社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
お金の価値が50億分の1?ジンバブエで起こった悲劇
6月11日、アフリカ南部の国、ジンバブエの通貨「ジンバブエドル」が廃止された。廃止された背景は2008年のインフレ。しかし、ただのインフレではない。なんと5000億%のインフレなのだ。
わかりやすく円に例えると、100円ショップが「5000億円ショップ」になるということ。通貨の価値が、50億分の1に下がったので、今までの50億倍のお金を出さないと同じものが買えないということだ!
働いて食糧や製品やサービスなどの、しっかりとした実業の裏付けのないお金が市中に出回り、お金で買えるものは増えないのに、お金ばかりが増えていくということになる。
そうすると、お金がいくらあっても買うものがないので、お金の価値が下がり、モノやサービスの値段が上がっていく。ジンバブエで起こったことはまさにこれだ。
ほとんどが切り下げという形で行われ、100分の1、多くても100万分の1という範囲で行われていたわけだが、ジンバブエの場合は、なんと100億分の1という単位で行っていたのだ。
このような分も合わせると、実質的には通貨の価値は50億分の1になったということではすまないことがわかる。ありていに言えば、限りなくゼロになったということだ。
そして、今回ジンバブエドルは廃止が決定され、それにあたって米ドルとの交換を国が発表した。交換レートは17.5京(1京=兆の1万倍)ドルまでの口座に対して5米ドル。17.5京を超える分に対しては3.5京ドルに対し、1米ドルというものだった。
さらに10万円を超える財産については「財産税」と呼ばれる資産課税を課し、なんと1500円超になると90%も税金でとられるはめになった。そのような過酷な政策を行ってようやくインフレ対策を行った過去が日本にもある。ジンバブエのことを他人ごととしてばかりも見ていられない。
現在、日本は大規模な金融緩和を行っている。その内のかなりの部分が、政府が国債を発行し、それを日銀が引き受けるという形で行っているわけだが、これはジンバブエの例と似ていなくもない。
もちろん生産力や資産の量など、経済の信用度が圧倒的に違うため、ジンバブエのようなことにはなりにくいが、過去の歴史も踏まえると、そうそうたかをくくってもいられないのかも知れない。
わかりやすく円に例えると、100円ショップが「5000億円ショップ」になるということ。通貨の価値が、50億分の1に下がったので、今までの50億倍のお金を出さないと同じものが買えないということだ!
インフレの原因はお金の刷り過ぎ
なぜ、そこまで高騰したのかというと、ジンバブエの通貨を発行していた中央銀行(ジンバブエ準備銀行)が、政府の要求するままジンバブエドルを発行し続けたからだ。一生懸命働いてお金を稼いでも、印刷するだけでお金を持つことのできる人々が、どんどんお金を刷って、使っていたらどうなるだろう?働いて食糧や製品やサービスなどの、しっかりとした実業の裏付けのないお金が市中に出回り、お金で買えるものは増えないのに、お金ばかりが増えていくということになる。
そうすると、お金がいくらあっても買うものがないので、お金の価値が下がり、モノやサービスの値段が上がっていく。ジンバブエで起こったことはまさにこれだ。
実際のインフレ率はさらに大きい
ジンブバブエは過去に「デノミネーション(デノミ)」と呼ばれる通貨政策を行っている。これは通貨単位の変更のことで、例えばドルやユーロなどと単位を合わせるために、100円を1円に切り下げ、1円を1銭として新しい通貨に切り替えることを決めたとすれば、これが「デノミ」と言われる政策になる。ほとんどが切り下げという形で行われ、100分の1、多くても100万分の1という範囲で行われていたわけだが、ジンバブエの場合は、なんと100億分の1という単位で行っていたのだ。
このような分も合わせると、実質的には通貨の価値は50億分の1になったということではすまないことがわかる。ありていに言えば、限りなくゼロになったということだ。
日本円など外国通貨を使うことに
