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30代が約4割!「ネットカフェ難民」の実態
2007年、テレビ報道を機に表面化した「ネットカフェ難民(住居喪失不安定就労者)」。住まいを持たず転々とする姿に、社会は衝撃を受けました。
そのような中、東京都のある調査で、ネットカフェ難民といわれる人の約4割が30代であることが判明しました。
働き盛りであるはずの30代がなぜ、ネットカフェに寝泊まりする生活を送っているのでしょうか。
その報告書によると、東京都の平日1日のオールナイト利用者は約15,300人と推計されるとし、その4分の1(約4,000人)が住居を持たない「住居喪失者」、さらにその4分の3にあたる約3,000人が、アルバイトなど不安定な職に就いていることがわかりました。
1991年のバブル崩壊以後10年以上、多くの企業がリストラを行い、新卒の採用枠を狭めました。いわゆる就職氷河期です。特に2000年度は金融恐慌とITバブル崩壊が重なり、この世代(現在の30代後半~40代後半)は厳しい就職活動を余儀なくされました。
その後、雇用状況はいったん持ち直すものの、2009年のリーマンショックと2011年の東日本大震災で日本経済は激しく落ち込み、ふたたび就職氷河期へ突入します。長引く不況は終身雇用制度の崩壊と、低賃金で無理な働き方をしいるブラック企業の増加を招きました。今の20代後半~30代は、こうした激震のあおりを真っ向から受けたのです。
満足に働ける場所がなく、家を失った彼らが向かった先が、24時間営業の店舗でした。
もちろん寝泊まりを続けるためには多少の資金が必要です。東京都によれば、「住居喪失者」の86.5%は仕事をしていて、1ヶ月の収入の平均は11.4 万円だそうです。
であれば住む家を探したほうがよいように感じますが、「住居喪失者」の多くが「(住居確保の)具体的な活動・努力をしていない」(47.4%)または「住居を確保したいと思わない」(24.5%)と回答しています。
なぜ彼らは、住居を得ようと考えないのでしょうか。
住居確保の問題として、「アパート等の入居に必要な初期費用(敷金等)をなかなか貯蓄できない」(62.8%)、「アパート等に入居しても家賃を払い続けるための安定収入がない(不安がある)」(33.3%)が挙げられていました。収入はあっても貯蓄に回す余裕はほとんどなく、いつ解雇されるかわからないという状況では住居があっても不安だということでしょう。
病気やケガで働けなくなったことを考えた時、行政のセーフティネットが受けられなくなるのは厳しいものです。生活保護も、住所がないために手続き自体が困難になる可能性があります。人生をリスタートしにくくなってしまうのです。
とはいえ、貯蓄もできない収入では先のことを考える余裕などないのでしょう。無理して家を借りるより、いっそネットカフェを根城にしたほうが人間的な生活ができる??調査結果から、そんな彼らのあきらめにも似た心情がうかがえます。
しかし、いわば経済格差への対策をおろそかにし、再出発の機会や意欲を喪失させたため、日本企業は非正規労働者であふれることになってしまいました。それが結果として企業の体力の低下につながったということを、しっかりと認識すべきでしょう。
今回の調査を機に、雇用問題が一刻も早く解決されることを願うばかりです。
そのような中、東京都のある調査で、ネットカフェ難民といわれる人の約4割が30代であることが判明しました。
働き盛りであるはずの30代がなぜ、ネットカフェに寝泊まりする生活を送っているのでしょうか。
利用者の4分の1が住居なし、その4分の3が不安定就労者
東京都は都内でオールナイト営業をしている店舗502店、利用者946人に対して調査を実施しました。(調査期間:2016年11月~2017年1月)その報告書によると、東京都の平日1日のオールナイト利用者は約15,300人と推計されるとし、その4分の1(約4,000人)が住居を持たない「住居喪失者」、さらにその4分の3にあたる約3,000人が、アルバイトなど不安定な職に就いていることがわかりました。
長引く不況と災害??貧困に陥る30代
こうしたネットカフェ難民はなぜ生まれるのでしょうか。それは「若者の貧困」が要因だと指摘されています。1991年のバブル崩壊以後10年以上、多くの企業がリストラを行い、新卒の採用枠を狭めました。いわゆる就職氷河期です。特に2000年度は金融恐慌とITバブル崩壊が重なり、この世代(現在の30代後半~40代後半)は厳しい就職活動を余儀なくされました。
その後、雇用状況はいったん持ち直すものの、2009年のリーマンショックと2011年の東日本大震災で日本経済は激しく落ち込み、ふたたび就職氷河期へ突入します。長引く不況は終身雇用制度の崩壊と、低賃金で無理な働き方をしいるブラック企業の増加を招きました。今の20代後半~30代は、こうした激震のあおりを真っ向から受けたのです。
満足に働ける場所がなく、家を失った彼らが向かった先が、24時間営業の店舗でした。
ネットカフェに行くしかない現実
一時期はファーストフード店で時間を過ごす人が目立ちましたが、次第にネットカフェやカプセルホテルを拠点とする人が増えだします。個室でドリンク飲み放題、店舗によってはシャワーなどの設備が整っているからです。もちろん寝泊まりを続けるためには多少の資金が必要です。東京都によれば、「住居喪失者」の86.5%は仕事をしていて、1ヶ月の収入の平均は11.4 万円だそうです。
であれば住む家を探したほうがよいように感じますが、「住居喪失者」の多くが「(住居確保の)具体的な活動・努力をしていない」(47.4%)または「住居を確保したいと思わない」(24.5%)と回答しています。
なぜ彼らは、住居を得ようと考えないのでしょうか。
住居確保の問題として、「アパート等の入居に必要な初期費用(敷金等)をなかなか貯蓄できない」(62.8%)、「アパート等に入居しても家賃を払い続けるための安定収入がない(不安がある)」(33.3%)が挙げられていました。収入はあっても貯蓄に回す余裕はほとんどなく、いつ解雇されるかわからないという状況では住居があっても不安だということでしょう。
「住所不定」が人生の再出発を阻害する
住所不定(住民票なし)の状態はあらゆるシーンでデメリットがあります。「運転免許証の更新ができない」「銀行口座の開設ができない」「行政サービスが受けられない」などです。病気やケガで働けなくなったことを考えた時、行政のセーフティネットが受けられなくなるのは厳しいものです。生活保護も、住所がないために手続き自体が困難になる可能性があります。人生をリスタートしにくくなってしまうのです。
とはいえ、貯蓄もできない収入では先のことを考える余裕などないのでしょう。無理して家を借りるより、いっそネットカフェを根城にしたほうが人間的な生活ができる??調査結果から、そんな彼らのあきらめにも似た心情がうかがえます。
大事なのは雇用問題が一刻も早く解決されること
ネットカフェ難民になった人を「自己責任だ」と断じる声もあります。しかし、いわば経済格差への対策をおろそかにし、再出発の機会や意欲を喪失させたため、日本企業は非正規労働者であふれることになってしまいました。それが結果として企業の体力の低下につながったということを、しっかりと認識すべきでしょう。
今回の調査を機に、雇用問題が一刻も早く解決されることを願うばかりです。
<参考サイト>
・「住居喪失不安定就労者等の実態に関する調査」の結果
http://www.metro.tokyo.jp/tosei/hodohappyo/press/2018/01/26/14.html
・「住居喪失不安定就労者等の実態に関する調査」の結果
http://www.metro.tokyo.jp/tosei/hodohappyo/press/2018/01/26/14.html
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