社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
「こころの病」が最も多い年齢層は?
かつては「こころの風邪」と表されたうつ病。近年は漫画や映画といった身近なメディアにもとりあげられて、「風邪」と表すのはいささか無理があることも周知されてきました。WHOの報告によれば2015年の調査では、世界でうつ病で苦しむ人々の数はなんと3億2200万人。全人口の4%が苦しんでいると明らかになっています
幸福な人生に必要なのはやっぱり心身の健康ですが、ただでさえ人手不足な御時世、職場ではハードワークを要求されることもしばしばですよね。うつ病をはじめとした「こころの病」にかかる人々の年齢層に変化が見られています。
具体的な数値を見てみますと、2014年度の18.4%から2017年は27.9%と大幅な上昇が現れていました。前回調査から順位の入れ替えこそあれ、大きな変動のなかった30代の32.6%、40代の35.8%の数値と比較して、各世代の比率が平準化してきたと言えるでしょう。
責任は重いのに権限はない。なんとも歯がゆい立場であるのは想像に難くありません。また、就活学生を悩ませる「即戦力になりうる人材」を企業側が求めていることも、今回の20代のこころの病率の上昇を裏付ける傾向のひとつかもしれません。人手不足で売り手市場と言われる昨今、企業の説明会などでは就活中の学生にどれくらいのハードワークがあるかが伏せられていて、実際に入ってみてから思い知らされるというケースも少なくないのではと懸念する声も出ているようです。
今回の調査結果で注目された20代後半から30代半ばの年代が陥りやすい、「クォーターライフ・クライシス」と呼ばれる現象があります。人生を100年間と仮定して、その4分の1に差し掛かるころにはじまるとされる、憂鬱とストレスが急上昇する時期だそうです。理想を抱いて社会に出て数年、思い描いていた未来と現実とのギャップに打ちのめされるという誰しも一度は通る道ですが、社会状況が厳しくなれば抜け切る前に病みついてしまうこともあるのかもしれません。
うつ病は自殺と深い関係性があることもよく知られている通りです。WHOは、うつ病治療は年々進歩しているにもかかわらず、適切な治療を受けている人々が少ないとも指摘しています。個人の幸福、企業、ひいては国家の繁栄のためにも、そこに関わる全ての人々へのサポートが求められています。
幸福な人生に必要なのはやっぱり心身の健康ですが、ただでさえ人手不足な御時世、職場ではハードワークを要求されることもしばしばですよね。うつ病をはじめとした「こころの病」にかかる人々の年齢層に変化が見られています。
20代でうつになる社員が急増中
公益財団法人日本生産性本部は2017年12月、8回目となる『メンタルヘルスの取り組み』に関する企業アンケート調査結果を発表しました。隔年ごとに全国の上場企業2千社以上を対象に行われる調査ですが、今年度は「うつ病など心の病に罹患する社員がもっとも多いのは20代である」と回答した企業の急増が話題になっています。具体的な数値を見てみますと、2014年度の18.4%から2017年は27.9%と大幅な上昇が現れていました。前回調査から順位の入れ替えこそあれ、大きな変動のなかった30代の32.6%、40代の35.8%の数値と比較して、各世代の比率が平準化してきたと言えるでしょう。
「責任」は重いが「権限」はないアンバランス
このような罹患率の平均化について、日本生産性本部では「30代は仕事ができるようになり働き盛りといわれる年代、それだけに仕事を任され責任が重くなる。ところが管理職にはまだなれず、責任と権限がアンバランスになる年代といってよい。これが30代に不調者が多い理由だと今まで考えてきたが、この‘責任と権限のアンバランス’が40代、10~20代にも広がったと考えられないだろうか」と見解を示しています。責任は重いのに権限はない。なんとも歯がゆい立場であるのは想像に難くありません。また、就活学生を悩ませる「即戦力になりうる人材」を企業側が求めていることも、今回の20代のこころの病率の上昇を裏付ける傾向のひとつかもしれません。人手不足で売り手市場と言われる昨今、企業の説明会などでは就活中の学生にどれくらいのハードワークがあるかが伏せられていて、実際に入ってみてから思い知らされるというケースも少なくないのではと懸念する声も出ているようです。
若年層が陥りやすい「クォーターライフ・クライシス」
こころの病の代表格とも言える「うつ病」は、現在でもまだわかっていないことが多く、何が原因で発症するのかは明らかになっていません。ただ、傾向として「心理的なストレス」が大きく関わっていることがあげられています。心因的ストレスとしてトップにあげられているのはやはり「仕事の過労」で、「職務異動」や「精神的打撃」などもあげられています。今回の調査結果で注目された20代後半から30代半ばの年代が陥りやすい、「クォーターライフ・クライシス」と呼ばれる現象があります。人生を100年間と仮定して、その4分の1に差し掛かるころにはじまるとされる、憂鬱とストレスが急上昇する時期だそうです。理想を抱いて社会に出て数年、思い描いていた未来と現実とのギャップに打ちのめされるという誰しも一度は通る道ですが、社会状況が厳しくなれば抜け切る前に病みついてしまうこともあるのかもしれません。
