テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2020.03.14

神社が一番多い・少ない都道府県は一体どこ?

 「八百万の神」が住まうとされる日本には、8万を越える神社があります。小さなお社のような末社を含めると、その数は20~30万とも……。今回は政府統計のポータルサイト「e-Stat」が集計した「宗教統計調査」に基づき、全国8万1074社の神社のうち数が集中している都道府県と、少ない都道府県トップ5をご紹介。あわせて神社が多い理由・少ない理由について分析していきます。

神社の多い都道府県ランキング。第1位は新潟県!

<神社の多い都道府県ランキング(2019年)>
第1位:新潟県(4711社)
第2位:兵庫県(3867社)
第3位:福岡県(3419社)
第4位:愛知県(3358社)
第5位:岐阜県(3268社)
(政府統計ポータルサイト「e-Stat」の宗教統計調査より)

 神社が最も多い都道府県第1位は、新潟県の4711社。2位の兵庫県と、実に1000社ほどの差があります。この結果について意外に思った人も多いのでは?

 なぜ新潟県にはこれほど多くの神社があるのでしょうか。その理由について4点まとめてみました。

1/明治時代、人口が日本一だったから
 これも意外に思われるかもしれませんが、明治時代まで東京都(当時は東京府)の人口が約130万人だったのに対し、新潟県の人口は約160万人と、人口日本一の県でした。日本有数の米どころとして農作従事者が集中していたことや、寺泊や佐渡の小木といった北前船の寄港地があったことなど、地理的条件がそろっていたのです。人口の増加とともに集落の数も増え、あわせて集落の中心となる氏神をまつる社が築かれていったと考えられます。

2/農作地が広かったから
 古くから日本人は神さまにお米や農作物をお供えし、五穀豊穣を願ってきました。土地が広く稲作が盛んだった新潟は、人口の多さも相まって、豊作を祈願するための神社が数多く建てられたと思われます。

3/さまざまな文化の交流地点だったから
 前述の通り新潟県は人口が集中しやすい土地だったため、東西南北から多くの人が行き交っていました。異なる文化、異なる信仰を持つ人との交流も生まれ、それにつれてまつる神さまが違う神社の数が増えていったと考えられます。
ちなみに2位~5位の県も港町や宿場があり、大変栄えていた地域。神社は集会所のような役割も担っていましたので、人の交流にあわせて自ずと増えていったといえるでしょう。

4/明治政府の「神社合祀政策」に消極的だったから
 明治時代には増えすぎた神社を合併する「合祀政策」が採られていましたが、新潟ではあまり積極的に行われなかったそうです。新潟県民にとって、豊作祈願をする場であり地域同士の交流の場であった神社を失うことに、抵抗があったのかもしれません。

逆に神社が少ない都道府県は?

 それでは神社が少ない都道府県のランキングを見てみましょう。

<神社が少ない都道府県ランキング(2019年)>
第1位:沖縄県(15社)
第2位:和歌山県(448社)
第3位:宮崎県(676社)
第4位:大阪府(731社)
第5位:山口県(754社)
(政府統計ポータルサイト「e-Stat」の宗教統計調査より)

 神社が少ない県第1位は沖縄県で、わずか15社となっています。沖縄は江戸時代まで本土とはまったく異なる文化を形成してきましたので、神社が少ない理由は想像に難くないでしょう。注目すべきは2~5位の府県です。

 実はこれらの府県にはいずれも「大きく有名な神社がある」ことにお気づきでしょうか。2位の和歌山県には熊野本宮大社をはじめとする熊野三山、3位の宮崎県には天孫降臨伝説で知られる高千穂神社、4位の大阪府・山口県には海上安全の神をまつる住吉神社(大阪府は住吉大社)があるといった具合です。ちなみに、日本で最も格式の高い神社・伊勢神宮のある三重県の神社数は850社、縁結びで名高い出雲大社がある島根県は1173社で、やはり新潟県の4000社に比べるとかなり少ない数となっています。

 なぜこれらの府県は神社の数が少ないのでしょうか。はっきりとした理由は不明ですが、上記のような大きな神社は信仰する神さまが同一の神社(分社・末社など)の総本社であることが多く、同じ土地にほかの神さまを信仰する神社がつくられにくかったからと考えられます。大きな神社があるからこそ、ほかの神社をつくる必要がなかったのでしょう。

