10MTVオピニオン|有識者による1話10分のオンライン講義 ログイン 会員登録
DATE/ 2019.04.18

なぜ「スマホ」は「パソコン」よりも高いのか?


 スマートフォンとパソコンの利用率が逆転(スマホ:54.2%、パソコン48.7%。総務省調べ)したのは2017年。世帯の機器保有割合もスマホは75.1%と、パソコン(72.5%)や固定電話(70.6%)を逆転して、ネット社会の主役になっています。

 お値段のほうも、パソコンの新品は安いものだと7万円くらい。多少スペックを上げても10万円台前半で、それ以上にハイスペックなデスクトップPCを購入するのは自宅で相当量の作業の必要な人に限られてきました。2019年3月20日現在、「価格.com」でノートPC売れ筋ランキングを見ると、上位10位のうち5~10万円未満が8種類。10万円超はマイクロソフトの2機種だけでした。

 一方、日本で一番売れているスマホ「iPhone」は多彩なバリエーションがあるものの、ハイエンドモデルの「XS」と「XS Max」はapple純正価格が112,800円(税別)から。廉価版の「XR」でさえ84,800円(税別)となっています。

 単純に考えると、ディスプレイの大きなパソコンのほうが、スマホより高そうに思うのに…なぜ、スマホはパソコンより高くなるのか? 需要と供給のバランス? それとも性能の差?

実は5年も前から始まっていた価格逆転

 実はPCとスマホの価格が逆転したのは、日本での利用率逆転より3年早い2014年頃のこと。グーグルの「Chromebook」が、オンライン上のクラウドサービスを利用することを前提として、Chrome OSを搭載した端末を5万円前後で発売したのが境目になっています。

 高性能化するスマホに対抗するため、インテルやMicrosoftが大幅なバーゲン価格を打ち出し、ASUSやAcerなど台湾のOEMメーカーからネットブックと呼ばれる5万円前後のノートPCが続々と発表されました。OEMメーカーは世界市場で売られるパソコンの約9割を生産しているだけに、OSはほぼ3分の1、CPUはほぼ半分の値段で仕入れていると言われています。徹底的な原価削減による薄利多売方式に踏み切ったわけで、ノートPCがコモディティ化の極致に追いやられたことが分かります。

 現在では品質も相当安定し、価格のほうも3万円を切るものさえ珍しくなくなってきました。たとえばASUSの「Vivobook E203MA-4000」の場合、実売価格3万円台前半ながら、64GBのメモリとWindows 10 Homeを搭載した実用機種。どこで予算を削っているのかというと、主流ノートPCのフルHD(1920×1080ドット)に対し、解像度1366×768ドットと液晶パネルに相当差があります。

 一方、iPhone XSの5.8型と6.5型の有機EL(OLED)ディスプレイは2436×1125ピクセル(Maxは2688×1242)。これだけの解像度を生かすため、ハンディさを犠牲にしたことがよくわかります。TechInsightsの推計によると、OLEDディスプレイは推定製造原価の2割を占めているのです。見え方の差は、写真や映像だけでなく、残像処理にもかかわってくるため、情報伝達のなめらかさが違うというわけです。

日本人のiPhone好きを原価比率から考える

 「iPhoneは原価が安く、アップルの利益が高い」という噂を時々耳にしますが、TechInsightsの推計によると、iPhone XS Max(256GB)の原価見積もりは、昨年のiPhone X(64GBモデル)の395.44ドル(約4万5,000円)に対して約443ドル(約5万円)。日本円にして約5,000円という僅差となっています。

 部品原価として一番大きいのは、OLEDディスプレイの80.5ドルですが、A12 Bionicチップとモデムの合計は72ドル。その他の部品コストと組み立て費用を積み上げると443ドルになるわけで、アップルの利益は1台あたり806ドル(約9万1000円)の計算になります。

 EMS企業とブランド企業の切り分けは、パソコンの第一の特質である技術革新の速さとライフサイクルの短さが生んだもの。ブランド企業としてのアップル等は、目まぐるしく変化する市場のニーズをつかみ、顧客と価値共創していくことに資源を集中しています。大づかみにいうと、「格安PCはモノ、新型iPhoneはコト」の値打ちということが可能でしょう。

 日本のように情報密度が濃く、デザインや使い心地に感応する国民性が、世界でも珍しい「iPhone大人気」状況を呼んでいるのではないかと考えられます。もちろんキャリアの販売戦略の影響や、「みんなと同じものがいい」というニーズもあるでしょうが、根本的には「コト消費」が好きで得意な日本人。毎年の桜前線北上を見守る熱い眼差しからも、そのことが分かります。

<参考サイト>
・平成30年版情報通信白書
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01tsushin02_02000129.html
・価格.com:ノートパソコン人気売れ筋ランキング
https://kakaku.com/pc/note-pc/ranking_0020/
・engadget日本版:最新アップルの噂まとめ
https://japanese.engadget.com/2018/09/29/iphone-xs-max-5/
(10MTV編集部)

人気ランキング

おすすめ記事

関連記事