ジンバブエドルは信用が一切ないので、2009年からはもう新しく発行されていない。そして2014年からは米ドルやユーロ、円など、9つの外国通貨が法定通貨として定められた。そして、今回ジンバブエドルは廃止が決定され、それにあたって米ドルとの交換を国が発表した。交換レートは17.5京(1京=兆の1万倍)ドルまでの口座に対して5米ドル。17.5京を超える分に対しては3.5京ドルに対し、1米ドルというものだった。
日本にもインフレの歴史が
過去日本も、戦後に凄まじいインフレを経験した歴史がある。その時は、単位の切り替えこそなかったものの、旧円を新円に切り替えて、国民のタンス預金も全部吐き出させ、銀行に預けさせた上で引き出しを制限。さらに10万円を超える財産については「財産税」と呼ばれる資産課税を課し、なんと1500円超になると90%も税金でとられるはめになった。そのような過酷な政策を行ってようやくインフレ対策を行った過去が日本にもある。ジンバブエのことを他人ごととしてばかりも見ていられない。
現在、日本は大規模な金融緩和を行っている。その内のかなりの部分が、政府が国債を発行し、それを日銀が引き受けるという形で行っているわけだが、これはジンバブエの例と似ていなくもない。
もちろん生産力や資産の量など、経済の信用度が圧倒的に違うため、ジンバブエのようなことにはなりにくいが、過去の歴史も踏まえると、そうそうたかをくくってもいられないのかも知れない。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
物知りもいいけど知的な教養人も“あり”だと思います。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,300本以上。
『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
“死の終りに冥し”…詩に託された『十住心論』の教えとは
空海と詩(4)詩で読む『秘蔵宝鑰』
“悠々たり悠々たり”にはじまる空海『秘蔵宝鑰』序文の詩文。まことにリズミカルな連呼で、たたみかけていく文章である。このリフレインで彼岸へ連れ去られそうな魂は、選べる道の多様さと迷える世界での認識の誤りに出会い、“死...
収録日:2024/08/26
追加日:2024/11/23
国家は助けてくれない…「三田会」誕生への大きな経験
独立と在野を支える中間団体(6)慶應義塾大学「三田会」の起源
中間集団として象徴的な存在である慶應義塾大学「三田会」について考える今回。三田会は単に同窓会組織として存在しているわけではなく、「公」に頼れない場合に重要な役割を果たすものだった。その三田会の起源について解説す...
収録日:2024/06/08
追加日:2024/11/22
日本の根源はダイナミックでエネルギッシュな縄文文化
日本文化を学び直す(1)忘れてはいけない縄文文化
大転換期の真っ只中にいるわれわれにとって、日本の特性を強みとして生かしていくために忘れてはいけないことが二つある。一つは日本が森林山岳海洋島国国家であるというその地理的特性。もう一つは、日本文化の根源としての縄...
収録日:2020/02/05
追加日:2020/09/16
国の借金は誰が払う?人口減少による社会保障負担増の問題
教養としての「人口減少問題と社会保障」(4)増え続ける社会保障負担
人口減少が社会にどのような影響を与えるのか。それは政府支出、特に社会保障給付費の増加という形で現れる。ではどれくらい増えているのか。日本の一般会計の収支の推移、社会保障費の推移、一生のうちに人間一人がどれほど行...
収録日:2024/07/13
追加日:2024/11/19
謎多き紫式部の半生…教養深い「女房」の役割とその実像
日本語と英語で味わう『源氏物語』(1)紫式部の人物像と女房文学
日本を代表する古典文学『源氏物語』と、その著者である紫式部は、NHKの大河ドラマ『光る君へ』の放映をきっかけに注目が集まっている。紫式部の名前は誰もが知っているが、実はその半生や人となりには謎が多い。いったいどのよ...
収録日:2024/02/18
追加日:2024/10/14
対談 | 林望/ロバート キャンベル