正規の待遇改善の意義
柳川範之(東京大学大学院経済学研究科・経済学部 教授)
働き方改革で現在議論されているのは、同一労働同一賃金や長時間労働対策だ。東京大学大学院経済学研究科・経済学部の柳川範之教授は、非正規雇用の待遇改善や長時間労働の是正は、公平性や負担軽減の観点から実施されるべきだが、同時にそこから生じるマイナス面にも注目する。同氏が指摘するポイントとは何か。(全6話中第2話)
時間:14分46秒
収録日:2017年2月21日
追加日:2017年3月17日
≪全文≫

●注目される、非正規雇用の待遇改善


 まずは、短期的な働き方改革の議論についてお話しします。これに関しては、政府の中でもいろいろ議論されているように、同一労働同一賃金の検討とか、長時間労働の是正、それから成果に基づく働き方、あるいは最低賃金の引き上げといった議論があります。しかし今日は、このあたりに関わる細かい政策について、一つ一つ説明するのではなく、こういうような議論がされているそもそもの考え方や背景を中心にお話ができればと思います。

 働き方に関わる短期的な対応策の中で、例えば同一労働同一賃金の問題があります。非正規(雇用)の社員の給与と、正規(雇用)の社員の給与に大きな格差があります。彼らは、同じ仕事をしているにもかかわらず、かなり大きな差があります。場合によっては(非正規の給与は)正規の6割ぐらいにしかならないこともあり、これが大きな所得格差を生んでいるのではないかといわれます。これでは公平性に欠けるので、ここをもう少し是正する。つまり、実際に同じ仕事をしていくのであれば、同じ賃金、同じ手当が支払われるようにしようということです。

 これは公平性の観点からも重要ですし、あるいは多くの非正規の所得底上げという意味でも重要です。非正規(雇用の人)の所得の底上げが実現すれば、ある種の成長戦略にもつながるでしょう。そうした人たちの所得が増えれば、今よりも安心して消費をすることができるようになります。それが全体の需要を増やし、経済を良い方向に持っていくことになるだろうということです。

 同じようなことは、実は最低賃金の引き上げについても議論されています。その最低賃金を引き上げれば、最低賃金で働いている人たちの給与は少しでも上がることになります。先ほどと同様、ここには所得格差の縮小という面もありますが、賃金上昇を通じて、彼らの消費を増やすことで、成長戦略にプラスとなることも期待されています。


●何を「同一労働」とするのかが難しい


 非正規(雇用の人)の待遇改善といった場合には、どういう形で待遇を改善していくのかが重要です。何をもって同じ仕事をしていると見なすのか。これがなかなか難しい問題になってきます。同一労働同一賃金を目指す考え方の利点は、多くの人が共有するところだと思います。しかし、それをどういう形でルール化し、どういう形で実効性のあるものにす...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「経営ビジネス」でまず見るべき講義シリーズ
バブル世代の現実とこれからの生き方
バブル世代は「バブル崩壊世代」、苦労の先に見えるものがある
江上剛
生き続ける松下幸之助の経営観(1)今も生きている幸之助
松下幸之助の考え方には今と昔を貫くものがある
江口克彦
人生100年時代の「ライフシフト概論」(1)人生100年時代のインパクト
80歳まで現役でいるために大切なこと…人生100年時代の発想法
徳岡晃一郎
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
認知バイアス~その仕組みと可能性(1)認知バイアス入門
誰もが陥る「認知バイアス」…その例とメカニズム
鈴木宏昭
オリエント 東西の戦略史と現代経営論に学ぶ(1)ビジネスのヒントは歴史にあり
『失敗の本質』、中国古典…ビジネスのヒントを歴史に学ぶ
三谷宏治

人気の講義ランキングTOP10
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(3)秀吉出世譚の背景
武闘派・秀吉として出世…織田家中で一番の武略者の道
黒田基樹
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
編集部ラジオ2025(32)哲学者たちが考えた平和追求
反EU、反国連の時代に再考!「哲学者たちの平和追求」
テンミニッツ・アカデミー編集部
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
平和の追求~哲学者たちの構想(6)EU批判とアメリカの現状
理想を具現化した国連やEUへの批判がなぜ高まっているのか
川出良枝
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