報告・情報共有の先の対策を
しかしながら企業では、メンタルヘルスへの取組みを「ストレスチェック」と「面接」の他、どうするべきかと手をこまねいている状態であるということも、アンケートの結果で明らかになりました。集団分析の結果をどう活かせば良いのか、人事や総務、経営陣への報告以上に活かせていないのが現状のようです。うつ病は自殺と深い関係性があることもよく知られている通りです。WHOは、うつ病治療は年々進歩しているにもかかわらず、適切な治療を受けている人々が少ないとも指摘しています。個人の幸福、企業、ひいては国家の繁栄のためにも、そこに関わる全ての人々へのサポートが求められています。
<参考サイト>
・Science Portal:うつ病の人は世界で3億2千万人 WHOが推計
https://scienceportal.jst.go.jp/news/newsflash_review/newsflash/2017/02/20170228_01.html
・公益財団法人日本生産性本部:第8回『メンタルヘルスの取り組み』に関する企業アンケート調査結果 ~「心の病」の多い世代で20代が急増。各世代共通の課題に~
https://activity.jpc-net.jp/detail/mhr/activity001523.html
・Science Portal:うつ病の人は世界で3億2千万人 WHOが推計
https://scienceportal.jst.go.jp/news/newsflash_review/newsflash/2017/02/20170228_01.html
・公益財団法人日本生産性本部:第8回『メンタルヘルスの取り組み』に関する企業アンケート調査結果 ~「心の病」の多い世代で20代が急増。各世代共通の課題に~
https://activity.jpc-net.jp/detail/mhr/activity001523.html
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
より深い大人の教養が身に付く 『テンミニッツTV』 をオススメします。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。
『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」という現象は起こるのか。対人コミュニケーションにおいて誰もが経験する理解や認識の行き違いだが、私たちは同じ言語を使っているのになぜすれ違うのか。この謎について、ベストセラー『「何...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/11/02
「白人vsユダヤ人」という未解決問題とトランプ政権の行方
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(3)未解決のユダヤ問題
保守的な軍国化によって、内戦への機運が高まっているアメリカだが、MAGAと極左という対立図式は表面的なものにすぎない。その根本に横たわっているのは白人とユダヤ人という人種の対立であり、それはカーク暗殺事件によって露...
収録日:2025/09/24
追加日:2025/11/06
「境地は裏切らない」とは?禅の体験から見えてきたもの
徳と仏教の人生論(6)物事の本質を見極めるために
10年の修行で自我を手放し宇宙と一体化する境地に達すると、自分中心からホリスティックな視点に変わり、物事の表と裏の共通点が見えてきて、その本質がつかめるという田口氏。人生は常に新たな命題を解き明かし続ける旅である...
収録日:2025/05/21
追加日:2025/11/08
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
たかが「1」、されど「1」――今、数の意味が理解できない子どもがたくさんいるという。そもそも私たちは、「1」という概念を、いつ、どのように理解していったのか。あらためて考え出すと不思議な、言葉という抽象概念の習得プロ...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/10/06
40代前半に訪れる「中年の危機」、鍵は「人生の成長戦略」
人生100年時代の「ライフシフト概論」(3)キャリアの危機〈下〉
40代前半で訪れる「中年の危機」を脱するためには、会社中心の人生から「未来は自分で作る」という自分を中心とした人生への意識転換が必要だ。そのためのカギは、「Will・Can・Create」の3つから自分の「人生の成長戦略」を考...
収録日:2022/06/15
追加日:2022/09/24


