社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
意外に高い?60代の平均年収
60代は、昭和の時代ならとっくに定年退職して年金暮らし。孫のお守りをしながら、それまでできなかった「60の手習い」を始めるような「悠々自適」のゆとりもありました。
しかし、「人生100年時代」と言われる現在では定年制度自体がない職場も増え、60代のマネー事情は人によってずいぶん差のあるものとなっているようです。
厚生労働省のデータで60代前半の男性で見ると、平均月収は29.4万円。単純に12倍すると約353万円となり、30代前半の男性の平均月収28.9万円でと比較するかぎり、60代前半の方が高くなっています。おそらくは再雇用制度などで一定の所得ある多数派層と、会社役員など高額所得の少数派層というプロフィールのバラツキが背景にあることが前提になりますが、それなりの所得が確保できていることが理解できるかと思います。
ですので、60歳定年は、ここ20~30年ほどの常識に過ぎません。しかし、その後も平均寿命の伸びや労働人口の減少など、実情にならうかたちで法律が改正され、2012年には「原則希望者全員の65歳までの雇用を義務化」が打ち出され、現在では98%の企業で希望者が働き続けています。
厚生労働省「平成29年就労条件総合調査」(平成29年12月27日発表)を見ると、一律定年制を定める企業のうち、「60歳」が79.3%、「65歳」が16.4%となっています。66歳以上を足すと17.8%の企業が60代前半を企業の戦力として認めているわけです。
また、再雇用や勤務延長制度については約93%の企業が実施しており、最高雇用年齢は65歳が80%、66歳以上も16.9%となっています。会社の規模を見ると、従業員30~99人という中小企業では定年を65歳、再雇用や勤務延長を66歳以上としている割合が高くなります。1,000人以上の大企業では「60歳定年、65歳まで再雇用」が90%と主流の働き方になっています。
年代別にみると、男性の月収が最高値を示すのが50代前半の42.4万円で、50代後半では41.2万円と微妙に減少し、60代前半では29.4万円と7割強まで減ってしまいます。女性の場合もやはり一番稼げるのは50代前半で27万円。50代後半が26.3万円、60代で22.4万円なので8割強と、ガクッと下がった感じはしません。
業界別に見ると、50代から60代への落差が大きいのは情報通信業、金融・保険業、製造業など。情報通信業では20代前半を100とした時の50代後半の年収は229.3なのに比べ、60代前半になると142.9までダウンします。逆に年齢格差が小さいのは教育・学習支援業、宿泊・飲食サービス業、運輸・郵便業など。もっとも格差の小さい教育・学習支援業では、50代後半と60代前半の年収差は20代前半を100とした時の18.3しかありません。
再雇用後の賃金は、中小企業より大企業のほうが減額が大きい傾向もみられます。60歳定年を基準に人件費を考えてきた企業としては、65歳までの全社員に同様の給料を支払うと、負担が大きくなりすぎてしまうから。しかし、働く側の理屈からいうと「昨日までと同じ仕事をしているのに、なぜ給料が半分になるのか」と割りきれない人も多いのが現実です。
さらに、再雇用後の企業でさらに厚生年金に入り続けると、「在職老齢年金」として、月収+年金月額が基準額(65歳未満は28万円、65歳以上は46万円)を超えると、超過額の半分が減額されるという仕組みになっています。
60歳以降も厚生年金に加入して働く利点は、
・リタイア後に受け取る年金額が増える
・亡くなったときに遺族が受け取る遺族厚生年金が増える
・加入期間中に障害を負った場合、障害厚生年金を受け取れる
・払った年金保険料は社会保険料控除の対象になる
・配偶者が60歳未満で第3号(専業主婦)ならその保険料負担は生じない(働く本人が65歳になるまで)の5つ。
65歳支給の年金を60歳から64歳までの間に繰り上げてもらう方法もありますが、1か月ごとに0.5%ずつ減額し、60歳から受給する場合は、本来もらえる年金の70%しか確保できなくなります。
「悠々自適」には、まだ距離がありそうなこれからの60代には、制度へのさまざまな目配りとコントロールが必要なようです。
しかし、「人生100年時代」と言われる現在では定年制度自体がない職場も増え、60代のマネー事情は人によってずいぶん差のあるものとなっているようです。
厚生労働省のデータで60代前半の男性で見ると、平均月収は29.4万円。単純に12倍すると約353万円となり、30代前半の男性の平均月収28.9万円でと比較するかぎり、60代前半の方が高くなっています。おそらくは再雇用制度などで一定の所得ある多数派層と、会社役員など高額所得の少数派層というプロフィールのバラツキが背景にあることが前提になりますが、それなりの所得が確保できていることが理解できるかと思います。
定年制の推移をざっとおさらい
まず、「60歳定年」がいつ頃から始まったのかというと、1986年に「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」が改正されて60歳定年が努力義務となり、1994年の改正で60歳未満定年制が禁止(1998年施行)されました。ですので、60歳定年は、ここ20~30年ほどの常識に過ぎません。しかし、その後も平均寿命の伸びや労働人口の減少など、実情にならうかたちで法律が改正され、2012年には「原則希望者全員の65歳までの雇用を義務化」が打ち出され、現在では98%の企業で希望者が働き続けています。
厚生労働省「平成29年就労条件総合調査」(平成29年12月27日発表)を見ると、一律定年制を定める企業のうち、「60歳」が79.3%、「65歳」が16.4%となっています。66歳以上を足すと17.8%の企業が60代前半を企業の戦力として認めているわけです。
また、再雇用や勤務延長制度については約93%の企業が実施しており、最高雇用年齢は65歳が80%、66歳以上も16.9%となっています。会社の規模を見ると、従業員30~99人という中小企業では定年を65歳、再雇用や勤務延長を66歳以上としている割合が高くなります。1,000人以上の大企業では「60歳定年、65歳まで再雇用」が90%と主流の働き方になっています。
60歳になると給料は半分になる?