 いかがでしたか。神社はその土地の歴史そのもの。今年は長期休みを利用して、神社仏閣巡りをしてみるのもいいでしょう。

<参考サイト>
・e-Stat 宗教統計調査
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00401101&tstat=000001018471&year=20191&month=0
・新潟県の神社について(新潟県神社庁)
http://niigata-jinjacho.jp/column/
・新潟は神社県だった! 日本で一番神社が多い理由とは?(にいがた就職応援団)
https://career.niigata-job.ne.jp/新潟は神社県だった!%E3%80%80日本一が神社がある理由/
・全国の神社の数について(神社人)
https://jinjajin.jp/modules/contents/index.php?content_id=112
・全国の神社の数は?参拝者数や寺の数を都道府県別のランキングで紹介(終活ねっと)
https://syukatsulabo.jp/article/8745
・全国の神社数・都道府県ごとの数・神職数(神社ch)
https://zinja-omairi.com/zinja-number/#i-2
・なぜ新潟や石川が「人口日本一」だったのか? 都道府県の人口推移から見る、日本近代化の歴史(ねとらぼ調査隊)
https://nlab.itmedia.co.jp/research/articles/1167/
・これは意外!神社の数が日本一多いのは新潟県。実はこんな事情がありました(Japaaanマガジン)
https://mag.japaaan.com/archives/83550
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
「学ぶことが楽しい」方には 『テンミニッツTV』 がオススメです。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,100本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

歴史における「運」とは?ソクラテスの「運」から考える

歴史における「運」とは?ソクラテスの「運」から考える

運と歴史~人は運で決まるか(1)ソクラテスが見舞われた「運」

歴史における「運」とはどういうものだろうか。例えば、富裕と貧困という問題について、「運」で決まるのか、あるいは「運」とは異なる努力、教養、道徳などの要素で決まるのかという点でも、思想家たちの考え方は分かれる。第1...
収録日:2024/03/06
追加日:2024/04/18
山内昌之
東京大学名誉教授
2

多神教の日本と民主主義…議論の強化と予備選挙の導入を

多神教の日本と民主主義…議論の強化と予備選挙の導入を

民主主義の本質(4)日本の民主主義をいかに強化するか

民主主義の発展において、キリスト教のような一神教的な宗教の営みがその礎にあった。では、そうした宗教的背景をもたない日本で、民主主義を育てるにはどうしたらいいのか。人数が多ければ正しいというのは「ポピュリズム」の...
収録日:2024/02/05
追加日:2024/04/16
橋爪大三郎
社会学者
3

急成長するインドネシアとトルコ、その理由と歴史的背景

急成長するインドネシアとトルコ、その理由と歴史的背景

グローバル・サウスは世界をどう変えるか(3)インドネシアの成長とトルコの外交力

グローバル・サウスの中でも高度経済成長を遂げているのがインドネシアだ。長期のスカルノ時代とスハルト時代を経てその後に民主化が進んだ、東南アジアで最大のイスラム教国である。また、トルコは多国間に接する地理的特性と...
収録日:2024/02/14
追加日:2024/04/17
島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授
4

ロシアによるウクライナ侵略で国際政治はどう変わったのか

ロシアによるウクライナ侵略で国際政治はどう変わったのか

ウクライナ侵略で一変した国際政治(1)歴史的経緯とNATOの存在

ロシアによるウクライナ侵略によって、国際政治は一変したといわれる。だが、具体的には何がどう変化したのか。この問題について大事なのは、両国のみならずヨーロッパとロシア、さらにアメリカも含めた各国の関係、その歴史的...
収録日:2022/05/10
追加日:2022/05/27
小原雅博
東京大学名誉教授
5

なぜ今「心理的安全性」なのか、注目を集める背景に迫る

なぜ今「心理的安全性」なのか、注目を集める背景に迫る

チームパフォーマンスを高める心理的安全性(1)心理的安全性が注目される理由

「心理的安全性」は近年もっとも注目されるビジネスバズワードの一つともいわれている。その背景には、コロナ禍におけるリモートワークの増大、社会全体が未来予測の難しい「VUCAの時代」に入ったことがある。職場環境が多様に...
収録日:2022/04/26
追加日:2022/07/23
青島未佳
一般社団法人チーム力開発研究所 理事