社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2023.07.24

世界からみた日本の「奇妙な食べ物」とは

納豆はよく知られていますが…

 低カロリーでヘルシーな食事として、世界中で人気が高まっている和食。ユネスコ無形文化遺産に登録されたことで、さらに注目が集まっていますよね。しかし和食で普通に使用される食材のなかには、外国人からみると「そんなものを食べるの?」とびっくりされてしまうものも多いのです。

 よく知られているのは納豆ではないでしょうか。日本人でも特に関西には苦手な方が多いですが、納豆菌を利用して大豆を発酵させるという製造方法は日本にしか見られず、独特の匂いとねばねば感に「無理!」となってしまう外国人が多いようです。しかし納豆には血液をサラサラにする作用があるとされるナットウキナーゼなどの栄養素が豊富で、近年ではヘルシーな食材として広く知られるようになったため、一念発起して食べてみる外国人も増えています。

 このような、世界的視点でみると“奇妙”に映る和食の食材は他にもたくさんあります。日本では普通に食べられているので「どうして?」と思われるものもあるでしょう。そこで今回は、外国人が奇妙に感じる食べ物を、その理由とあわせてご紹介します。

外国人には“奇妙”にみえる食べ物

 和食のヘルシーさはやはり海の幸をたっぷりとれるところにありますよね。しかし多種多様だからこそ、奇妙に感じられるものも多いようです。

 フグ:フグが毒を持っていることはもちろん世界中で知られていますし、だからこそ食べない国が多いです。そのような国の人たちからみると、「日本はおいしい魚がたくさんとれるのに、なぜわざわざ毒がある魚を食べるのか理解できない」と思われてしまうのですね。しかし日本のフグ料理を味わうと、そのおいしさや美しさに納得する外国人も多いようです。

 タコ:イギリスの伝承に登場する、船を沈めてしまう怪物・クラーケンはモデルがタコという説があります。このように、海外ではタコを魔物のように恐れる傾向が強く、食べるなんてとんでもないと思われてしまうのです。ただし、アジア地域では広く好まれていますし、ヨーロッパでもイタリアやスペインではよく食べられています。

 白子:「見た目が脳みそみたいで無理」というストレートな理由で拒否反応を示されてしまうのが白子です。また、“タラやアンコウなどの魚の精巣”という正体を知ってしまってさらに拒否反応が強くなる外国人も。しかし口当たりが滑らかでコクがある白子は、一度食べると病みつきになってしまう外国人も多いのだとか。

 日本でおなじみの野菜類にも、奇妙と感じられるものがあります。

 ごぼう:漢方やハーブのように薬として扱われることはあっても、食材とは考えられていないのがごぼうです。木の根のような匂いや見た目がいやがられてしまうようです。太平洋戦争のときには、オーストラリア人の捕虜が日本の収容所で食事にごぼうを出され、「木の根を食べさせられた」と訴えたため、食事を出した職員が戦後に虐待の罪を問われて処刑されたこともありました。

 松茸:日本では高級食材の松茸も、苦手に感じる外国人が多いです。その理由は、日本では珍重されているあの香りが「靴や靴下のにおいを連想させるから」というのだから驚きですね。ブータンのようにアジア地域では松茸を食べる国もありますが、日本ほど高級品ではありません。海外にはトリュフやポルチーニのような高級きのこがあるので、こちらのほうが馴染み深いのでしょう。

 さらに、食品を生で食べることに抵抗感を示されることも。お刺身、馬刺し、生卵などは「料理しない状態のまま食べるの?」と気味悪がる外国人も多いです。特にヨーロッパ地域では乗馬好きの人が多いので、馬刺しは友だちを食べるような気持ちにもなってしまい、とても手をつけられないようです。

 ただし、卵は海外だと生食を想定していない処理を施しているので、サルモネラ菌が発生しやすくなっています。これに対し、日本では出荷前の消毒殺菌が徹底しており、消費期限も短めに設定しているので生で食べても安全なのです。

 反対に、日本人からみて奇妙に映る世界の食べ物もたくさんありますよね。しかし、その食べ物や食べ方はその国や地域で大切に育てられた文化です。食文化を理解することは、その文化を理解する有効な手段のひとつ。外国の珍しい食べ物への興味や理解を深めるのも、楽しいかもしれませんよ。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
「学ぶことが楽しい」方には 『テンミニッツTV』 がオススメです。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ

「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ

「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造

宇宙とは何かを考えるうえで中国の古典である『荘子』・『淮南子(えなんじ)』に由来する「宇宙」という言葉が意味から考えてみたい。続いて、地球から始まり、太陽系、天の川銀河(銀河系)、局所銀河群、超銀河団、そして大...
収録日:2020/08/25
追加日:2020/12/13
岡朋治
慶應義塾大学理工学部物理学科教授
2

日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは

日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは

歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本

「歴史を探索していく」とは、どういうことなのだろうか。また、「歴史を活かしていく」とはどういうことなのだろうか。歴史作家の中村彰彦氏に、歴史を探り、活かしていく方法論を、具体的に教えてもらう本講義。第一話は、歴...
収録日:2025/04/26
追加日:2025/11/14
3

なぜ伝わらない?理解の壁の正体を今井むつみ先生に学ぶ

なぜ伝わらない?理解の壁の正体を今井むつみ先生に学ぶ

編集部ラジオ2025(27)なぜ何回説明しても伝わらない?

「何回説明しても伝わらない」「こちらの意図とまったく違うように理解されてしまった」……。そんなことは、日常茶飯事です。しかしだからといって、相手を責めるのは大間違いでは? いやむしろ、わが身を振り返って考えないと...
収録日:2025/10/17
追加日:2025/11/13
4

脳内の量子的効果――ペンローズ=ハメロフ仮説とは

脳内の量子的効果――ペンローズ=ハメロフ仮説とは

エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(2)量子論と空海密教の本質

「ワット・ビット連携」の概念がある。これは神経と血管の関係にも似ており、両者が密接に関係するところから、それをもとに人間の本質について考察していくことになる。また、中村天風の思想から着想を得て、人間の心には霊性...
収録日:2025/03/03
追加日:2025/11/13
5

偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動

偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動

内側から見たアメリカと日本(2)アメリカの大転換とトランプの誤解

アメリカの大転換はトランプ政権以前に起こっていた。1980~1990年代、情報機器と金融手法の発達、それに伴う法問題の煩雑化により、アメリカは「ラストベルト化」に向かう変貌を果たしていた。そこにトランプの誤解の背景があ...
収録日:2025/09/02
追加日:2025/11/11