60代前半では「働くのが当たり前」となっている現在ですが、厚生労働省のデータによると、全年齢の雇用者の月収平均は、男性33.5万円、女性24.6万円となっています。年代別にみると、男性の月収が最高値を示すのが50代前半の42.4万円で、50代後半では41.2万円と微妙に減少し、60代前半では29.4万円と7割強まで減ってしまいます。女性の場合もやはり一番稼げるのは50代前半で27万円。50代後半が26.3万円、60代で22.4万円なので8割強と、ガクッと下がった感じはしません。
業界別に見ると、50代から60代への落差が大きいのは情報通信業、金融・保険業、製造業など。情報通信業では20代前半を100とした時の50代後半の年収は229.3なのに比べ、60代前半になると142.9までダウンします。逆に年齢格差が小さいのは教育・学習支援業、宿泊・飲食サービス業、運輸・郵便業など。もっとも格差の小さい教育・学習支援業では、50代後半と60代前半の年収差は20代前半を100とした時の18.3しかありません。
再雇用後の賃金は、中小企業より大企業のほうが減額が大きい傾向もみられます。60歳定年を基準に人件費を考えてきた企業としては、65歳までの全社員に同様の給料を支払うと、負担が大きくなりすぎてしまうから。しかし、働く側の理屈からいうと「昨日までと同じ仕事をしているのに、なぜ給料が半分になるのか」と割りきれない人も多いのが現実です。
働き続けていると「年金」もカットされる?
一方、年金については、国民年金の支給開始が65歳からになっているのと同様、厚生年金のほうも男性は昭和36年4月2日生まれ以降、女性は昭和41年4月2日生まれ以降では、65歳からの支給となります。移行期間の特別措置として、報酬比例部分のみを支給する制度はありますが、2018年に60歳を迎える昭和33年生まれでは、男性は63歳、女性は61歳まで待たないと、特別支給もありません。さらに、再雇用後の企業でさらに厚生年金に入り続けると、「在職老齢年金」として、月収+年金月額が基準額(65歳未満は28万円、65歳以上は46万円)を超えると、超過額の半分が減額されるという仕組みになっています。
60歳以降も厚生年金に加入して働く利点は、
・リタイア後に受け取る年金額が増える
・亡くなったときに遺族が受け取る遺族厚生年金が増える
・加入期間中に障害を負った場合、障害厚生年金を受け取れる
・払った年金保険料は社会保険料控除の対象になる
・配偶者が60歳未満で第3号(専業主婦)ならその保険料負担は生じない(働く本人が65歳になるまで)の5つ。
65歳支給の年金を60歳から64歳までの間に繰り上げてもらう方法もありますが、1か月ごとに0.5%ずつ減額し、60歳から受給する場合は、本来もらえる年金の70%しか確保できなくなります。
「悠々自適」には、まだ距離がありそうなこれからの60代には、制度へのさまざまな目配りとコントロールが必要なようです。
<参考サイト>
・厚生労働省「平成29年就労条件総合調査 結果の概況」
http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/17/index.html
・厚生労働省「平成29年賃金構造基本統計調査 結果の概況」
http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2017/index.html
・厚生労働省「平成29年就労条件総合調査 結果の概況」
http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/17/index.html
・厚生労働省「平成29年賃金構造基本統計調査 結果の概況」
http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2017/index.html
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
自分を豊かにする“教養の自己投資”始めてみませんか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。
『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
歴史作家・中村彰彦先生に学ぶ歴史の探り方、活かし方
編集部ラジオ2025(29)歴史作家の舞台裏を学べる
この人生を生きていくうえで、「歴史」をひもとくと貴重なヒントにいくつも出会えます。では、実際にはどのように歴史をひもといていけばいいのか。
今回の編集部ラジオでは、歴史作家の中村彰彦先生がご自身の方法論...
今回の編集部ラジオでは、歴史作家の中村彰彦先生がご自身の方法論...
収録日:2025/10/17
追加日:2025/11/27
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
「歴史を探索していく」とは、どういうことなのだろうか。また、「歴史を活かしていく」とはどういうことなのだろうか。歴史作家の中村彰彦氏に、歴史を探り、活かしていく方法論を、具体的に教えてもらう本講義。第一話は、歴...
収録日:2025/04/26
追加日:2025/11/14
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール
内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた主な要因として、二つのオウンゴールを挙げる島田氏。その一つとして台湾のモリス・チャン氏によるTSMC立ち上げの話を取り上げるが、日本はその動きに興味を示さず、かつて世界を席巻して...
収録日:2025/09/02
追加日:2025/11/25
雄大で雄渾な生命の全体像…その中で点滅する個々の生命
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(5)『秘蔵宝鑰』が示す非二元論的世界
全ては光だと説く空海が、なぜその著書『秘蔵宝鑰』で、「死に死に死に死んで死の終りに冥(くら)し」と書いたのか。『秘蔵宝鑰』については、以前のテンミニッツ・アカデミー講義でも解説したが、そこから半年かけてこの書を...
収録日:2025/03/03
追加日:2025/11/26
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
「熟睡とは健康な睡眠」だと西野氏はいうが、健康な睡眠のためには具体的にどうすればいいのか。睡眠とは壊れやすいもので、睡眠に影響を与える環境要因、内面的要因、身体的要因など、さまざまな要因を取り除いていくことが大...
収録日:2025/03/05
追加日:2025/11/23


