テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2020.12.22

なぜケータイの料金プランは複雑なのか?

 スマホの料金プランをみて「よくわからない」と思った方も多いのではないでしょうか。キャリア各社の料金プランにはさまざまな付帯条件やオプションサービス、分割払いプランなどがあり、だいぶ複雑です。

オプションが多すぎて料金をイメージしにくい

 2020年11月現在、NTTドコモには「ケータイプラン」のほかに「ギガホ」「ギガライト」といったプランもあります。「ギガホ」と「ギガライト」はデータ使用料という観点で選べばいいので基本的にはシンプルです。ここに「機種代分割払い」が加わり、「みんなドコモ割」「ドコモ光セット割」「ファミリー割引」といったさまざまな割引に加えて「カケホーダイ&パケあえる」といったデータ通信料をシェアできる仕組みなどの話が入ってきます。うまくやればお得になることはわかるのですが、これらにはまたさまざまな条件が伴ってくるので、だんだんとややこしくなってくる印象です。

 以前は「端末料金」「基本プラン」「通信料金」「サービスプロバイダ料金やパケット定額サービス」などがさまざまなパターンが入り組んでおり、利用者は自分で組み合わせを選ぶ必要がありました。これに比べればだいぶシンプルになったとは言えます。端末を大きく値引きすることが禁止されたことから2019年5月に「分離プラン」と呼ばれる新たに登場したのが先に示したものです。しかし、さまざまな割引が乱立したことで、実際に自分が負担する金額がどのくらいになるのかうまくイメージできなくなっていることも確かです。契約時に正確に情報を把握するには、積極的に詳しく知ろうとする必要があります。

日本のケータイ料金は確かに高い

 こういった各種の割引が生じる発端となった「端末代金を大きく値引きすることの禁止」ですが、その意図は「キャリアを乗り換えやすくすることで市場競争を働かせて、全体的に利用料金を下げる」ことです。

 確かに資料を見ると、日本のケータイ料金は高いようです。読売新聞の記事では、総務省が発表した2019年における世界6都市の携帯電話料金(20GBのプラン)が紹介されています。東京が月額8175円で最も高く、次いでニューヨーク7990円、ソウル6004円、デュッセルドルフ4179円、パリ3768円、ロンドン2700円の順番となっています。この点について、総務省は「海外では新規事業者の参入や、格安スマートフォン会社との激しい競争が、料金の引き下げにつながっている」としています。

 また現在では、通信事業者間の移動が比較的簡単になったことから、大手3社のうち1社が利用者獲得に有効なプランを打ち出せば、ほかの2社は利用者転出を防ぐため、すぐに採用するといった理由も考えられます。こういった事情により、さまざまな条件付きの割引が乱立するする状況が生じて、料金プランの複雑化が起きていると言えそうです。

品質の良さに対する対価ともいえる

 こういった「日本の携帯電話料金は高すぎる」という総務省の考えに対して、高すぎるとも言えないのではないか、という話もあります。海外では日本ほど携帯のインフラは整備されておらず、街の中心部を外れたり、高速鉄道で移動したりするとすぐに使えなくなるそうです。これに対して、日本では新幹線の中でも安定して使うことができたり、3Gも含めればほとんど問題なく使えたりする環境が整っています、こういった優れた品質が保たれている日本の状況を考えると、単に利用料金で海外と比較して高いから安くするというのもやや違和感は出てきます。

 ただし問題は、ケータイだけではないようです。インターネット回線ではいまだに契約時に縛りがあったり、ケータイと絡んでさまざまなわかりにくいオプションもあったりします。このあたりについても、この先どういったあり方がいいのか、議論する余地はありそうです。

<参考サイト>
・どうすれば、携帯電話料金値下げが実現できるのか?|ケータイWatch
https://k-tai.watch.impress.co.jp/docs/column/mobile_catchup/1281498.html
・NTTドコモの新料金プランはなぜ「分かりにくい」と感じるのか|マイナビニュース
https://news.mynavi.jp/article/mobile_business-37/
・電気通信事業法の一部を改正する法律の施行に伴う関係省令等の整備について|総務省
https://www.soumu.go.jp/main_content/000628680.pdf
・東京の携帯料金、やはり「世界最高」…大手3社が高いシェア維持|読売新聞
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20200630-OYT1T50240/
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
物知りもいいけど知的な教養人も“あり”だと思います。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

青春期は脳のお試し期間!?社会的ニッチェと信頼の形成へ

青春期は脳のお試し期間!?社会的ニッチェと信頼の形成へ

今どきの若者たちのからだ、心、社会(2)思春期の成長、青春の脳

思春期にからだが急激に成長することを「思春期のスパート」と呼ぶ。先行して大きくなった脳にからだを追いつかせるための戦略である。脳はそれ以上大きくならないが、脳内の配線が変化する。そうした青春期の脳の実態を知るた...
収録日:2024/11/27
追加日:2025/07/12
長谷川眞理子
日本芸術文化振興会理事長
2

アベノマスク、ワクチン調達の決算は?驚きの会計検査結果

アベノマスク、ワクチン調達の決算は?驚きの会計検査結果

会計検査から見えてくる日本政治の実態(1)コロナ禍の会計検査

日本の財政をくまなく検査し、その収入と支出を把握する会計検査院。日本のメディア報道などでは、予算の決定や補助金などの政策決定については詳しく報じられるが、それがどのように実際に使われたかは、ほとんど言及がない。...
収録日:2025/04/14
追加日:2025/07/11
田中弥生
東京大学客員教授
3

正岡子規と高浜虚子の論争、その軍配と江藤淳暦年のテーマ

正岡子規と高浜虚子の論争、その軍配と江藤淳暦年のテーマ

AI時代に甦る文芸評論~江藤淳と加藤典洋(3)正岡子規と高浜虚子の「リアリズム」

正岡子規の死後、高浜虚子が回想で述べた師・子規との論争。そこに「リアリズムとは何か」のヒントが隠されていると江藤淳氏は言う。子規と虚子、それぞれの「リアル」とは何か、そしてどちらが本当の「リアル」なのか。近代小...
収録日:2025/04/10
追加日:2025/07/09
與那覇潤
評論家
4

AI時代の「真のリアル」は文芸評論の練達の手法にあり!

AI時代の「真のリアル」は文芸評論の練達の手法にあり!

編集部ラジオ2025(14)なぜAI時代に文芸評論が甦るのか

どんどんと進む社会のAI化。この大激流のなかで、人間の仕事や暮らしの姿もどんどん変わっていっています。では、AI時代に「人間がやるべきこと」とはいったい、何なのでしょうか? さらにAIが、驚くほど便利に何でも教えてく...
収録日:2025/05/28
追加日:2025/07/10
テンミニッツTV編集部
教養動画メディア
5

マネへの強烈なライバル意識…セザンヌ作品にみる現代性

マネへの強烈なライバル意識…セザンヌ作品にみる現代性

作風と評論からみた印象派の画期性と発展(1)セザンヌの個性と現代性

印象派の最長老として多くの画家に影響を与えたピサロ。その影響を多分に受けてきた画家の中でも最大の1人がセザンヌだが、その才覚は第1回の印象派展から発揮されていた。画面構成や現代性による解釈から、セザンヌ作品の特徴...
収録日:2023/12/28
追加日:2025/07/10
安井裕雄
三菱一号館美術館 上席学芸員