●誰が社員のスキルアップを実行するか
働き方改革で大きな課題となってくるのは、(中長期的な課題としてのスキルアップを)どうやって進めていくかです。言い換えれば、誰がそれをやっていくかということです。社内でそれを担当する人が進めていくのが、今までの日本企業の仕組みだったと思います。
しかし、必要とされるスキルが大きく変わっていくとなると、その新しい技能を教えられる人たちが、そもそも社内にいないという事態が起こり得ます。場合によると、社内だけではなく、その産業とは全く異なる産業の能力を身に付けなければいけないようなことが起こるかもしれません。そうすると、教えられるような先輩が周りにいないことにもなります。
もう一つ問題があり、それは、国際競争力が激しい中で企業はなかなかそういうところにお金をつぎ込めない事情があることです。そうなってくると、やはりある程度は公的な支援も含めて、総合的な対策が必要になってくるだろうと思います。そういう意味で、公的にもそうした部分への支援に、ある程度のお金を使う必要が出てくるでしょう。
また、取り組みを社内でやらないとすると、どこでそういうスキルを身に付けるのか、どこで学べるのかという課題も生じます。そのため、より高度な職業能力の開発や訓練ができるような教育機関を育てて、充実させていく必要性が高まってくると思います。
●スキルアップのための教育機関を、社会全体で作る
教育機関といっても、必ずしも現在ある教育機関、例えば大学などである必要もないでしょう。また、教育機関というと、座学のように教室に座って授業を聞くということをすぐイメージしがちです。しかし、これから求められるような実践的な能力開発をしなければいけないとすれば、オン・ザ・ジョブ・トレーニングのように、実際に自分が現場でやってみるということを通して身に付けていく能力も、かなり必要になると思います。
そこで、研修的なものも含めた教育機関を、社内につくっていかなければなりません。しかし、今の日本には、こうしたことに適した教育機関がなかなかありません。いわゆる技能訓練的な研修の場はありますが、そこは単純作業を身に付ける場所であることも多いのです。
それよりも、社会や産業が大きく変わっていく中で、例えば40歳ぐらいの人が、これからの新しい20~30年を働いて...